6#クマタカに奪われた7色の風船

 一羽のクマタカが、舞い降りてきた風船の束をかっ拐っていった。

 子オオカミのムウガは、呆然とした。


 「まてぇ!僕の木の実!!」


 ムウガは、風船の束を嘴にくわえて飛んでいくクマタカを追っていった。

 

  「これが『木の実』?馬鹿じゃねぇの?

 これは、『風船』っていうんだよ!『ふ・う・せ・ん』!」


 クマタカのソリッドは、翼にぽんぽんとなびいて当たる、風船の束にうっとりとしていた。



 ひゅーーんばさばさ・・・



 「ん?1つ元気の無い風船があるぞ?」


 クマタカのソリッドは、半ば縮んで浮力の無い黄色い風船を見つけた。




 ばさばさばさ・・・




 「ここなら、オオカミも追い付けな…?え?オオカミ?」


 ソリッドは首を傾げた。


   「確か・・・母ちゃんが言ってたな。昔、ここに怖いオオカミが生きてたって。まさか生きてたとは?」


 クマタカのソリッドは、キョロキョロと辺りを見渡して、大きな翼を拡げてうーん!と伸びをして鼻の孔を翼で掻いた。

 「さぁー!元気無い風船に魂を吹き込むかぁ!」


 クマタカのソリッドは、風船の束から縮んでた黄色い風船をまさぐって、脚の指で手繰り寄せた。


 「これだな。」ソリッドは、黄色い風船の吹き口の栓を鋭い鉤爪で取った。




  ぷしゅっ!




 「わぁっ!萎んじゃう!!」



 クマタカのソリッドは、慌てて風船の吹き口を嘴にくわえた。


 ソリッドは、鼻の孔から「すーっ!」と息を深く吸い込んだ。


 「せーのっ!」




 ぷぅーーーっ!


 ぷぅーーーっ!




 クマタカのソリッドは頬をはらませ、黄色い風船に吐息を嘴から思いきり吹き込んだ。


 ぜぇぜぇ・・・。


 ソリッドは、身体中の空気を絞りだして息切れした。

 クマタカのソリッドはまた息を思いっきり吸い込み、風船を膨らまそうとしたとたん、


 「うわあ!僕の木の実をタカに食われたあ!」


 追い付いた子オオカミのムウガが、ソリッドの後ろで叫んだ。


 「オオカミ!」



  ぷしゅーーーー!!




 クマタカのソリッドが脚の指と翼で押さえていた黄色い風船は、思わず嘴を離してしまい、みるみるうちに空気が抜けてしまった。


 「わあーっ!萎んだ!」



 ぷぅーーーっ!!


 ぷぅーーーっ! !




  クマタカのソリッドは、頬をめい一杯はらませ顔を真っ赤にして、萎みかけた黄色い風船に息を吹き込んだ。


 「タカさんよくも、僕の木の実食べたなあ!」


 子オオカミのムウガは、ソリッドに詰め寄った。


  「う~~~~~~~っ!」


 ムウガは唸りをあげた。


 「木の実?風船が萎んでたから、膨らませてあげ・・・」



 ぷすっ・・・



 ソリッドの鋭い鉤爪がふいに、パンパンに膨らんだ風船に刺さった。


 「うわっ・・・?!」



ばぁーーーん!!




 黄色い風船は、どでかい音をたててパンクした。


 「ひゃーっ!すませーん!」


 風船のパンク音と子オオカミの『木の実』・・・風船を割ってしまった罪に駆られて、クマタカは慌てて飛び立った。

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