15#絶望の荒野に雨が降る

ぽつっ、ぽつっ、


 荒野に激しい雨が降り始めた。

 雨は、愕然とするオオカミのムウガと、割れた風船の破片を濡らした。

 ムウガの目から、大粒の涙が雨粒に紛れてこぼれ落ちた。


 「うっ・・・うっうわああん !!」


 子オオカミのムウガは、大声で泣いた。


 全てが打ちひしがれ、全てが絶望しか無かった。




 うおおおおおん!


 うおおおおおん!




 ムウガの泣き声はやがて、遠吠えになった。




 うおおおおおん!


  うおおおおおん!


 うおおおおおん!




 激しい雨をついて、ムウガは声が枯れる位に遠吠えをした。


 ・・・父ちゃんも母ちゃんも兄妹も、どうせここにはいないんだ・・・

 ・・・何故なら僕らオオカミは既に・・・

 ・・・僕はずっと、『幻想』を見てたんだ・・・

 ・・・僕とオオカミ家族が暮らしてるという、『幻想』を・・・

 ・・・家族に見せる筈だった風船が割れたことで、『現実』を分からせられたんだ・・・!!悔しい・・・虚しい・・・





 うおおおおおん・・・!


 うおおおおおん・・・!




 激しい雨でグシャグシャのオオカミのムウガは、身体中の空気を既に使い果たし、精魂尽き果てそうになっていた。




 うおおおん・・・!


 うおおおん・・・!

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