第4話 Ten Little Indian boys
10人のインディアンの男の子 食事に出かけ
一人が喉を詰まらせて 9人が残った
9人のインディアンの男の子 寝坊をした
一人が目を覚まさず 8人が残った
8人のインディアンの男の子 デヴォンに旅をした
一人がそこに居残って 7人が残った
7人のインディアンの男の子 薪を割った
一人が真っ二つになって 6人が残った
6人のインディアンの男の子 蜂の巣で遊んだ
一人が蜂に刺されて 5人が残った
5人のインディアンの男の子 訴訟を起こした
一人が裁判に掛けられ 4人が残った
4人のインディアンの男の子 海に出かけた
一人がニシンに飲み込まれ 3人が残った
3人のインディアンの男の子 動物園にいった
一人が熊に襲われ 2人が残った
2人のインディアンの男の子 日向ぼっこをした
一人が焦げ付き干上がって 一人が残った
一人のインディアンの男の子 一人ぼっちになった
そいつは自分で首をくくって
【そして誰もいなくなった】
・・・
持っていた本に書いてあったのは”それ”だ。
運命は死を宣告した。
頭がどうにかなりそうだった。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
痛く苦しく憎く卑しく酷く辛く厳しく虚しく切なく浅ましいく。
痛烈で過酷で非情で残虐で愚かで空虚で横暴で加虐で奇怪で不条理で。
ただ生きたかった。
一緒に生きたかっただけだ。
それができなかった。
生きる事ができなかった。
・・・
森の騒めきが冷えきった頭を満たしていく。
少年達の家から逃げて来た後、シェインにテン・リトル・インディアンボーイズの話を聞いた。
その間誰も一言も喋ることはなかった。
なんとなくではあるがシェインの言いたいことがわかった気がした。
少年達の物語は最初から”死ぬ物語”であり、それは運命だった。
そこに【混沌の魔女】が現れ少年の内の誰かがカオステラーにされた。
カオステラーになると運命に逆らえる、死ぬ必要がなくなるので、自ら進んで運命を、物語を壊している。
と言うことだろう。
つまりそれは”調律をする”ということは、少年達を”殺す”ということになる。
簡単な話、彼らは死にたくないからカオステラーになり、殺されたくないからヴィランに自分達を襲わせ、僕達と敵対しているのである。
「・・・・・・・。」
僕達の正義が途絶えた。
そんな予感がしたことに心の底から恐怖する。
最初に口を開けたのは物語の話をしたシェインだった。
「どうしま・・しょう」
小さく呟いた。
どうします?と疑問系にしなかったのは、気を遣ってくれたのか、それとも誰かに答えを言わせるのが怖かったのかもしれない。
レイナは目を瞑り深く何かを考えつめている様で、質問に対して微動だにしなかった。
「・・・・オレは調律はしない、オレはしたくない。あんな顔してた奴らに剣なんて振らせるかよ」
タオは俯きながらもはっきりと主張した。
「どんな理由でも死んじゃいけねぇよ。殺しちゃ駄目だ」
その言葉はまるで自分に言い聞かせるように重く響き、目はまるで他の場所を見ているようで、怒りと哀しみがぐちゃぐちゃに入り混じったようだった。
僕は・・・。
「・・・・・・・」
僕は。
答えが纏まらない、いや、僕の答えは決まっている。
しかしなんでか分からなかった、理由が無いのかどうかも分からない。
分からないのである。
なぜ自分は”調律したい”のか?
自分が調律に救われたからなのか。
自分が調律して救ってきたからなのか。
正義としてやってきたからかもしれない。
それとも他に理由が・・・・・・
・・・・・?
あれ?
なんで僕こんなにも調律したいん
「あぁああぁーーー!!!!!」
「・・・・・・」
弾けたように唐突に叫び声を上げたレイナは、呆然とする僕達を気にせずに話し始める。
「思い出したわ!!そうよ!!一つじゃないのよ!テン・リトル・インディアンボーイズは、もう一つあるのよ!!」
物凄い勢いで顔を近付けて来たので、僕は圧倒されて仰け反った。
「レ、レイナ?」
「あ、ゴメン」と距離を置き、また嬉しそうに話し始める。
「昔お城で聞いた事があるの!テン・リトル・インディアンボーイズは2つあってもう片方の方に調律すれば良いのよ!!」
レイナの話を要約すると、それはテン・リトル・インディアンボーイズという物語が2種類あると言う様な話だった、1つは1人ずつ残酷に減っていく歌、もう1つはタダの数え歌であると。
「そりゃあそんな事できれば良いんだろうけど、お嬢そんな事できんのか?」
そう、今まで物語を調律するというのはその物語を元の話に戻すだけであって、同じ話でももう1つの・・なんてことはできるかも分からないのである。
調律の巫女の調律の力がどれ程の物か僕は分からない。
できるかどうかも分からない賭けをして、もし失敗すれば少年達が死ぬ。
これをどう思うかは人それぞれだが・・・
ただそれなら僕は、
「いや、可能性があるならやろう!みんなが笑顔でいられるなら!」
調律の力がどんな物かを僕は知らない、だからこそ力を知っている彼女ができると言ったらできるのだろう。
僕はレイナの手に手を重ねると、シェインもそこに手を重ねる。
「卑屈になっていても仕方ありません、とことんまでやってやりますよ」
タオもそこに手を差し出し重ねた。
「・・・そうだな、このタオファミリーが本気でできない事は無い!いっちょやってやろーじゃねぇーか!!もう一回殴り込みだ!!」
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