ハンバーグ
「やっぱり彼氏のために料理を作るなら、ハンバーグですかね?」冴子の言葉に
「肉じゃがだろう」と匠と充はシンクロした。
「でも、ハンバーグの方がおしゃれじゃないですか?」
「お前はまだまだだな。ハンバーグなんてもんは外食で食べるんだろう?男は「家庭の味」を求めているんだよ。」匠は言った。
「あーハンバーグが食べたい。」と充はもらした。三人のお腹が鳴った。
こうして三人はハンバーグを求めて「洋食屋さん」に入った。
この洋食屋さんは昭和50年代にできた。
オーナーは小島夫婦だ。珍しく、この店のシェフは奥さんだった。旦那さんはフロアを担当している。
「この店はな。子供の時の憧れの場所だったんだぞ。」充は言った。
「なかなか、来れなかったんだ。誕生日とかのイベントがないと。。。」匠の言葉に充がうなずく。
「洋食屋さんって憧れですもんね」冴子は言った。
旦那さんが注文を取りに来る。
「ひさしぶりだね、匠君。充君。」「はい」と再びシンクロする二人。
「お父さんたち元気?」
「元気ですよ。博くんは?」
「ひろしくんって?」って冴子が口を挟む。
「うちの息子ですよ、今は横浜のレストランで修行してるよ。あと3年したら戻ってくると思うよ。」
旦那さんは微笑んだ。
「ところで今日は何が食べたいんだい?」
「ハンバーグ」と三人は口を合わせた。
「ちょっとまっててね」
「シェフ。ハンバーグ三つ。お願いします。」
「はーい」奥でシェフの声が聞こえる。
「ハンバーグ」とは「ハンブルグステーキ」がなまったものだと言われている。まあ一説に過ぎないのだが。。
「家庭で食べる」ハンバーグにはパン粉や、卵を入れるが、この店は、牛肉のミンチ7に対し豚肉のミンチ3の割合の合いびき肉だけを使う。
「肉を混ぜるときは、陳さんのように、肉に手の体温が伝わらないようにしないといけない」
ときおり氷水で手を冷やす。
あとは香辛料だ。このスパイスは特別な物だが、決して高いわけではなく、普通にスーパーなどで売っているものである。
それを調合する。
肉とスパイスそれと「塩」だ。
「塩」はつなぎとなる。それらを混ぜると実に「肉肉しい」ハンバーグが出来る。
これを「わらじ」ほどの大きさにして空気を抜く。
そうしてできたものをフライパンで焼く。
「表面を焦がしてうまみを封じ込めるため」なのだ。
「一通り焼きあがる」とそれをオーブンに入れる。
その間に熱した油にじゃがいもを入れる。
砂糖で「少し甘く」煮た、人参も用意する。
オーブンで焼くことで「中のふっくら」としたハンバーグが出来上がる。
ハンバーグを楊枝でさすと「透明な液体」がながれてくる。
「これが中まで火が通った証拠」になる。
そしてハンバーグを鉄板の上に乗せる。
鉄板は熱してあり、その上には揚げられたじゃがいもと人参が乗っている。
「ジュー」っと鉄板に乗せるとハンバーグは「声をあげる」
フライパンには肉汁たっぷりの液体が残っている。
この液体に手作りケチャップを混ぜ、赤ワインを少し。
それが沸騰したら、そのソースを小さな小瓶にいれて完成する。
客がソースをハンバーグにかけて煙に包まれる。
「わぁ」と冴子は声をあげた。
赤ワインの香が鼻を刺激する。
たまらずナイフを入れると透明な肉汁が流れてくる。肉汁も鉄板で熱せられ蒸発しにおいを出す。
「ふーふー」と猫舌の冴子は冷ましてから食べる。
実に「うまい」のである。
匠と充はハンバーグを切ったらすぐにライスの上に乗せる。
ライスに肉汁が絡まり、それだけを食べてもうまい。
最後にライスを食べるのが「常連」だ。
味はターメリックの味が際立ったがそれよりも「肉」のうまさが勝っていた。
「ほんと、肉をたべてるってかんじなんだよな」匠は言った。
「あついあつい」と言いながら鉄板が冷める前に三人共ハンバーグを食べ終えた。
「ふー。食ったな」充はいう。
「やっぱ肉だな」とは匠の言である。
「でも、この人参の甘く煮たやつもおいしかったです。」冴子はいいところを突いた
「なんか、懐かしいあまさなんだよな。」匠はいう。
それからセットになっている、オニオンスープをゆっくりと呑んだらもう三人は動けなくなった。
消化に時間がかかり、30分ほどおしゃべりに花が咲いた。
「やっぱり彼氏にはこれよね。ハンバーグ」と冴子は言った
つづく
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