三章「恐怖政治編」

026「エルフ娘、妖精さんの秘書になる」

シルバーが、豚人間600匹を倒し、誘拐された女性達を救出してから三日の時が過ぎた。

エルフ娘のエルフィンは、村へと戻り、陵辱の日々は終わったが……彼女の心が休む暇はない。

今、エルフィンは困っていた。細長いエルフ耳が、元気を失い、下に垂れている。


(な、なんで……!

わ、私がシルバー様の秘書なのですかっ……!?

責任重大すぎて、大変なのですよっ……!

転生特典に、ヒロイン補正を選んだら、とんでもない大悪党が引っかかってしまったのですっ……!

命が幾つあっても足りないのですっ……!)


エルフィンも困っていたが、その隣で宙に浮いているシルバーも困っていた。

新しい領主として、千人の領民に紹介される日なのである。

そのために、村中の亜人が集まり、それぞれが全く違う外見を持つ生物だから、困惑していた。

美形だらけのエルフ、力仕事をやってそうなドワーフ、爬虫類の外見を持つリザードマン……大小様々な面子が場に揃っている。

しかし、その中には一人も、人間(ホモ・サピエンス)は居なかった。


『エルフも、ドワーフも人類の文化にしか存在しない生物だお』

『きっと、未来世界が、色んな美少女に溢れているのは、人間の欲望の結果に違いないな……』

『二歩足で直立歩行している猫だお』

『モフモフしたい……』

『人間はどこにいるん?』『あの世かな』


エルフィンには、さっきから不思議なノイズ混じりの雑音が聞こえている。

シルバーが受信しまくっている電波が、同じ『転生者』であるエルフィンの脳にも、僅かながら届いているのだ。


(シルバー様といると……壊れたラジオが近くにあるような……そんな感覚になるのです……

相性が悪すぎるのですよ……性奴隷のエッチィ日々から解放してくれたのは嬉しいのですが……ストレスが溜まりそうなのです……!)


