ワープ

嫁「道路は空いてるけど、映画間に合わないんじゃない?」

夫「うーん、ギリギリだけど、最初のCMやってるうちには入れると思うよ」

嫁「あーん、カメラの踊りも見たいのにー」

夫「(元はと言えば化粧だなんだって時間かかった嫁のせいじゃないか)」

嫁「もうさ、すっごいスピードでビューン! ってワープ出来ればいいのに!」

夫「ちょっと待って、ワープってのはスピードは速くないよ」

嫁「……何言ってんの? ワープだよ? すっごい遠くまで一瞬で行けるやつ」

夫「うん……とりあえず映画見てから話そう。ダッシュ!」


◇ ◇ ◇


嫁「面白かったー、結構すごかったね! アクションとか」

夫「うん、アクションシーンはタイ映画だったね。CGは韓国か日本。日本製Aチームみたいで面白かったね」

嫁「Aチーム?」

夫「……あぁ、それよりワープの話」

嫁「なんだっけ……? あ、そうそう。なんで超スピード早いのじゃダメなの?」

夫「一般相対性理論上、質量を持つ物体が光の速さを超えることは出来ないんだ」

嫁「相対性理論とかなんとなく聞いたことある。でも、だからこそSFなんじゃない?」

夫「そうなんだけど、そこにはある程度の説明がないとまたSFじゃないんだなぁ」

嫁「スゴイエンジンだからワープできるんでしょ?」

夫「たとえスゴイエンジンで光の速さで移動できるとしても、そこにはウラシマ効果が働くんだ。宇宙船の中の人は1年で目的の場所に到着したしても、周りの時間は百年経ってたみたいなことになる」

嫁「……よくわかんない」

夫「うーん、とりあえず今日はワープの話だけしよう」

嫁「だから、結局ワープって何なの?」

夫「じゃあ藤子F式に説明するね。映画の半券の対角線上、右上から左下まで、一番早いのはどういう移動経路?」

嫁「F式?」

夫「いいから」

嫁「ばかにすんなよぉ。えと、こう」

夫「そう、そうやって真っ直ぐ直線で移動するのが一番近いよね。でもワープはこう」

嫁「え、ずるい! 折り曲げてくっつけたらそりゃあ距離ゼロじゃん!」

夫「そう! 2次元上の話だとどうしても時間がかかる所を、一次元上の3次元を通ることによって、目的地まで『近道』するのがワープなんだ。超スゴイスピードなのはワープじゃない」

嫁「えー、ずるい」

夫「ウラシマ効果の影響も受けずに何百光年の向こうまで人が行くにはこれしか無いの」

嫁「そうか、登場人物の年齢問題か……しょうがないな」

夫「いや、地球を救うのが目的だから、年齢の問題じゃないだろ」

嫁「ズルするのがワープなのね」

夫「……せめて『近道』するのがワープって覚えてくれないかな……」


――了

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