第12話 将来の選択

ジョンとダスティンがハイスクールを卒業する時期が近づきました。コンタクトの解禁日が近づいて来るとやはり周りが賑やかになって来ました。本人の二人は知りませんでしたが、まずスカウトが練習を見に来ます。この時点では二人には全く影響はありません。しかし、スカウトはコーチに話しかけます。コーチもいずれはハイスクールレベルのコーチから大学やプロのコーチにステップアップしたい、と思っているコーチも多く、「自分が育てた!」、と云う雰囲気をだしてスカウトに熱心に対応するものです。(相手は有名大学やプロのスポーツ人間で立場的にはスカウトの方が上ですからコーチは丁寧に応対するものなのです。)勿論、スカウトの最大の関心事は本人達の大学への進学かプロへ進むか、の進路選択の事です。ジョンもダスティンも学力は優れていますし、大学の可能性も十分あり得ます。(全科目中でジョンがトップの科目とダスティンがトップの科目とがあり、得意科目が別でしたが、兄弟で競い合っていました。)

ジョンとダスティンは進路についてお互いに話し合いましたし、エイドリアン爺さん、クリスティーナ婆さんとケビン父さん、ミミ母さんを交えて話し合う事もありました。ジョンは進学に決めていましたが、ダスティンは早く収入を得たい希望を強く持っていました。ジャキー・ロビンソンの孫と云う地位が確立されている事もあり、自分の特異な能力を試したい希望も持っていたからです。ジョンに対してもダスティンに対しても、家族の全員が「自分の意思」。を大切にしていましたし、結局は個々の人生ですから。それに反してジョンは「何を勉強したいか」で悩んでいました。ケビン父さんの様に医学部に進学する事も考えました。哲学にも興味がありましたし、テレビや新聞などのメディアで働いてみる事にも興味がありました。いずれにしても、自分で決めようと思いました。(しかし、実際に二人とも自分の恋人と話し合う事が一番多かったのですが…。 ジョンにはシドニーという恋人が、ダスティンには アレクサンドラと云う娘がいました。)

進学かプロの道かがはっきりした時点で勧誘したいチームは電話で連絡して来ます。通常、ヘッドコーチや監督のレベルの人々です。訪問の約束の電話です。約二週間かけてこの面接を行う訳ですが、マクドナルド家は大変な二週間でした。電話は鳴りっぱなしですし、訪問客は一件30分くらい居ますのでスケジューリングやコーヒーや紅茶の準備、など。クリスティーナ婆さんの応援を借りて対応しました。ジョンは進学、ダスティンのプロの道を選んだので、家には全国の大学と全国の大学MLBの代表が集まる事になる訳ですから。二週間で合計、42件の訪問者と130回の電話がありました。その間、テレビ局や全国紙/地方紙の新聞などのメディアの取材もありました。ケビン父さんのNBAセルティックスへ行った時は、遥かに静かでした。全国のファンも「あの二人はどのチームが獲得するのか?」、と一喜一憂する有様でした。

ダスティンはアメリカンリーグとナショナルリーグのそれぞれ二チームずつに絞りました。ナショナルリーグでは指名代打の制度がない為に好きなバッティングができる事が一つのポイントになりましたが、お世話になったビル・ヴェックさんはオリオールズのオーナーですし、大好きなエイドリアン爺さんがヤンキーズファンである事も気になるところです。しかし、それを選択の理由にする訳にはいきません。余計な迷惑がかかるかもしれないと思ったのです。ところがヤンキースのルー・ピネラ監督直々に来てくれた事には驚きました。当時のヤンキースは、1981年を最後にワールドシリーズ出場からも遠ざかっており、10勝以上を稼げるピッチャーに飢えていた事も事実ですが、MLBでは何と言ってもナンバーワンのヤンキースが頼みに来たのですから、ダスティンは大変感銘を受けました。ヤンキースにとって低迷を続けるチーム事情の中で、あのジャッキー・ロビンソンの孫で両手投のピッチャーと言うのはファンを呼び戻す絶好のツールとなるわけです。 ドラフトという制度がありましたが、その当時は希望球団が率先して指名したり、チーム間で指名権を譲ったりできました。

一方、ジョンは進学する訳ですからダスティンほど注目は浴びませんでした。それでも、全国の有名大学の野球部から訪問者がありました。しかし、アメリカではバスケットボールやアメリカンフットボールは高校生からの採用が重要ですが、歴史の古い野球では既に株組織が確立されており、つまり、マイナーリーグからメジャーに引き上げてくる事が多く、大学の野球部がもてはやされている訳ではありません。従って大学の選択基準は野球にしなくても良い訳です。ジョンが出した結論は周囲を驚かせました。シカゴ大学への進学です。野球部はあるのですが全国でも全く無名な大学だからです。アメリカではアイビー・リーグやシカゴ大学の様な学力レベルの高い大学では通常、プレップスクールと呼ばれる学校から進学をするのですが、ジョンの場合、直接入試を受ける訳ですから、大変です。高校時の成績には問題はないので可能な事ですが、やはり大変です。

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