受難の日々は、まだまだ始まったばかりだ。


~~~~~~~


シルバーとプラチナが、群衆の前にある、木で作られた台座へと仲良く登った。

二人とも手を繋いでいて、プラチナが無駄に元気だから、エルフィンは不安な気持ちにさせられた。。

貧乏領主(プラチナ)が元気な時、それは大金が動く事を意味するだけに、今まで、散々、苦労させられてきたエルフィンは緊張せざる負えない。


「この方はっ!僕の夫となられたシルバー様です!

なんとっ!なんとっ!あの大英雄ダーク・シルバー様なんです!

これで、領地も発展して、ウハウハですよね!」


プラチナが、領民に紹介を開始した。ほとんどの領民は恐怖で体が震えている。

銀髪ロリが、ただの可愛い女の子ではないって事を知っているからだ。

だって、後ろに骸骨戦士を従えている。

しかも、3体どころではない。10体だ。豚人間との戦いで、激減したはずなのに増えている。

それだけで、どこかで大量殺戮が行われたんだなと、領民は理解できてしまった。


(この骸骨……外見が怖くて嫌なのです……。

弱い弱いと言ってますけど、そう簡単に壊れない時点で、恐ろしい存在なのですっ……!)


エルフインと、領民の意見は同じだ。平然と、動く骸骨を量産するプラチナの倫理観に、恐怖するしかない。

だが、この場には、プラチナの恐ろしさを欠片も知らない新参者達がいた。

南の海からやってきたリザードマン。緑色の鱗に覆われた蜥蜴人間が10匹いる。


「ぎゃはははは!あんなショタとロリが領主だぁ?

バカをいうんじゃねぇ!

どうせ、豚人間600匹を倒したのは嘘だろ!」


「「そーだ!そーだ!」」

「「弱者がリーダーなのは可笑しいぞー!ギャハハハハハ!」」


そんな罵声が場に響いた。そんな状況でシルバーは――


「諸君!俺は今日から、領主になったシルバーだ!よろしく頼む!」


『妖精さん、蜥蜴の罵声をスルーすんなwwwww』

『このショタ妖精っ……!全くアドリブができない大根役者だわっ……!』

『事前に決められたセリフしか言えない妖精さんwwww』


「無視するんじゃねぇ!このクソチビがぁ!」


リザードマンの指導者らしき男が、顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。

群衆を掻き分けて、シルバーのところへと近づいてくる。

エルフィンは、暴力の気配に、体が恐怖でビクンビクン震えた。


(た、大変なのですっ……!

このままじゃ、本当に、大変で、大変な事になるのですっ……!)


エルフ娘の視線は、シルバーの両手に注がれていた。

地球で、最も人間を大量殺戮した虐殺マシーンがあるのである。

こんな場所で、その殺戮マシーンが性能を発揮したら、紛争地帯みたいに、死体が量産される事、間違いなし。

シルバーは、武器を持っているせいか、余裕ぶった態度で、リザードマンに問いかける。


「いや、豚人間を倒したのは、本当なんだが……ところでお前は誰だっけ?

種族は、トカゲ人間?」


「トカゲ言うな!リザードマンだ!

そしてっ!俺の名前はっ!ゴブリン・ハンターのケロス様だぜぇ!

俺の手にかかれば、どんなゴブリンでも一撃であの世逝きさぁ! 」


『直立二足歩行の蜥蜴……?』

『どう進化したら、こんな生物が誕生するんだ?』

『手足の指の数が、人間と同じだから、きっと人間の遺伝子と合体させて作ったんじゃね?

染色体の数を調べれば簡単に分かるだろ』


シルバーは、目の前にいる蜥蜴が、人間と同じ遺伝子を使っているように思えなかった。

ついつい失礼すぎる質問をしてしまう。


「……えと、職業がゴブリン・ハンター?

それって凄い仕事なのか?」


『凄く弱そうな肩書きだ』

『……いや、豚人間みたいな化物かもしれないぞ』


シルバーは、ゴブリンと殺し合いをした事がないから、弱いのか、強いのかさっぱり想像できなかった。

馬鹿にされたと判断したリザードマンが、腰の鞘から剣を抜く。剣の刃先はボロボロだった。


『剣が錆びとるやんwww』

『ちゃんと整備しろよwwwww』


「ホラ吹き妖精と、吸血姫は、ここでぶっ殺してやるっー!

お前らを倒せば、今日から、俺様が領主って事でいいよなぁー!」


「「へへへへ!俺達の時代が始まるぜぇ!」」

「「兄貴っー!やっちまぇー!」」

「「そんなチビなら、簡単に殺せるぜぇー!」」


笑顔を浮かべるリザードマンのケロスが、シルバーとの間合いを詰めて、迫ってきた。あと20mほど接近したらショタ妖精を斬り殺せる距離だ。


「死にやがれぇー!」


『あ、だめぇー!トカゲさんっー!』

『剣じゃ、銃には勝てないのぉー!』


シルバーは、手に持っている殺戮マシーン……自動小銃AK47。壊れ辛い・扱いやすい素晴らしいアサルトライフル。

その照準を、目の前のリザードマンに定めて、躊躇なく引き金を引いた。

強力な乾いた音が連続して響く。錆びた剣が銃弾で折れて、ガラクタになる。

ケロスの体中が穴だらけになって、真っ赤な血を噴き出して倒れた。


「……ま、魔法使いだったのかっ……!」


ケロスの背後にいた、取り巻きのリザードマン達も倒れた。全身に穴が開いている。

明らかに致命傷だった。


『ちょwwwwおまwwww』

『銃弾の威力が高すぎて貫通しとるぞwwww』

『取り巻きまで殺すなよwww』


「あ、威嚇射撃するの忘れて、殺しちゃった」


『言い訳が棒読みwwww』

『妖精さん!最初から殺す気満々だよったよね!?』

