ゴリ美
@SPmodeman
ゴリ美
「初めまして! 今日からお世話になります、よろしくお願いします!」
「ああ、君が新人の…。班長の鈴木です、今日からよろしく。」
今日からバイトで入ります、よろしくお願いしまーす…え? 名前? ああすみません、私ゴリ美っていいます。ほら、この近くの、鳥取二高に通ってます。ん? 頭? いや別に良くないですよ、つかむしろ相当バカですよ、私スポーツ推薦なんで。種目? えーやーだー。言いたくないー。逆に私何部に見えます? 重量挙げ…。は? ちょっとやだほんとあり得ない初対面でマジ失礼なんだけど! …当たりです、はいその通り、お察しの通りウエイトリフティング部です。まーここまでガタイいいと完全バレますよね。二高でスポ推薦取ってるの重量挙げくらいですし。練習? いやいいですよ練習なんて、もっと夏休みにバイトとかそういう女子高生っぽい事したいじゃないですか。むしろ練習とかしなくても勝てるし? 私こう見えて世界記録とか持ってるんで。とにかくその辺は大丈夫なんで心配しないで下さい…あ、さっそく作業ですね? 了解です! よろしくお願いします!
これをあそこまで運べばいいんですね? 了解です、おりゃっ! …え? 普通は一つずつ運ぶんですか? ああ別に平気ですよ、普段もっと重いもの上げ下げしてるんで。たぶん持った感じ今の倍くらいの量なら一度に運べますよ? 危ないからこれ以上はダメ…。仕方ないなー、めんどくさいけどちまちま運びますよ…。
うぉりゃっ! …あれ? もう休憩ですか? まだお昼にもなってないですけど? …ああ、言われてみればもう運ぶ物ないですね。やだ私ちょっと頑張り過ぎちゃいましたね。あっ、ジュース買ってくれるんですか? ありがとうございまーす! じゃあ私コーラで! …はーうまい! やっぱ労働の後のコーラは最高ですね!
…でも工場の短期バイトって怖い人ばっかりだと思ってたんですけどー、鈴木さんみたいな人が班長でほんと良かったですー。ええ? 私より見た目怖い人いないって…ちょっと鈴木さんさっきからマジ失礼なんですけど! 私これでも結構モテるんですよ! いやほんとマジ、嘘じゃないですって! 多分部活の中でも一番モテるくらいモテますよ! こう見えて脱ぐとマジヤバいですから!
え? 階級ですか? いやーそれは…75キロ超です。どのくらい超なのって…ちょっとそれ完全にセクハラですよもー! …まー百キロほど超ですよね。あ、でもデブではないですよ! こう見えて体脂肪率一桁なんで。いわゆるアスリート体型なんで。…ちょっと鈴木さん、自分から体重聞いといてノーリアクションひどくないですか? …鈴木さん? おーい、鈴木さーん。ヤバい、鈴木さん気失ってるじゃん…。さっき「完全にセクハラですよもー」のあたりで頭どついせいかな? おかしいな軽ーくやったつもりなんだけど…。えっマジヤバい鈴木さん息してないじゃん。身体もなんか変な方向に曲がってるし…。
よし! 鈴木さん私先に上がりますね、今日もう作業ないし別にいいですよね? …返事ないってことはオッケーってことですね! じゃあお先失礼しまーす、あとちょっとのっぴきならない野暮用があるんで明日からお休みしまーすお疲れ様でーす!
ふう危ないとこだった、もう少しで殺人で院ぶち込まれるところだったよ。未来のオリンピック代表が殺人犯になったら国家的損失だよね。あっちょうどいいタイミングでシャトルバスが来てる! 遅番の人達が乗ってくみたい、あのバス乗れば自然な感じに帰れるね!
あー意外に混んでるな、席空いてるかな…? あっあの人の隣に座らせてもらおう、すみませーん隣いいですか? わーありがとうございますー失礼しまーす。
…つうかえっ? なんで? 隣の人デカすぎない? わたしよりデカい人初めて見た…やだマジかっこいい…私の身長2m30センチだからそれよりデカいってことは…。やだ超高身長じゃん…マジ外人って感じじゃん…顔の彫りもゴリラかっていうぐらい深いし超外人じゃん…。工場の制服着てないって事は私と同じバイトかな?
