051「 妖精さん、地中の太陽を拝む」

転生したら、地球生まれのアースノイドから、宇宙生まれのスペースノイドになった。

全く実感が湧かないが、このスペースコロニーの事をもっと良く知らないといけない。

全裸で考え事をする訳にも行かないから、シルバーは、ネット通販で、黒いズボン、黒いパンツ、白い妖精用の高いTシャツを購入し、それらを身につけた。

ついでに購入した黒いマイクを片手に、実況しながら、少しづつ空を降りてゆく。


「え~、これから俺は、、この星の秘密を探ります。

寄付金をくれると大変嬉しいです」


『お金をあげたら、妖精さんがキャラ崩壊したわ!』

『おーい!雰囲気を醸し出すために、マイク買うなよwww』


「じゃ、いつもの口調に戻って探索だ!

いくぞ!異世界探検隊GO!

世界の真実を見るのは怖いけど、知的好奇心が湧き上がってくる気がする!」


『探検隊の仲間が、ネットにしか居ない件』

『俺らが暖かく見守っているお……』

『現実に友達がいない妖精さん……』


上昇する時と違って、空をひたすら降りるのは楽チンだった。

降りる際に発生するエネルギーを利用し、スペースコロニーの端っこへと、超高速で飛翔する。

速すぎてジェットコースターに乗っている気分になった。

山や砂漠を遥か後方へと置き去りにし、大きな黒い崖へと向かうと――


『妖精さんの戦闘に巻き込まれてwwww壊滅している都市があるんですけどwwww』

『ひでぇぇぇぇぇぇぇ!!これがショタな妖精さんのする事かよぉー!』


巨大客船の残骸に押し潰された大都市。

世界一大きな超高層ビルの破片で、壊滅した大都市などがあった。

地面に巨大なクレーターが出来て、9割方、消滅している都市もある。

幸い、現場にある死骸は人間(ハムスターマン)だけだ。やりようのない悲しみに、彼らは耽っているように見えた。


「だ、大丈夫。

死んだハムスターマンだけが、良いハムスターマンだから、大丈夫……大丈夫」


『ひでぇ言い訳』

『命は平等で、尊いんだよ!』

『地球船宇宙号なんだよ!』


「いや、あの豚人間を放置したら、このスペースコロニーをぶっ壊していた可能性もあるんだから、許してくれよ……。

今、思えば、水着写真をばらまいて時間を稼げば良かった気もするけどな」


そのような雑談をやっている内に、目的地へと到着した。

世界の端っこだ。遠くから見た時は、大きな黒い崖が広がっているように見えたが、近くから見ると、崖の奥から、熱い光が溢れているのが分かる。


「崖から……熱い光……?

溶岩……?」


『スペースコロニーに、そんなもんはないぞwwwww』

『ダイソン天球体だと考えたら……この先にあるのは、言わなくても分かる気がするな……』


崖……いや、スペースコロニーの横に飛び出て、シルバーは一瞬、自殺行為じゃね?と思って焦った。

常識的に考えたら、ここは宇宙空間のはずだ。

幸い、スペースコロニーのすぐ近くなせいか、大気はある。でも、原理は分からない。


『妖精さんっ!下を見て!』

『赤い奴がいるわ!』


そのネットの言葉に釣られて、下を見た。

すると――そこにあるのは――小さな極小の点にしか見えないが、それでも十分に眩しい太陽がそこにある。

更に、空間を降りていって、上を見ると、剥き出しの建材に支えられたスペースコロニーが、輪っか状に何処までも続いている。

輪っか状だが、このスペースコロニーは、地球の何億倍も表面積がありそうだ。

さすがに距離がありすぎて、全貌は分からないが、太陽を囲んで一周する形で、このスペースコロニーは成立しているように思えた。

恐らく、超超巨大な輪っか型のコロニーなのだろうなと、シルバーは推理した。


『宇宙の神秘だわ……』

『太陽のずーと、向こう側にも、輪っかがあるのかな?

太陽の周りを、グルリッと一周するスペースコロニーとかやべぇ……』


スペースコロニーを下から支える建材へと、シルバーは近づく。

全く錆びていない銀色の金属で出来ている。

だが、とんでもないエネルギーが炸裂したのか、老朽化が原因なのか、スペースコロニーの端っこはボロボロだ。建材も所々、ちぎれている。

それらを見ていたネットの皆の一人が、ショタ妖精にツッコミをいれた。


『なぁ、妖精さん。

この超巨大な輪っかって……元々は、球形状のスペースコロニーのごく一部なんじゃね?』


「どういう事?意味が分からん」


『ほら、金属が歪んで切れているやん?

