4#飛んで行った7色の風船を追いかけて

 カラフルな風船の束は、どんどんどんどん子オオカミのムウガの元を離れ、空に昇って行った。


 「うわあ待てぇー!僕の木の実ぃ!」


 ムウガは、無我夢中になって荒れ地を超え、林を抜け、草原を超え、川を渡り、 山風に煽られて飛んでいく、風船の束を見失わないように鋭い目を凝らして、子オオカミのムウガは夢中になって追いかけた。


 「わあっ!」


 ムウガは、石ころの出っ張りに脚を取られた。


 ドテッ!!


 「痛っ!」


  子オオカミのムウガは、ムクッと起きて身震いした。


 「あれ?僕の『木の実』は?どこ?どこなの?」


 ムウガは、木の実…風船の束を見失ってしまった。


 「どこ?どこなの?どこ行ったの?木の実・・・?」


  子オオカミのムウガは、途方に暮れて山風が吹き荒れる鉛色の空を見上げていた。


 「木の実・・・木の実・・・ふわふわして、美味しそうな木の実…」


 そう思うと、どこかにいる父母兄妹のことを思い出し、目から涙が零れた。

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