あのーすみません、私今日からバイトで入ったんですけどー、あなたももしかしてバイトの方ですかー? わー本当ですかー? 逞しいから全然分かんなかったですー! ほら私か弱いから全然仕事出来ないしー、まわりオッサンばっかだしー、同じバイトの人に会えてほんと良かったですー! あっすみません私ごり美っていいますー、えっガリ男さんっていうんですか?すごーい変わった名前マジかっこいいですねー! 私二高通ってるんですけどー、ガリ男さんはどこ高なんですかー? 松江高校…? えっ、県外の高校なんですか? なんだどおりで聞いたことないと思いましたー、でもなんでこんな所のバイトに? 高校辞めて働く…あっ…すみません…あっでも、ガリ男さんの身体ならもっといい稼ぎ方あると思いますよ! ええ? 地元では一番貧弱だった!? うっそ…どんだけレベル高い高校なの…。あっ、もう駅つくみたいですね。ガリ男さん、よかったらちょっと遊んで帰りません? 私この辺地元なんで! そうだ、とりあえずファミレス寄りませんか? ロータリーのすぐ近くにサイゼがあって…。
やっばいマジヤバい…何がヤバいってガリ男さんマジヤバかった…だってやばいじゃん? ガリ男さんマジちんこデカいじゃん、並の男の十倍はあるじゃん、しかも耐久力もヤバいでしょ? 普通なら一回ヤッたら一か月は射精出来ないじゃん? でもガリ男さん一晩中スタンダップでしょ? ヤリすぎて朝帰りなんてAVでも見たことないよ…。だってさ、私絶対妊娠してるもん。結構経験ある方だけどゴムに入らないちんことか見たことないし、なんとなく妊娠してる感あるもん…。
しかもさ、あんなにチンコデカいのにサイゼ知らないとかやばいじゃん? サイゼ知らないしカラオケも地元に無かったって言うし、どんだけド田舎に住んでたの? チンコデカいのに田舎少年ってマジ可愛すぎない? もうマヂ無理…ガリ男さんと結婚するしかない…。
ね? そんな心配する必要なかったでしょ? ガリ男なら私のお父さんもお母さんも気に入るっていったじゃん! いくら授かり婚でも東京五輪の代表候補に娘さんを下さいって言われて断る奴なんかいないって! でもうちの部の監督にガリ男さん紹介してよかったよ、ガリ男さんいきなりスナッチとジャーク両方で世界記録更新しちゃうんだもん! ガリ男も即特待生として転校決まったし、私達最強の高校生カップルとして連日取材もヤバいじゃん! 二人でアルソックにも就職決まったし、もう人生順風満帆すぎてヤバくない?
だからさー、そろそろガリ男さんの両親にも挨拶行こうよ。だって家出みたいな感じで上京して一回も帰ってないんでしょ? 一応自分の親なんだからさー、結婚報告くらいしとかないといけないでしょ。大丈夫だって、お父さんもお母さんもテレビでガリ男の事観てるよ! 息子が五輪代表になって帰ってくるとか感動的過ぎるでしょ! ほら車乗って、一緒に免許取ったんだからさ、ドライブのついでにちゃっちゃと挨拶行っちゃおうよ!
ところでさ、ガリ男の実家って何県にあるの? …は? 島根? …ちょっと冗談やめてよ、島根県なんて何百年も昔に消滅してるじゃん。いくら偏差値10だからってそれくらい知ってるよ…。え? ほんとに島根なの? じゃあちょっと住所入れてみてよ。…ああ、一応カーナビには登録されてるんだ。でもこの地図どう見ても更地じゃん。ほんとにここで合ってるの? ねえマジで? ほんとに行っちゃうよ? …分かったって行けばいいんでしょ! まあ島根なら鳥取の隣だし、大した距離もないからいいけどさ…。
うそでしょ…ほんとに島根実在してるじゃん…。大昔の地震で県境の道も落石で塞がれてたのに…。鳥取以西の県は完全に滅びたって小学校でも習ったのに…。つかさ、それも驚きだけどさ、ガリ男のお父さんとお母さんマジデカくなかった? 私もガリ男さんも身体デカい方だけどさ、それよりデカいってヤバくない? つか街の人たちもデカくなかった? もうほんと松江ヤバい…島根マジヤバい…日本最後の秘境だわ…。
でもさ、お父さんもお母さんもいい人そうで良かったよ。第一印象マジヤバいって思ったけど結婚するって聞いて超よろこんでたじゃん。お母さんなんて「こんな頼りない息子に可愛いお嫁さんが…」って涙流してたしさ。きっと二人ともガリ男が心配で口うるさくしてただけだったんだって。…実はさ、うちの両親がガリ男の両親に会いたがってるんだよね。言っちゃ悪いけど、あんなど田舎住みならきっと鳥取観光でも十分楽しいと思うんだ。だからさ、今度ガリ男の両親に連絡してさ、結婚前に一度鳥取に来てもらおうよ。
