7#割れた黄色い風船
クマタカのソリッドから離れ、残された6つの風船は、割れた黄色い風船が垂れさがったまま、空高く再び舞い上がった。
子オオカミのムウガは、ただ呆然と飛んでいく風船の束を見上げた。
クマタカの羽根が舞い落ちてムウガの黒光りする鼻に、ちょこんと載った。
「はっくしゅん!」
羽根が鼻の孔をくすぐり、ムウガはくしゃみをした。
ムウガは足元を見た。
クマタカの羽根の下に、割れた黄色い風船の破片が落ちていた。
子オオカミのムウガは、割れた風船を口で拾い上げると、くんくんと匂いを嗅いだ。
・・・タカさんに食べられた『木の実』の皮・・・
今まで嗅いだことの無い、ゴムの香ばしい感じに紛れて、微かにクマタカの口臭。
口と前肢で、『木の実の皮』を拡げようとした。
びよーんと、『皮』は伸びた。
「面白い!!」
びよーん、びよーん、ぱちっ!
前肢から皮を離したとたん、ムウガの顎を直撃した。
「痛ッ!!」
子オオカミのムウガは、余りの痛みで揉んどりうった。
「よく伸びるなあ。この『ふうせん』という木の実の皮は。」
ムウガは、右脚の爪に風船の『皮』をキュッと結わえた。 歯と片方の爪でキュッと。
ムウガは、くんくんと爪の風船の破片の匂いを嗅いだ。
「1個『食べれた』のはしょうがない。見つけなきゃ!
どこかにいる、父母兄弟にあの『ふうせん』という『木の実』を見せたい。」
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