ウラシマ効果

嫁「ねぇ、さっきテレビでやってたんだけど、光の速さで動くと、未来に行けるの?」

夫「……別に光速じゃなくても移動すれば、静止してるものより時間は遅れるよ」

嫁「え? 光の速さじゃなくてもいいの? じゃあタイムマシン簡単じゃん!」

夫「まぁ光速に近い速度じゃないと体感するのは難しいくらいの遅れだから。それが、前に説明し損ねたウラシマ効果って言うんだ。ただし、特殊相対性理論上のね」

嫁「でたよ相対性理論。夫はホント好きだよねぇ」

夫「別に好きだから説明してるわけじゃないよ。それから『特殊』相対性理論ね。『一般』相対性理論上のウラシマ効果とは話が違うから」

嫁「一般の方が簡単そう」

夫「いや、特殊相対性理論は話が簡単になるように『特殊』な状況を仮定した理論なんだ。それを実際の世界に当てはめたのが『一般』相対性理論だから、どっちかと言えば一般の方が難しい」

嫁「もうその説明がわかんない。とにかく簡単な方にして」

夫「うん、そもそもSFで扱われるのはだいたい特殊相対性理論上のウラシマ効果ばかりだから、基本的にこっちで覚えておけば問題ないと思うよ」

嫁「おっけー」

夫「まず前提として、真空中の光の速度はどんな時でも同じです」

嫁「なんで?」

夫「光速度不変の原理でアインシュタインが提唱して、実験で立証されてるからだね。まぁ前提だからそこはそう言うものだと思って」

嫁「……わかった」

夫「そのうえで、真空の筒の中を1秒で光が往復する時計を作るとする」

嫁「一往復で1秒ね」

夫「光の速度は真空中であればどこでも同じなので、どこで測っても正確に1秒が測れる」

嫁「分かったってば」

夫「で、それを新幹線の上で測っても、正確に1秒だよね」

嫁「だね」

夫「でも、光は同じ速さで移動してるのに、光が下がって上がるまでに新幹線は結構横に移動してる」

嫁「うん」

夫「その時、新幹線の外から時計を見た人は、光時計の光が斜めに……Vの字型に動いてるように見えるわけ」

嫁「新幹線が動いてるんだからそうね」

夫「その時、光は1秒間にIの字の移動よりも長い距離を移動したことになるよね?」

嫁「あ、斜めだからそうだね。光の速さに新幹線の速さが足されて、その分光が速くなったのか」

夫「ところが光速はいつも同じで早くなったり遅くなったりしない」

嫁「……そんなの無理じゃん」

夫「無理じゃない。その場合、動いてる光時計は、止まってる光時計より、時間が遅く流れてるんだ」

嫁「え? 速さじゃなくて時間の方が変わるの?」

夫「そういう事。光の速度は不変だから、同じ速度で長い距離を進むには時間がゆっくり流れる必要があるんだ」

嫁「え~? なんか屁理屈で騙されてる気がする」

夫「理論は理解できても、実体験との齟齬があるから理解したくないのかもね」

嫁「う~ん、もう一回。もっとじっくり説明してよ」

夫「(時間がゆっくり流れてくれないと、世界滅亡までに理解しきれなさそうだなぁ)」


――了

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