第15話 ケビンとジョン親子の登場

ショーウォルター監督はこの結果を見て考えました。あれほどの多彩なピッチングができるピチャーのキャッチが難しいのは理解できるが、慣れの問題ではないのか、と。ショーウォルター監督はダスティンに聞きました。

「君がこれまでになった過程で、誰が君のボールを受けていたんだね?」

「ジョンという兄弟です。血はつながっていないのですが、兄弟同様に育てられました」

「ジョンは今何をして、どこにいるのかね」

「シカゴ大学のSophomore(2年生)でシカゴにいます。彼の父で、私を育ててくれたケビン・マクドナルドさんはスポーツ医学で有名な方です」

「ひょっとして、ボストン・セルティックスで活躍し、後にスポーツドクターとしてシカゴ・カブスの新人選手を変身させたあのケビン・マクドナルドが君の父親だって?!」

「ハイその通りです」

「おいおい、なんで早く教えてくれなかったんだ!それなら話ははやい。お二人に、球団から連絡を取ってもらうよ」。

これで話がまとまりました。シーズンオフの秋になってからケビンとジョンにフロリダに来てもらえることになりました。秋はケビン父さんにとってはプロバスケットのシーズン直前ですし、アメリカンフットボールのプロリーグも最終準備の時期です。さらに、ジョンは、新学期が始まったばかりで、二人とも多忙でしたが、何とか都合をつけてきてくれることになりました。一緒に暮らした家族であるし、スポーツを通じて深い関係にある同志です。日程を球団と設定してスケジュールを組みました。この年のヤンキースは負け越しているため、他球団がワールドシリーズに余念がない時でも、来年の準備ができました。そのため、比較的早く、ケビンとジョンはフロリダに行けることが分かりました。日程のこともありますが、ケビン父さんには、ある秘策がありました。ダスティンには内緒でしたが…。

      ダスティンが所属していたFort Lauderdale Yankeesのスタジアムはフロリダ州南東部に位置し、柑橘系のにおいが混じる暖かい空気が流れ、冬でも温暖な気候は、今でも多くのメジャーリーグチームがキャンプに訪れる場所に位置していました。ビーチも近く、リゾートエリアとして有名なところです。ケビン一行はフォートローダーデール・ハリウッド国際空港に到着すると、トロピカルブリーズが出迎いをしました。出迎えてくれたのはほかにもありました。最高級のリムジンです。一行の荷物を入れるのには苦労しましたが、全員が快適に乗車できました。(北米のリムジンは乗員の広さは世界一ですが、荷物を入れるトランクは小さいままです)。まず最初に、ホテルにより荷物の整理と1時間くらいの休息をとるために、ヤンキースが予約しておいてくれたB オーシャン リゾートというビーチに近い高級ホテルに着きました。ケビンとジョンはダスティンに会う前に、打ち合わせをすることになりDos Caminosというバーで落ち合いました。もちろんダイエットコークをたのみ、アルコールは抜きです。

      しばらく、キャッチボールをしていないジョンはダスティンが昔よりどんなに違ったボールを投げるか心配でしたし、ケビンもダスティンが、プロのバッターを相手にどれくらい心理戦で「裏をかく」ピッチングが出来るか分かりませんでした。そこでまず、ジョンとダスティンで20球ほどホームプレートをはさんで本番さながらのキャッチボールをしてもらうことにしました。もちろん、ビデオは回りっぱなしにしてです。そして、今度は2~3人のバッターをおいて、いろいろな変化球を投げてもらうことにしました。初日はこれで十分です。そして、そこで得たデータをホテルに持ち帰って分析し、さらにテストを行うことにしました。

     ケビン父さんが用意した秘策とはシドニーとアレクサンドラを連れてきたことです。シドニーはジョンのガールフレンドでアレクサンドラはダスティンのガールフレンドです。テスト中は顔を見せずに、夕食時にダスティンを驚かす作戦です。このことはダスティン以外、みんな打ち合わせ済です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る