幕間「銀髪ロリ、目安箱の価値に気づく」


最近、プラチナには、とっても変わった悩みがあった。

夫のシルバーと熱くて気持ちいい夜を過ごすようになってから――


『この顔で、毎晩やりまくってる淫乱ロリでござる』

『実にけしからんお。おじさんが調教……いや、調教してあげるお』

『エロ動画が見れない件』


何処からともなく、出所不明の謎の声が聞こえるようになった。

きっと、これがシルバーの謎の力の源泉であり、邪神とか、悪魔とか、そんな存在なのだろうなぁと、プラチナは判断する。

能力は秘匿するものであり、シルバーに聞いても誤魔化されて、ベットの上でやる運動が激しくなるだけだから、少ない情報で、推測するしかなかった。


(ところで、シルバー様は何をやっているんだろう?)


今、プラチナの目の前で、シルバーが、村の広場に設置された、大きな箱の中身を漁っていた。

とっても頑丈そうな金属の箱だから、価値は高そうだ。

ただし、内部には何も入っていないようで、シルバーは愚痴を零している。


「あ~、今日も目安箱に紙が入ってないな……。

無意味な買い物だった気がする……」


『文字書ける奴少ないのにwww無茶言うなwwwww』

『そもそも妖精さんは文字が読めないだろwwwww』


「あのシルバー様?それは何ですか?」


プラチナが疑問の声を上げると、シルバーは身体ごと振り返って、右手で箱を指差した。


「これ、目安箱。領民の意見を書いた手紙を入れてもらって、それを政策に反映させる……予定だった」


『ずっと未定でござる』

『小国でしか出来ないような政策だよな、これ……。

普通、君主って激務だから、大量の無駄情報を見る時間なんてないぞ……』

『文官を大量育成して、重要な手紙だけ届くようにしないと無理だぞ……過労死する気か?』

『実際に業務は、プラチナがやっているから、彼女が過労死するお……』


意味が分からなかった。

文字が書けない民衆相手に、何を考えているのだろう?

シルバー様の頭は、やはり、封印されている間に耄碌しているのかもしれないぁと、プラチナは悲しくなった。

でも、どんなシステムも運用次第。

今までの領主として培った経験を総動員して、目安箱の使い道を考える。

そうすると――ピコーン!と、小さな頭にアイデアが勝手に生えてきた!


「それ良いですね!

僕、とんでもない事に気づきました!

目安箱って最高です!」


『プラチナたん、可愛いお』

『ベットの上でも、叫びまくって可愛いお』


「……え?どういう事だ?」


「ほら、民意を利用して政治ができるって素敵ですよね!

民衆に反発され辛い政策って事ですし!」


これだけ言っても、シルバーは理解できないようだった。

武力と、不思議能力面では、とっても頼りになる夫なのだが、政治家としてはボンクラだなぁ、プラチナは思う。

でも、そういう駄目な所が可愛くて、性格の違う二人が、仲良く夫婦生活できている要員なのかもしれない。


「あれ?

シルバー様も分かって実行したのでは?」 プラチナは意地悪なツッコミを入れてみた。


「……すまん、プラチナ、説明して欲しい」


「ほら、建設工事の時とかに便利じゃないですか。

住民から多数のお願いがあった事にして、橋を建設しますとか言って……」


プラチナは、夫を驚かせるために、ひと呼吸置いて――


「民衆から税金を臨時徴収したり?」


『ひでぇぇぇぇぇ!!

このロリがひでぇぇぇぇ!!』

『でも、公共財は税金じゃないと、まともに運用できないお……。

民間だけの支出で賄うと、必要最低限以下の工事になるお……』


驚愕して黙り込むシルバー相手に、プラチナは自慢気に話を続ける。


「他にも色々と考えつきますよね。

人間(ハムスターマン)の駆除は、民意だから正義なんですとか。

子供を10人以上産む事を、民衆が望んでいるから義務にしたりとか。

色々と応用が思いついて素敵な箱だと思います」


「プラチナ……凄いな。

俺には思いつかないよ……そのやり方」


「いえいえ、シルバー様の方が凄いですよ?

ほら、この前の豚人間とか……僕の骸骨軍団が一億いても、返り討ちに合うくらい強いでしょうし。

『夢幻』って相性によっては、通常の軍隊では倒せないんですよね……。

同じ能力を持つ個体がいない時点で、対策なんて無意味ですし……。

せいぜい、どんな状況にでも即応できる精鋭部隊を編成するくらいしか、対応策が思い浮かびません」


『単体最強戦力の妖精さん』

『物量勝負の銀髪ロリ』

『この二人、本当良いコンビだお』


「だから、シルバー様。

僕の軍団で対応できない豚人間が現れたら……その時はお願いしますね?」


「ああ、もちろんだよ、プラチナ。

空気がない所に行けば、俺の勝利だし。

どっちみっち、そんな化物を放置する訳にも行かないし……」


『惑星破壊級の相手とかwwww』

『妖精さんwww今度こそ死ぬぞwwwww』


プラチナは、シルバーの小さな手を握った。

女の子みたいな柔らかい手。

でも、この手は、自分と同じく、血に染まっている事が嬉しかった。


「さぁ、シルバー様。

そろそろ、夕日が落ちますし……屋敷に戻りませんか?」


この楽しい時間が長く続く事を、プラチナは地平線の彼方へと落ちる夕日へと誓った。


『妖精さん、ご飯にする?』

『それとも、お風呂?』

『もちろん、ベッドでプラチナたんと運動するお!

ハッスルだお!』


この邪神の声、一部しか聞き取れないが――とっても失礼な事を言われているような、そんな気がした。




【内政チート】「自国の近くを戦場にすると脱走兵が増える!」 皆、殺し合いが大嫌い

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