第8話 スーパースター

その当時のMLBは、二人にとって話題の中心でした。特に歴史に残る大きな記録が生まれない平凡な時期でしたが、二人にとっては、魅力のある選手が目白押しでした。アメリカンリーグでダスティンがこよなく好きだったのは、同じ黒人だからでしょうか、リッキー・ヘンダーソンと言う選手でした。左投右打と云う変わった選手でした。通常、ファーストベースに近い左利きの選手の方がヒットを打つことでは有利ですので、右利きの選手が左で打つ事は多くあるのですがリッキー・ヘンダーソンの場合、逆です。しかし、メジャーリーグ史上最高の「リードオフマン」(野球では一番バッターの事で、特に得点能力の高い選手の事です。通常、安打をよく打ち、盗塁が多い足の速い選手)と呼ばれる選手なのです。通算、4000打数(歴史上、リッキー・ヘンダーソン以外に当時二人しかいません)、1406盗塁、通算先頭打者ホームラン、81本(史上1位)と云う選手です。それから、もう一人いました。ジョンも好きな選手です。同じく黒人の選手ですが、レジー・ジャクソンと云う選手です。エイドリアン爺さんがヤンキース時代のレジー・ジャクソンが好きでいろいろ教えてくれた事もあるのですが、「Mr. October」、と呼ばれた選手です。何故、「ミスター・10月」、と呼ばれるかというと、ワールドシリーズが行われる10月になるとホームランを量産したからです。通算563本のホームランを打ち4シーズン、ホームラン王となっています。レジー・ジャクソンが人気者であったのは別の理由がありました。妙ですが、レッジー・ジャクソンは生涯2,597回も三振をした選手です。この記録は、いまだに破られていません。つまりレジー・ジャクソンはホームランか三振をする選手です。通常、チームは三振かホームラン、と云う選手を嫌います。チームプレーが出来ないからです。レジー・ジャクソンがメジャーで長年プレーできるのはファンが応援するからです。彼のファンは熱狂的です。三振しても、勿論、ホームランを売っても大声援が起こります。特に、ヤンキース時代ではファンが集まるバーでは店にいるお客全員がホームランを打った日でも、大事な時に三振した時も奇声をあげ乾杯したそうです。

そんなジョンとダスティンが一番、話合ったのはナショナルリーグのピート・ローズでした。シンシナティー・レッズから79年にフィラデルフィア・フィリーズに移った彼は「チャーリー・ハッスル」、と云うあだ名の通り全ての事に全力で取り組みました。生涯で4,256本の安打を記録しています(歴代2位のタイ・カップは4,189本)が、最も驚くのは二塁手、右翼手、左翼手、三塁手、一塁手とそれぞれのポジションを少なくとも500試合以上こなしています。完璧なユーティリティープレーヤーです。なんでも必死に行うピート・ローズはプロの選手の鑑でした。特に盗塁する時のヘッドスライディングは天下一品でした。ジョンもダスティンには彼のプレーには心打たれ惚れ込んでいました。

もう一人、彼らが褒めちぎったのはオージー・スミスでした。スイッチヒッターの彼は最初の頃、全く打てなかったのですが、そのうちに器用なバッティングでヒットをよく打ちました。彼が初期に打てないのに試合に出られたのは遊撃手としての彼の守りが素晴らしかったのです。1980年は遊撃手として621補殺というメジャーリーグ記録を樹立し、自身初のゴールドグラブ賞を受賞しています。

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