シュレディンガーの猫

嫁「シュレディンガーの猫ってかわいいの?」

夫「……念の為に言っておくけど、それは思考実験の名前であって、そう言う猫が居るわけではないからね」

嫁「うそ?」

夫「シュレディンガーが量子論のパラドックスを指摘するために考えたんだよ。『1時間の間に50%の確率で猛毒ガスが出る箱の中に入れた猫は、1時間後に箱を開けてみるまで、死んだ状態と生きた状態が重なりあった状態で存在する』ってやつ」

嫁「そんな訳ないじゃん」

夫「そうだね。シュレディンガーも『おかしいだろ』って言って、この話を持ちだした訳だから」

嫁「だよねぇ。どう考えてもおかしいもん」

夫「でもね、原子レベルのサイズだと実際にあるの。不確定性原理って言って、二重スリット実験とかで証明されてる」

嫁「……意味わかんない」

夫「原子は観測者がそれを観測するまで、様々な状態が重なりあった状態で存在してるんだ。観測者が実際にそれを観測することで、ひとつの状態に収束する」

嫁「見られてない所は決めてないってこと?」

夫「量子論をそんな適当なシナリオライターみたいに言われるとなぁ……」

嫁「でもそんな感じでしょ? それで合ってるよね」

夫「決まってないじゃなくて『とりうる全ての状態が重なりあった状態で存在する』ってのがキモだから、合ってない」

嫁「その重なりあった状態って言うのがイメージ出来ないの」

夫「うーん、あ、ほら、このあいだ見てたシュタゲ。あれなんかそうだよ。世界線がたくさんあって、それが同時に存在する。それが重なり合ってる状態」

嫁「あぁ……『重なり合ってる』とか言うから分からないんだよ。なんとなく分かった」

夫「なんとなくか」

嫁「要するに、パラレルワールドでしょ?」

夫「お! そうそう。まぁ今主流なコペンハーゲン解釈よりはエヴェレットの多世界解釈っぽい世界観だけど、だいたい合ってる。すごいじゃん!」

嫁「褒めてる? ばかにしてる?」

夫「褒めてる褒めてる」

嫁「ふふーん。まぁねぇ。子供の頃からやればできる子って言われてるのよ」

夫「コペンハーゲン解釈だと、観測した瞬間に1つの結果に収束する。エヴェレット解釈だと観測した瞬間に他の結果と分岐するって言う違いはあるけど、現象的には同じだね」

嫁「どっちにしろ、見た人が知る結果は同じなんだったら同じことじゃん」

夫「今日はどうしたの?! そう『エヴェレット解釈は、観測者が感知しうる世界は1つだから、コペンハーゲン解釈を言い換えただけにすぎない』とも言われてるんだ」

嫁「やればできる子だから!」

夫「(やらない選択を続けてきた世界が現在なのか……)」


――了

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