第6話 海



 屋敷の主人、ボードウィンが趣味である石の採取に遠出することになった。

 当然、護衛としてアスウェルはその道中についていくことになる。

 だが何故かそこにレミィいち使用人も同伴することになった。

 なんでも石の見分けには自信があるという。非常に特化的な役立たずな才能の持ち主らしい。


 海が見える浜辺、石の採取が終わったボードウィンが近くの別荘に引っ込む。

自由時間に、レミィは海に戻ってきた。


「聞いてくださいアスウェルさん、私泳げないんです!」

「にゃあ!」


 頭のネコモドキは主張しなくとも分かる。


「最近、街で浮き輪というものを見かけたんですけどあれを付ければ誰でも泳げるようになるんでしょうか」

「海に入りたいのか」

「とっても入りたいです、遊びたいです」


 子供のような行動理由だった。

 外見も歳もまだ子供だが。


「見張っててやる」

「えっ、ひゃあっ! 担がないでください、お腹いたいです、私荷物じゃないです!?」


 運んで、靴を脱がしてそこらへんに放り投げた後、波打ち際に下ろしてやる。

 青みがかった透明な水が、レミィ足元を濡らしていった。

 アスウェルは器用にそれら避ける。


「ずるいです」


 頬を膨らませた後、私服の白いスカートをまくり、海の水を堪能するレミィ。

 水面にいくつもの波紋を刻んでいく。


「お、おぼれたら、助けてくださいね」

「こんな浅瀬で体ごと浸かる気か」



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