第9話 準備



 レミィの誕生日が近い。

 という話を使用人たちから聞いて、アスウェルは準備に加担することになった。


 普段はレミィに付き添って歩いている道を、レンという女性の使用人と歩く。


「アスウェルさんが屋敷にやってきてから、レミィは本当に毎日楽しそうですよ」

「騒々しくてかなわない」


 いつか、ネコモドキがレミィの頭の上で食い散らかしていたリンゴ。赤い果物の入った袋を抱えて、レンは微笑している。


「ああいう風にレミィにイジワルする人なんていませんでしたし」

「……少しはあいつのタズナを引いておけ」


 年上連中に甘やかされて育ったからあんな性格になったのだろう。


「レミィがもらって欲しがるようなプレゼントに心当たりはありますか?」

「勝手に見当つけろ」


 意外だった。

 普段分かりやすく己を主張しているから、把握できているかと思っていたが。


「困りましたね」


 弱ったような声に、アスウェルは仕方なく例の人形の事を話すことにした。


「……心当たりならある」


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