第4話 暴力の恐怖
昨日、父親に蹴られた場所や叩かれた場所がズキズキと痛む。首を振る度に痛む。
痛むというのに、僕の首振りは止まらない。何故なら昨日の嫌な事が、頭から離れてくれないから。
いくら振っても、振っても、離れてくれない。僕の脳裏にベットリとこべりついていて、まるでしつこい油汚れのよう。
「ううぅぅっ……!」
僕が首を振る度に、僕が幼いころから愛用している木製のベッドがギチギチと音を立てる。
その音に触発されてか、僕の部屋の扉を父親が乱暴に開き、僕の部屋へと入ってきた。僕はとっさに父親の顔へと視線を向けて、恐怖した。父親は顔に、鬼を宿している。
僕は思わず左手を前に出して、体をベッドの隅へと移動させながら「いやぁっ!」と叫んだ。しかし父親はそんな僕の事を意に介していないようで「うるせぇっ!」と一言怒鳴り、僕の足を蹴る。
バチッという音が鳴り、僕の足に痛みが走る。その際に僕は「あがぁっ」という声を上げたのだが、その声や僕の態度が気に食わないのか、父親は更に僕へと近づき、またしても髪の毛を掴み、声になっていない叫び声を上げて、僕の頭を振り回した。
「ごめんなさいっ……! ごめんなさいぃっ!」
僕は思わず、謝った。
しかしそれでも、父親はやめない。僕の髪の毛を、引っまり回す。
永遠とも思える時間、僕は髪の毛を引っ張りまわされ、最後にはベッドに付いている小物を置く用の棚に、僕の頭を叩きつけた。僕の耳には、ゴッという鈍い音が届く。
「ふぅっ……! ふうぅっ!」
父親は激しい息遣いになっていた。体力を消耗するほどに、僕の髪の毛を引っ張っていたのか……と、僕は何故か冷静に、父親の事を観察していた。
頭は痛いけど、痛くなかった。とても不思議な、感覚だった。
朝食が用意されていない事を知った僕は顔を洗って歯を磨き、直ぐに着替えて逃げるように家を出る。母親は、まだ起きていないようだった。
学校へと続く道は、僕以外に誰も歩いていない。それもその筈、時刻は朝の七時を過ぎたばかり。何をするにも、まだ早すぎる。
僕は時間を潰すため、通学路にある少し大きめの公園へと立ち寄り、そこにある水飲み場で水を飲み、ブランコへと腰を下ろして、空を見上げた。
九月末の空だと言うのに太陽がとても近く、まるで真夏のように僕を照らしている。
いい天気だな……なんて呑気な事を、考えた。
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