第24話 ヤンキースの躍進

  バック・ショーウォルター監督がマイナーの監督も長く勤めてきたこともあり、若手の台頭を喜んでいました。(のちに「Core 4(コア・フォー)」と呼ばれるヤンキースの中心選手であるマリアノ・リベラ、アンディ・ペティット、デレク・ジーター、ホルヘ・ポサダを育てたことで有名になり、さらに、2016年時点のボルティモア・オリオールズ監督) バック・ショーウォルター監督は生粋のヤンキース選手で、「The House that Ruth Built - ベイブ(ベーブ・ルース)が建てたハウス(球場)と呼ばれるスタジアムを徐々にファンを呼び戻しました。もちろん成績が回復してきたのです。1993には東部地区2位となり、翌年の1994年にはアメリカンリーグ東部地区で優勝までさせました。また、アンディ・ペピットやアマチュアフリーエージェントで入ってきたマリアノ・リベラなど、後のヤンキースの「黄金時代を築く連中ばかりでした。

    ホルヘはすごいピッチャー全員から「相手役」として指名され、ほぼ、毎試合出場しました。バーニーもセンターフィールダーとして、また、打力を買われて同様に毎試合していました。しかし、一番期待したダスティンは、先発ピッチャーの地位を獲得できず、多少イライラしていました。ホルヘとバーニーはそれでもくさるダスティンを連れ出して、いつものように夕食を共にしていました。

「元気出せよ! バック・ショーウォルター監督が褒めていたぞ」と、バーニーが言うと、「そうだよ、監督の話では、今はリリーフだけれど、来シーズンは先発で考えるって!」

この言葉でダスティンは勇気づけられましたが、二人は同時に問題も提起してくれました。それは、ダスティンのピイチングの時には内野も外野も守りにくい、というのです。バッターが次にどんなボールが来るか分からないように、同時に野手にも分からないのでした。フライアウトはよいのですか、ゴロはどんな回転でボールが跳ねるか予知できない、というのです。ジョンに相談した結果、次に投げるボールが当たり損ねやゴロになる場合は、帽子のつばを触ることにしました。単に帽子をかぶりなおしたり、汗を拭くために帽子をいったん取り外したりして、サインだということを見抜かれないようにしました。次が直球の場合は帽子を脱がず、腕の袖やポケットのタオルで鼻の汗を拭いてサインを送りました。これで、回数を重ねると野手からの不満も消えていきました。これで、ダスティンは、先発のローテーション入りを果たしました。

    ホルヘ、ダスティン、バーニーの新人たちが活躍しだした頃のヤンキースは徐々に実力を認められ、バック・ショーウォルター監督が計画した通り若手が活躍して徐々に「常勝」チームと変貌していきました。バック・ショーウォルター監督時代で、1993年には東部地区で2位、1994年にはついに1位となりました。しかし、このとき大きな問題が起こりました。ストライキです。全メジャーリーグのオーナー会が、チームごとの総年俸に対し上限を定める「サラリーキャップ制度」を導入しようしたのでした。勿論、選手会は猛反対です。そのため起こったストライキは長期にわたり、1994年8月から1995年の4月まで続き、大変なことになりました。当時、テレビ放映権がなくなり各チームは収入減となり、全国の球場にもファンが来ないわけですから、入場券の収入はもちろん、グッズや飲食からの収入もなくなりました。シカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダンはその時、シカゴ・ホワイトソックスのマイナーリーグでプレーしていましたが、ようやく活躍を始めた頃でした。マイケルは、ファンを無視した野球界に愛想をつかしバスケットボールに1995年3月に復帰しています。シカゴ・ブルズはその後に2度目のスリーピート(スリーピートとは、スリー、リピートの合わせ言葉で3年連続優勝のことです)。

   これを少し補うため、各テレビやスポーツ新聞は日本のプロ野球や、大学リーグの野球を放映しました。この間、各メジャーリーグの選手たちは多くがろくに練習もせずにいましたが、ホルヘ、ダスティン、バーニーを含むヤンキースの若手は、労を惜しまず、毎日のように練習に励みました。デレク・ジーター、マリアノ・リベラ、アンディ・ペティットなどと一緒に、バック・ショーウォルター監督の元、新鋭チームとして強力なメンバーのチームとして生まれ変わっていきました。バック・ショーウォルター監督はその時なぜかジョー・通りに監督の座を譲っています。このときの交代理由にはさまざまの憶測が入交じり、正しいことは正確には公表されていませんが、ジョージ・スタインブレナオーナーとの確執があったとされています。その後、このオーナーは金に物を言わせ、その後も若手の台頭に加え、ベテラン勢も揃えていきました。FAでジェイソン・ジオンビ、トレードでアレックス・ロドリゲス、ランディ・ジョンソンらを獲得してヤンキースの位置黄金期を作り上げたわけです。


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