14#カラスの襲撃

 段々集まってきた黒い影が見詰める中、夥しい数のカラフルな風船の束が枯れ木が生い茂る荒野を歩いた。




 かあー!かあー!かあー!かあー!かあー!かあー!かあー!



 

 そっと黒い影は、どんどん増えていった。


 

 

 「ふうせん!」「風船!」「風船割りたい!!」「風船割らせろ!」



 夥しい数のハシボソガラスの集団が、のこのこ蠢く風船の束をまじまじと凝視していた。



 「風船割りたい!!」「風船割りたい!!」かあー!かあー!


  「うるせえ!」


 このカラス軍団のリーダーガラスのゴロチは、かあーかあー喚く彼のカラス軍団に一喝した。


 「ふふふ・・・痺れるぜえ・・・!!久々の風船だぜ!風船をパンパン割るのが快感なんだよな!割れる音がな!」




「父ちゃん・・・母ちゃん・・・兄妹・・・逢いたいよ・・・」


 子オオカミのムウガは、項垂れながらトボトボと荒野を歩いた。

 風船で辺りを覆われた前を、隙間から覗いた。


 今さっきから、カラスの声がしていたからだ。


  「やけに多いなあ。早く抜け出さなきゃ。」




 ばさばさ・・・




 カラスの羽音が、ムウガの近くで聞こえた。その瞬間・・・




 ぱぁん!




 「?!」

 

 ムウガの鼻先に、割れてボロ切れと化したオレンジ色の風船の破片が、ヒラリと舞い降りた。


 「・・・風船が割られた?!」


 ムウガは仰天した。




 ばさばさ・・・ばさばさ・・・




 ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!




 ばさばさ・・・ばさばさ・・・




 ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!




 「うゎあ!カラスが集って僕の風船を割っている!!

 やめてくれ!!もうやめてくれ!!」


 子オオカミのムウガは、体に結んだ割れた風船を振りかざして必死に暴れた。




 かあー!かあー!かあー!かあー!



 ばさばさ・・・ばさばさ・・・



 ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!ぱぁん!




 ・・・カワウソさんが膨らませた赤い風船も、

 ツキノワグマさんがいっぱい膨らませた風船も、

 そして、僕が膨らませた風船も全部割れた・・・



  「はっ!」


 まだ、トキが膨らませたピンク色の風船がまだ割られずに残っていた。


 「最後は俺に割らせろぉー!」


 ピンク色の風船が目についたリーダーカラスのゴロチは、後方から勢いを付けて飛び掛かってきた。




かあーーー!!!!!




 カラスのゴロチは、鉤爪をピンク色の風船をターゲットに向き出しにして突っ込んできた。




 うううう・・・うううう・・・




 ムウガは身構えて、唸り声をあげた。


 「わ!中身はオオカミ!?」


 それは、一瞬の出来事だった。


 プスッ!!


 カラスのゴロチは勝ち誇ったように、一瞬ニヤリとした。




 ぱぁーーん!




 トキが膨らませたピンク色の風船は、激しく破裂して無惨に四散した。



 時が止まった。




 他のカラス軍団は、オオカミを見たとたん、激しく動揺してその場から逃げ出した。

 オオカミのムウガの廻りには、夥しい割れた風船の破片が散らばっていた。

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