第7話 ダスティンとジョン
ダスティンとジョンはその日から仲良くなりました。勿論、一緒に野球を見た、という繋がりだけでしたが、時間を共にしたり、同じ学校に通い始めたりするようになり、徐々にですがお互いを受け入れて行きました。アメリカでは子供の学校への送り向かいはバスを利用するか、個人が行う事になっています。ジョンとダスティンの場合、ミミ母さんが中心でしたがエイドリアン爺さんやクリスティーナ、それに勿論、ケビン父さんも手伝いました。エイドリアン爺さんは孫のジョンの送り向かいだから楽しいのですが、意外にダスティンの発言が面白いのです。野球に詳しいエイドリアン爺さんは、いろいろな事を知っているダスティンに驚かされました。チーム名、選手名、ポジション、打率や、得意な球種、など、選手名鑑に残っている数字を丸暗記しているようでした。学校の成績もヴェックさんの援助の元で勉強をしていたのでしょう。殆どA+か、A-でした。ジョンも同じような成績でしたので、二人は学校で一位二位を分け合っていました。しかし、MLBの野球の事になるとダスティンが上でした。そんな二人はよく近所の広い空き地でキャッチボールをしました。エイドリアン爺さんも年甲斐もなく付き合ってやりましたが、驚いた事にダスティンは右でも左でも同じ強さの直球や変化球を投げる能力があるのです。
アメリカの里親制度は虐待を受けた子供が多く、中には強制的に親から親権を取り上げ、別の家族に親になってもらう事も多く、裁判所の決定や仲介によって里親を希望する夫婦や家族にメイティング(仲介)してくれる協会があるくらいです。これは、後々に問題が発生しないように配慮されたものですが、ダスティンの場合、出生がハッキリしている事、ヴェックさん家もマクドナルド家も経済的にも社会的地位にも問題がない事がハッキリしているためすんなり要望が受理されました。外部からの目にも問題がない家庭でしたが、マクドナルド家自体もダスティンに対して本当の家族同様に扱いました。褒めたり叱ったり、ジョンと同じ扱いをしました。ダスティンはみるみるうちに明るい子に変身していきました。冗談も言う様になりました。二人は少年野球のチームに入りました。練習は土曜日に行い、試合は日曜の午後に組まれていました。日曜の午前中は教会への礼拝があるので選手が揃わないので、必ず午後でした。ジョンとダスティンはバッテリーを組んでいます。ジョンは誕生日プレゼントのキャッチャーミットがありましたし、ダスティンはピッチングが得意でしたのですんなりポジションが決まりました。チームでもこの二人のバッテリーがチームで最も重要な信用をおけるバッテリーであるため、誰も反対はしませんでした。
ダスティンは所謂、スイッチピッチャーでスイッチバッターでした。誰もそんな選手を見た事がありません。(記録ではMLBに現在までに6人の選手がスイッチピッチャーとして登録されています。ただし、どちらかの手にはグローブをはめなければならない - バッターから見て次のボールが右なのか左なのかをハッキリさせる - と言うルールがあります)しかし、相手選手にあわせて右左を使い分ける訳ですから、ケビン父さんに頼んで特別に4本指のグローブを特注してもらいました。「スラッガー」、と言う商品名でお馴染みのルイビル社に頼んで作ってもらいました。親指をいれる部分を大きくし、さらにもう一つ親指用の穴をつけます。その代わり人差し指と中指、薬指と小指のそれぞれを同じ穴にいれる、というデザインです。つまりポケットと呼ばれる、キャッチする時にボールが当たる部分の両側に親指をいれる様な太い指穴が2つずつ配置されているデザインです。
ケビン父さんは、この特異なダスティンの身体能力とジョンとのマッチングを研究する事にしました。スポーツドクターとしての研究内容は、主に筋肉と骨の繋がりと外的影響要因、例えば気温、湿度などがあり、内的要因とは栄養(飲食物)やサプリメントがあます。関連する医学としてはダスティンが子供である事から小児科学、心臓学、整形外科、生理学、生体力学、外傷学さらにヘルスケア学などが挙げられます。また、怪我をした時の治療法(緊急処置)にも関係してきます。ダスティンには、食事の内容、睡眠時間、柔軟体操(ウォームアップとクールダウン)、運動後のマッサージや入浴方法などを指導して、研究をしていきました。関節や筋肉を守るテーピング技術も含まれています。ジョンもキャッチャーですから多少、ピッチャーのメニューとは事なりますが、ほぼ同じ内容を指導しました。二人がキャッチボールをしているところをビデオに取り、投げ方やキャッチングの仕方、さらにピッチング、キャッチングの姿勢ボールの投げ方、握り方、捕球の仕方、足の挙げ方、フォーム全般、頭と「目」。の位置、フォロースルー、捕球の後の姿勢、などを研究していきました。
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