ビッグバン

嫁「ビッグバンの前ってどうだったの?」

夫「どうだったの? って(いつもながらイノセントな質問だなぁ)……何もなかったって事になってるよ」

嫁「ずっと何もなかったの?」

夫「ずっとって言うのは語弊があるかな。何もないって言うのは時間もなかったって事だから、ずっとではないよ」

嫁「え? 時間がないのにどうやって変わるのよ?」

夫「今日はずいぶん難しいことを聞くなぁ。まだ科学的に解明されてない事だから、色々な説を見たり聞いたりした結果の俺の理解ってことでいい?」

嫁「夫の話はいつもそんな感じだと思ってるから大丈夫」

夫「……まず、ビッグバンの前の状態を考えるより、ビッグバンで広がって行く宇宙の外側がどうなってるか考えてみよう」

嫁「宇宙の外側? そこは宇宙が広がってて……あれ?」

夫「気づいた? 宇宙の地平線の向こう側に広がってるのが、ビッグバンの前の状態だと思うんだ」

嫁「じゃあ、そこを調べればわかるね!」

夫「理論的に言うとそうなんだけど、そこを調べることは物理的にできない。それこそワープ航法でも開発されない限りはね」

嫁「じゃあ結局だめじゃん」

夫「まあ待ちなよ。そういう場所があるとして、どうやってその『何もない』場所にいきなり物質が現れたのかって話でしょ?」

嫁「ビッグバンで広がってきたんでしょ? あれ? じゃあそのビッグバンはどうやって……結局何も説明できてない」

夫「うん、嫁がいるこの宇宙の始まりは結局『時間も物質も存在しない場所になぜか物質が現れ、時間も同時に存在し始めた』ってことになるんだ」

嫁「よくわかんないけど、何かがポンと出てきたのね?」

夫「そう、無から有が生まれた。これはずっと科学ではあり得ない事象だと思われてきたんだ」

嫁「思われてきたって事は、今は違うの?」

夫「前にも説明したけど、不確定性原理では、物理的に絶対に通り抜けられない壁を通り抜けて、原子が移動する事がありうるんだよ」

嫁「ネコが死んでて生きてるやつだっけ?」

夫「うーん、まぁそれでいいや。それでね、さっき説明した物理的に向こう側に行けない『宇宙の地平線』の壁をすり抜けて、原子が一個、ポンと出てきたわけ」

嫁「手品みたいだね。でも一個じゃ意味なくない?」

夫「それが大アリ。膨張率で考えて見なよ、0だった所が急に1になったんだよ? 何倍になったと思う?」

嫁「またばかにしてるなぁ?! えっと、1÷0=……と、あれ? エラーになっちゃった」

夫「学校で習ったでしょ、0で割り算しちゃいけないって。0から1になるのは、倍率で言うと無限大。つまり、一気に無限の膨張が始まるんだ。それがビッグバン」

嫁「さっぱりわかんない。頭爆発しそう」

夫「(ビッグバンだけにか)」


――了

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