ばれた行為と、その後の顛末

 全くもって言い逃れの出来ない状況である。僕はアキの頭の上にしっかりと手を乗せている。彼女は目を覚まし、自分の頭の上に置かれた僕の手を見て、それから僕の顔を見た。ああ、嫌われるだろうか、嫌われるだろうな、一体何を言われるだろう、いや、むしろこのまま何も言われない方が辛いかもしれない……とネガティブな考えが頭の中でぐるぐると回る。

 しかし、次に僕が見たものは、にへら、と頬を緩ませた彼女の笑顔であった。

 「兄さん、私の頭を撫でていたんですか?」

 ああ、そうだ、と少し困惑しながら返す。

 「えへへ、そうですか。でも、少し恥ずかしいですね。こんな歳になって、頭を撫でられるなんて言うのは」

 彼女は随分嬉しそうだった。

 「でも、へへ、嬉しいです。兄さん、私のこと嫌いだと思ってたから。最近、全然お話しできてないし、それに避けられてるような気もしてたし……。でも、頭撫でるぐらいには好きってことですよね?ちょっと、安心しました」

 そう、優しい顔をして言う彼女を見て、何故だろう、自分の本心を洗いざらい吐いてしまおうと言う気になった。彼女にそんな風に思わせてしまったという罪悪感からかもしれないし、これ以上このことで苦しみたくないと言う身勝手な欲望からかもしれない。ここではっきりと伝えて、きっぱりと拒絶してもらった方が、きっと良いに違いない。利己的な僕の頭はそう結論付けた。

 少し話がある、と言って、僕は彼女の前に座った。それから、本心を全て、余すところなく伝えた。避けていたのは嫌っていたのではなく、その逆であると言うこと。いつの間にかアキを恋愛対象として見てしまっていたと言うこと。それから、きっと良い心持がしないだろうから、大学を卒業したら、アキから離れるから、それまでは辛抱してほしいと言うこと。

 彼女は何も言わず、最後まで僕の話を聞いていた。僕はつい恐れてしまって、彼女の顔を見ず、床に向かって話していたから、彼女がどんな顔しているのか分からない。

 「兄さんは、私のことが好きなんですよね?」

 話し終わった後、彼女はポツリと言った。おかしなことを言う、今までそういう話をしてきたじゃないか、と少し驚いて、顔を上げた。

 彼女は、嫌悪や侮蔑など、僕の考えうる表情を、全く浮かべていなかった。むしろ余計に嬉しそうになっていた。

 「じゃあ、いいじゃないですか。血が繋がってないんですから、家族の好きも恋人の好きも大して変わりませんよ。兄さんは家族としても私のことが好きなんですよ」

 変な所にこだわるんだから、と彼女は笑う。僕の一世一代の告白は余りに呆気なく、あっさりと受け入れられてしまった。変な所でも何でもなく、多くの人がこだわるであろう部分を、彼女は笑い飛ばしてしまったのだ。

 「それに、私も兄さんのこと好きですよ」

 急にそんなことを言うもんだから、僕はついへどもどしてしまった。何とか、それは家族としてだろう、と返すと、

 「さあ、どうでしょう?」

 悪戯っ子のように、彼女はまた笑った。

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義妹と上手に話せない。 国会前火炎瓶 @oretoomaeto1994

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