このスペースコロニーの本来の姿は、太陽を中心に、その周りを大きな殻で覆った丸い姿が、本来の姿だと思うんよ。

事故が何かで、妖精さん達が住んでいる輪っか以外、全部、太陽に落下したんじゃね?』


シルバーは唾を飲んだ。

そう考えたら、この黒い崖の光景を見て納得できる。壊れている建材も、それで説明がつく。


『俺が何を言いたいかと言うとな。

このスペースコロニーが今、輪っか状になってるのは、老朽化したのか、豚人間が壊したのか、分からないけど……』


残酷な真実が、突きつけられた。


『このスペースコロニー。

近い将来、かつて存在した他の大地みたいに、全部崩落して、あの太陽に落ちるんじゃね?』


世界滅亡の危機だった。

老朽化が原因だとしたら、現状では手の尽くしようがない。

『夢幻』の力を持つ豚人間の化物っぷりが原因だとしたら、皆殺しにしないと解決できない。

もしも、先ほど倒した豚人間みたいな化物が、その力を地面に叩きつけたら……スペースコロニーを支えている建材は壊れ、皆で一緒に太陽へGOするだろう。

ダークシルバーが、劣悪人種絶滅政策を取っていた理由も、今なら分かる。

そうしないと、いずれ、このスペースコロニーがぶっ壊れて、全て燃え尽きるからだ。

どうにかして、ハムスターマンと豚人間を皆殺しにしないといけないなと、シルバーは思った。

それはとっても壮大で、雄大で、偉業で、世界史に名前を残すどころか、トップレベルの英雄になれそうな労力が必要だ。

そして、鉄資源に、とんでもない価値があるのも理解できた。

あの時、会話したドンのセリフを、今なら納得できる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「無視するんじゃないのぜぇぇぇ!!!

空を飛べるからって、調子に乗るのもいい加減にするのぜぇぇぇぇ!!

亜人は、俺達、人間のために存在するっ!下等生物なのぜ!

さっさと自害するのぜ!これは人間様の命令なのぜ!

村の周りに布設した、怖い物体を除去するのぜぇぇぇぇ!!」


「返さないと、村を爆破するぞー!

子供達が不幸になってもいいのかー!」


「元はといえばっ!お前のせいで、俺らの生活が破綻したのぜぇぇぇぇ!!!」


「はっ?」 シルバーは呆けた声をあげた。


「お前らの村がっ!

安い鉄を使って!

鍬を量産したせいでっ!鉄の相場が崩壊して俺らが生活できなくなったのぜ!

だから、これくらいの事はやっても良いのぜ!

それが分かったら!自害するのぜ!これは命令なのぜ!」


『なぜ、鉄の相場が下がるwwwww』

『たった10トンで相場が崩壊だとっ……!?』

『妖精さん……明らかにこれ、口からデマカセだぞ……。

いくらなんでも、たった10トンの鉄で相場が崩壊するのはありえない事だ……』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

スペースコロニーを、掘れば、金属資源は豊富に出るだろう。

だが、それらを採掘して掘り出す事は、生活空間そのものを破壊する事を意味する。

必然的に、安全に採取できる金属資源は少ないはずだ。

金属製の備中鍬に、とんでもない価値がある理由も、これで説明がつく。


「……俺の人生が詰んでいる気がするのは、何故だろう?

全世界で穴を掘るの禁止しないと、不安すぎる……」


『妖精さん』


「ん?」


『内政チートして、文明発展させて頑張れ!』

『技術を発展させて、スペースコロニーを修理すればいいお!』

『うむ……努力すれば……ワンチャンスだ』


「そういえば……ネット通販に、地球人の奴隷を購入できる一覧があったような……?

科学技術を地球の皆と一緒に発展させれば、ワンチャンスかなぁ?

やっぱり省エネな科学技術は、日本人が一番?」


『それはらめぇぇぇぇぇ!!!』

『こんな、いつ崩壊するか分からない危険地帯に、人を放り込んじゃ駄目えぇぇぇ!!』


ネットの寄付で生活している以上、地球人の人権は守らないといけない。

ショタ妖精は、未来に待ち受ける難易度の高さに絶望した。

先史文明と、このスペースコロニーの製造は関係ない気がするだけに、修理方法が全く思い浮かばない。



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衣服と、黒いマイク 5000円(妖精さんの衣服は高いよう)

消費総額367万300円  ⇒ 368万300円



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(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html


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