第6話 全校集会
担任の先生がこの教室にやってきたのは、ホームルーム開始のチャイムが鳴ってから五分以上が経過してからの事だった。そして先生は教室にやってきて開口一番発した言葉は「今日の一時間目は体育館で全校集会するから、急いで廊下に並べ」という一言だった。
クラス中の生徒が突然の言葉にどよめきながらも、全員が素直に廊下へと出て、背の順通りに並ぶ。僕も先生の言葉に従い、クラスメイトと一緒に廊下へと出て並んだ。僕の身長はそれほど高いほうでは無く、前から数えて三番目である。
「ねぇねぇ、なんだろーね?」
僕は僕の後ろに立っている、そこそこ仲の良い女の子に話しかけるも、その女の子は何故か浮かない表情で「さぁ」とだけ、返事をしてくるだけであった。
今日は機嫌が悪いのかな……なんて事を思い、隣に並んでいる男子にも「何かあったのかな?」と話しかけるが、男子は僕のほうを見る事すら無く、僕を無視している。
その反応を見て、僕は、胸が詰まる。気持ち悪くなる。
……もしかして、皆、知っているのかな。
知って、いるのかなぁっ……。
全校集会だって、タイミングが良すぎる。うちの学校で月初め以外に全校集会なんて、そうそうあるものでは無い。僕の事で集会が開かれるのではないかと、思っていた。
思ってはいたのだが、考えたくなかった。考えたくなかったから、テンションを上げ、クラスメイトに話しかけていた。
しかし、今はどう考えても、僕の事で開かれるとしか、思えない。
心の中が不安と嫌気でいっぱいになり、もう僕は、笑顔なんて作っていられなかった。
いつの間にか俯き、前に居る子の足元を、ただ見つめていた。
体育館へと学校中の生徒が集められ、全校集会が開かれる。
ざわつく中、教頭先生がステージ上へと上り「皆さん、おはようございます」と、挨拶をする。
それを受けて、素直な低学年の生徒達が元気な声で「おはようございます!」と、返事をする。
そして「えー、非常に言い難い事ではあるのですが」という前置きの後に教頭先生の口から出てきた言葉は「
僕は頭がクラリと、揺れる感覚がした。そして朝食は食べていないというのに、吐き気を催した。
「緊急の職員会議を開きまして、今後、このような事が無いよう、皆さんに少しお話させて頂こうと思いまして、集まって頂きました」
気持ち悪い。
逃げ去りたい。
そんな事しなくても、誰もそんな馬鹿な事、しない。
僕が馬鹿だっただけ。ただそれだけじゃないか。
赤ちゃんだって無事だった。それで、良いじゃないか。
何故、こんな……こんなさらし者のような事を、されなきゃ、いけないんだ……。
「おえっ……げほっ」
僕の口から、汚い声が漏れてきた。
僕はこの時間中、耐えられるだろうか……そして、僕の名前は、出てこないだろうか……。
真っ黒い感情が僕の心から湧き出てきて、僕の全てを支配する。僕の体の自由を奪う。
寒い。震える。気持ち悪い……。
僕はしゃがみ込み、霞む視界で地面を見つめた。地面の木目を見つめた。
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