第48話 子供の「目」とジョンの将来 【了】

   ジョンはヤンキース・スタジアム近くでのミニ野球教室で起きた子供たちのエネルギッシュな笑顔と「刺す」ような、真剣で希望に満ちた「目」を忘れることができませんでした。ダスティンに子ができたように、たぶん、シドニーとの間に何人かの子ができるでしょう。「何人の子供がほしいか?」という質問には、「野球チームは無理だけれど、バスケットボールチーム位の数かな~」と答えます。子供が好きなジョンとシドニーのことですから一人の子だけでは少なすぎますから複数の子供を作りたいのです。しかし、シドニーの体のこともあるので、無理をしない程度、の数に収まると思います。

   自分に子供ができるかもしれないな、と思うと、せめて、あのヤンキース・スタジアムで出会った子供たちのように明るい子供に育てたい、とか考えていました。ジョンは将来を考えながら、これから生まれる、であろう自分の子供のためにも、子供がスポーツに関する仕事をしたくなってきました。ダスティンの場合は、プロ野球の選手であり、ジャッキー・ロビンソンの家系に繋がり、そのロビンソン財団からの依頼で、すんなりやりたいことを見つけたのですが、ジョン自身はまだ、「子供のスポーツに関する仕事」とはいっても正確にどんな職業が自分にできるかをすぐには浮かびませんでした。

   ある日、ケビン父さんの家でエイドリアン爺さんと3人で話をするチャンスがありました。正直に将来やりたいことが決まっているのですが、具体的な職業があるか分からない旨を伝え相談しました。エイドリアン爺さんは、

「ジョン、爺さんがどうやってジョッキーや厩舎で仕事を見つけたか教えてあげよう。小さなころから動物や虫が好きで、家にいろいろな生き物を持ち込んで、お前の曽ばあさんに怒られたものだよ。1900年初めのあの頃は、学校に行ける子なんて半分もいなくて、子供でも仕事をしたもんだよ。爺さんも仕事を探して近所をうろうろしていた時に、暴れ馬に出会ったんだ。お前にも昔よく話してあげたシャムロックスターという馬だよ。この暴れ馬は誰とも仲良く出来なかったのに、しかも周りに馬のことをよく知っているプロの調教師が一杯いたのに、懐いたのは動物好きの爺さんだけだった。」

「その話は聞いたことがあるよ」、とジョン

「爺さんが言いたいのは、爺さんは動物や虫が大好きだったということと、シルバースターの『目』を見て仕事を見つけた。お前がスポーツを好きだということと、子供たちの『目』を見て、その子たちの例えようのないエネルギーを感じることができる。何か似ていないか?」

ケビン父さんがここで一言いいました。「子供たちのスポーツについて論文でも書いたら?」

「論文?」

「ああそうだよ。論文でも本でも、なんでもいいんだが、全国のスポーツ少年少女、そしてそのスポーツに関係する人々、団体や協会、などの人々が熱心に読みたくなるようなものだよ」

ジョンは、このケビン父さんの一言に自分がヤンキース・スタジアムで見た子供たちの『目』と同じ目をしていたことに気が付きませんでした。


【了】

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ジョン・マクドナルド Story 3 - 僕の話 苺原 永 @maiharahisashi

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