8#オオカミ家族と風船の夢

 子オオカミのムウガは、森を抜け、荒野を駆け、崖を昇り、風の匂いを嗅ぎ、風船の束が飛んでいった場所を探し回った。


 「ふぅ・・・疲れた。」


 ムウガは川沿いの岸辺で、舌を垂らしてハアハアと呼吸をしながら休んだ。

 子オオカミのムウガは、石がゴツゴツした河原でゴロンと寝そべった。

 鉛色の空を見上げ、何処かにいる父母姉弟のことを思い出した。


 ・・・みんな、僕のこと探し回ってるだろうな・・・


 ・・・ごめんね・・・


 ムウガは、そのまま河原で寝てしまった。


 ムウガは夢を見た。

 姉のモウガ、妹のバルガ、兄のボウガと、今までムウガが風船を探して歩き回った道を一緒に駆け回る夢を。  

 先頭の父母オオカミに、子オオカミのムウガは追い付いた。


 「あれ?」ムウガは思った。


 「父ちゃん!!母ちゃん!!何で『木の実』持ってるの?」


 父母オオカミは、それぞれ口に風船をくわえて駆けていた。  

 父母オオカミのそれぞれの口にくわえた風船は、どんどん大きくなっていた。

 それぞれ、息を吹き込みながら駆けていたのだ。


 「『木の実』大きくなってるよ!」ムウガは聞いた。


 「ふうせん!」「風船!」


 父母オオカミは、そう答えるだけで頬をはらませてくわえた風船に息を吹き込んで膨らませていた。


 風船はどんどん大きくなって、父母を吊り上げた。


 「父ちゃん!!母ちゃん!!どうしたの?」




 ふうわり・・・



  パンパンに膨らませた風船をくわえた父母オオカミは、宙に舞い上がった。


 「ボウガ!!モウガ!!バルガ!!うわあ!」


 ムウガの兄姉妹は父母オオカミの尻尾をくわえ、どんどん空高く登っていった。




 ふうわり・・・



 「みんな!置いていかないで!!」


 子オオカミムウガだけ地上に残して、ムウガの父母兄妹はどんどん大空へ飛んでいき、ムウガの視界に消えていった。


 「待ってぇーみんなぁ!うわっ!」




 ドン!!ドタッ!!



 がつん!



 「はうわっ?!」


 子オオカミのムウガが倒れたとたんに、頭をぶつけた所で目が覚めた。


 「ふう・・・」ムウガは溜め息をついた。


 「皆、何処にいるんだ・・・?そして『木の実』は・・・」




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