もうお父さんもお母さんも何だったの!? せっかくガリ男の両親が来てくれたのに終始顔引き攣って…そのせいで向こうもなんか戸惑ってたじゃん。ほら見てよ、せっかくの記念写真なのになんか全体的にぎこちないじゃん。え? なんか生理的に無理って…ちょっと二人とも何女子高生みたいなこと言ってんの? いくらなんでも娘の婚約者の両親にその言い方はなくない? ん? 見せたいもの? こんな時に見せたいものって何よ…何これ、歴史の本…。 !? こ、これ…。いや、確かにこの写真向こうの両親に似てるけどさ、いくら何でもあの人達が西日本人っておかしいじゃん。西日本人って数百年前に絶滅した人間の変異種でしょ? 『異常なまでに強靭な身体、低い知能、狂暴な性格。一時は人間を滅ぼしかけるほどに生息地を拡大したが、沖縄九州四国および西日本大地震で滅びた』…。あのさ、確かに二人とも身体デカいしちょっと頭悪そうだしキレやすそうだけどさ、さすがにそれはないでしょ。というかそれ絶対二人の前で言っちゃダメだからね! …じゃあ私もう寝るから。おやすみ。
急に病院来てくれって言われたけど、一体何の用だろ? 出産予定日までだいぶ先なんだけど…。
失礼しまー…。あれ? お母さんとお父さんだ。どうしたんだろ二人とも。ていうか、え? 泣いてる…? なんで赤ちゃんのエコー見て泣いてるの? 先生がなんか手に持ってる…。!! あの本…! 前にお母さんに見せてもらった歴史の…! じゃあガリ男の両親は…島根の人たちは本当に…という事はガリ男も…。
…ああ、やっとつながった! もしもし、ちょっとヤバいよガリ男、このままじゃ出産できないかも知れない! さっき病院で先生と両親の話立ち聞きしちゃったんだけどさ…。え? こっちもそれ所じゃない? ちょっと何があったのよ。…え!? お母さんが銃で撃たれた!? 自衛隊に!? …ああ、ガリ男の両親かなり目立ってたし、もしかして本当にガリ男の両親は…。
ところでお母さんは無事なの…傷一つない? ああよかった、確かにライフルくらいで死にそうな感じじゃないもんね。え?良くない? お父さんがめっちゃ切れてる? ま、まあそれは当然だよね。え? マジ切れしてその場で自衛官殴り殺した!? 今松江市民総出で鳥取県民殺して回ってる!?
…ヤバいよガリ男、どうしよう…! そうだ! 二人で一緒に逃げようよ! 私なら病院なんてなくても出産くらい余裕だしさ、私達二人なら国籍変えてもオリンピック出れるよ…そうだ、海外、海外行こうよ! 私病院前のマックに居るからさ、車で迎えに来てよ! 急げばコナン空港の羽田行きに間に合うしさ、そのまま二人でどっか行こう! あっ、パスポート忘れちゃだめだからね、私の分もよろしくね! …あっ、お母さんとお父さん近くに来てる! ごめんねガリ男、バレそうだから移動するね、じゃあね、バイバイ!
「うえっ、気持ち悪っ!? 鈴木さん、なんですかこの気持ち悪い生き物たちは!?」
「んん? …ああ、この飼育ケースもついに寿命かぁ。このケースは小人ペット『グリちゃん』の繁殖用ケースなんだけどさ。なにぶん内輪だけで繁殖するから、ちょっと目を離すとこういう風に奇形種だらけになっちゃうんだよ。」
「そ、そうなんですか…。うえぇぇナニコレ…デカいグリちゃんが細いグリちゃんバクバク喰ってる…。」
「異様にデカいのは通称ゴリちゃん、異常に痩せ細ってるのは通称ガリちゃんっていうんだ。それにしてもガリの方はいつ発生したんだ? ゴリの方は一週間前にケース半分潰して処分したんだが…。」
「あっ見て下さい鈴木さん。一組だけまともなグリちゃん達が残ってますよ、どうしましょう?」
「あーいいよいいよ、どうせほっといたらまた奇形だらけになっちゃうから。このボタン押せばケースごと処分されるんだ。」
「そうですか、じゃあ遠慮なく。えいっ!」
「君、本当に遠慮なかったね…。まあとにかく、その調子で目を離さないように頼むよ。」
ゴリ美 @SPmodeman
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます