おにぎりとおむすび

「なあ、おにぎりとおむすびの違いって何だと思う?」不意に充が言った。

「そんなもん、いっしょだろ」匠はそういって話を終わらせようとした。

「そういえば「おにぎり」の化石が見つかったって聞きましたよ」冴子は話を蒸し返す。

「最近の若者はおにぎりが食べられないって言ってたな」佐々木も話に入ってくる。

「なんでですか?」冴子は聞く。

「なんでも誰が握ったかって不安なんだって」佐々木はそういうと新聞を読みだした。


「そういえば、あそこのおにぎりはおいしいよな」

あそことは会社の近くにある「おにぎりや」さんだ。

おばちゃんが素手で握っている。

「おにぎりというのは手の湿り気と塩加減が大事なんだよ。」匠は言った。

「そうだよな、あのおばちゃんの手は「ゴッドハンド」なんだよな。」

おにぎり、またはおむすびは三角形のおにぎりと、俵型のおむすびがある。

一般的に関東は三角形、関西は俵型となっているが別に、大きな変化はない。

農作業の時の昼食として食べられた。またはお花見や運動会の昼食として子供たちの楽しみだった。

コンビニが出来ておにぎりは新時代を迎える。「ツナマヨ」が大ヒットしたからだ。

それ以来コンビニの必須アイテムとなった。


塩と御飯、それから梅干し、というのがシンプルなものだ。

梅干しは「防腐」の役割がある。

前述のとおり、最近の若者は「誰が握ったか不安」といって苦手な人がいるが、本来は人の手の湿り気が大事になる。

手を塩水につけ、炊き立てのアツアツのご飯を手に持つ。

それに具材を入れて「2・3回」握る。

すると形が出来てくる。


わたしも料理は少しするのだが、できないのは「おにぎり」だ。

実にシンプルで難しい。

力を入れすぎても駄目、力を抜きすぎてもだめ。実に難しい。

寿司屋の板前が寿司を握るような難しいことなのだ。


「あーお腹すいた」充はそういった。

「おい。差し入れだ」別の部署の高木があの店のおにぎりを持ってきた。

「おー噂をすれば。」一同は声をあげた。

「冷めてもおいしいんですね」冴子はすでにほおばっている。

「さーこれ食べたら、もうひと仕事頑張れよ。」と言って佐々木は声をあげた。

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