『プラチナたんを守るために必要な犠牲だから、仕方ないんだお……』


領民達は、シルバーの所業に恐怖した。

歯には歯を。暴力には暴力を。反逆者には血の制裁を。

わかりやすい、力という恐怖が広まり、粛清されたくない彼らは……その場で土下座してひれ伏す。


「ひぃぃぃぃぃ!すいませんでしたぁぁぁぁ!」蜥蜴人間。

「恐ろしい魔法を使うんですねぇぇぇぇ!!」犬娘。

「ダーク・シルバー様の復活万歳っー!」エルフ

「さっきのトカゲどもは、悪いゴロツキだったんですぅぅぅぅぅ!!

処刑してくれてありがとうございましたぁぁぁぁぁ!!」ドワーフ

「わかるんだよぉー!新領主様はイケメンなんだねぇぇぇぇー!」猫

「にゃー!最強ですにゃー!」猫


「あ、うん。分かってくれたら、それで良いんだ……」


『妖精さん、こういう社会で一番重要なのは恐怖政治だよな』

『恐怖で民草を支配するのが一番だお!』

『こらwwwwwちゃんと、話し合いで解決しろよwwww』

『先に殺そうとしたのは、リザードマンの方だから仕方ないお……』


(あ、圧倒的な戦闘力なのですっ……!

しかも、あの銃を何処かで見た事があるのですよっ……!

でも、銃って、完成されすぎて、どれも外見が似ているから、たぶん気のせいなのですっ……!)


エルフィンも、恐怖で手足がガクガク震えた。

これから、地球の国であったような恐怖政治が始まるのかと思うと、未来が真っ暗なように思えた。

さらに広場の外側から600体の骸骨がやってきた事で、群衆の恐怖は絶頂期に突入する。

プラチナは無邪気な笑顔で、骸骨を指差して――


「あ、そうだ!シルバー様が豚人間を倒した証拠ならありますよ!

ほら、見てください!

この新鮮な骸骨達っ!

三日前の死にたてのピチピチですよ!

皆、シルバー様に逆らった豚の末路です!」


『ちょwwww最初にそいつらを出せよwwwww』

『プラチナたんが、ドジっ娘だお……でも、可愛いから許せるお……』

『リザードマン達が死に損wwww恐怖政治するなら、骸骨を最初に出せwww』 

『うむ……この演説は失敗なような気がするな……段取りが間違えすぎている……』


蠢き、無言で笑う骸骨達。

その姿を見て領民のほとんどは『逆らったら、お前らもこうなる』という暗黙の意思表示だと理解し、ひたすら拍手と賞賛の声を出して、支配者に媚を売る。


「さ、さすがシルバー様ですだぁぁぁぁ!!」

「オラ達、尊敬するですだぁぁぁぁ!!」

「にゃにゃにゃっー!凄い力ですにゃー」


皆、新しい支配者を見て、顔の筋肉が恐怖で引きつっている。

しかも、シルバーの10秒スピーチが終わった途端、プラチナがこんな事を言い始めた。


「今から拍手をしましょう!

拍手を一番最初にやめた人の家は……1年間、税金が2倍になりまーす!

もちろん、税を払えなかったら奴隷になって貰います!

はーい!シルバー様に拍手っー!」


『ひでぇwwww昔の西欧かwww』

『村八分政策だ!差別する対象を作る事で、統治しやすくなるアレだ!』

『プラチナたんのお腹が、真っ黒クロスケですぞ!妖精さん』


一人一人、パチパチッと拍手をし始める。

エルフ、ドワーフ、猫、犬、リザードマン……皆、違う外見だけど、共有する価値観を持っていた。

それは恐怖。逆らったら殺されるという感情を、皆が抱いていた。

領民の拍手は、一日中、その恐怖とともに、鳴り響く。


「「シルバー様万歳っー!」」

「「豚人間を討伐してありがとうございますー!」」


「あ、うん……わ、分かってくれたらそれで良いんだ……?」


『妖精さん、平等で公平で統治はよ』

『素人に、そんな不可能な政治力求めんなよwww』

『恐怖政治で正解だお……ナポレオンもこう言ってたお。

人は恐怖と利益で動くんだお……』




(ひ、秘書として、やっていける自信がないのですっ……。

でも、ここを離れて暮らしていける自信もないのですっ……。

私はどうすれば良いんですかね?)


拍手をうっかりやめてしまった、エルフ娘の税金が2倍になった。




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AK47(良質中古品) 5万円  

どんな悪環境でも使える突撃銃じゃよ。無許可でコピーされまくって、安価で買えるんじゃ。

世界中の人間を殺して殺しまくった史上最悪の殺戮マシーンじゃよ




消費総額5万1100円 ☛ 10万1100円

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プラチナ(´・ω・`)トカゲさんは、美味しくステーキにしていただきました。




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(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html




【内政チート】 「俺は後装式の大砲を開発して、連射チートする!」1854年のイギリス

http://suliruku.blogspot.jp/2016/04/1854.html

【小説家になろう】「ラノベは表紙が命なん?」ネトゲの嫁

http://suliruku.blogspot.jp/2016/04/blog-post_32.html

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