第131話:大穴牟遅

 金成、阿修羅、目黒の3人が向かう先に繁華街があった。

そこで信号待ちをし、スクランブル交差点を渡ろうとした時であった。多くの人が行き交う中、突如黒のワゴン車が突っ込んできた。慌てて逃げ惑う人の中、危うく引かれそうな人もいた。金成達はやや遠目でそれを見ていたので、巻き添えを喰らうことはなかったが、その後パトカーも追跡をしていたようだ。

 これ以上の追跡は一般市民を巻き込むということからも断念したが、もしそれが盗難車やナンバー偽造であれば逃げ得ではないのかという意見も多い。

「もしそういった逃げ得になるようだったら俺の出番なんだよなー」

 目黒は腕を頭に組みながらそう溢した。

「俺の過去を視る力は相手の足取りを追跡できちまうから」

「それならば盗難車であっても犯人はすぐに捕まるな、ほんとそれって便利だよな」 

 二人は関心していた。国語の先生の千里眼も便利だなとは感じていたが、これはこれで便利だなと思うのだ。

 

 東京北区では今ちょっとした話題でブームが来ていた。

アーティストとして25年活躍してきた「田村」が40歳を節目に引退宣言をしたことにより、当時「タムラー」というのが流行したことを思い返し、涙を流す多くのファンがいた。今それでCDなどが大量に販売されている。

 ツアーについても最後になるだろう。東京国でも繁華街になると、多くの貧富の差が生まれていた。

 資本収益率は必ず経済成長率を超える。これは既に歴史が証明している事実であった。手取り15万でどうやって生活すればええねん!とか言っている場合ではなく、自力で何とかしなければいけない時代なのが「ゆとり世代」なのだ。

「でも頑張りすぎもよくないってことだよな金成」

「そうだな、今回の戦いで俺は過信していたのかもしれないな。神輿を一人で担ごうなどと馬鹿げている。でも自分の顔には責任を持ちたいと思う。将来一家の大黒柱となるのなら、自分の家族は自分で守れるようにはなりたいと思うんだ」

「それが一番だろう。頼れるところは頼るといい、それを甘えと錯誤しなければいいだけの話だな」

 大阪の浪速王は自ら神の尊厳を打破した。それに続かなければいけない、ただし王は最後には一人となるだろう。その王は誰になるのかは分からないものだ。


 森の中であった。まるで自身の基地のようなジャングルではあるが、道がしっかりとしている。毎年初詣などでも賑わうそうだ。車が通った後などもあり、工事もしっかりと進んでいた。

 夏には祭りも行われる。今はもうすっかり秋となっており、時期にこのあたり一帯は紅葉やイチョウが芽を出すそうだ。

「観光にはいいところでもあるんだな」

「都会と田舎、そういったバランスを持つことがこの東京国の素晴らしいところだな。まあそれでも他の国に比べたら人口密度はかなり多いよ」

「そうだな」

 古びた一軒家を発見した。

「摩天楼の話によるとここだな」

「一体どんな奴なんだ?」

「さあ、俺も会うのは初めてだ」

「ごめんください」

 戸をガラガラと開けた。

中には誰もいないようだ。

「出かけているのかな?」

 目黒がサイコメトリーを使った。

「いや、違うな」

「ん?」

「隠れてやがる、出てきやがれ」

「ふっ」

 木陰からひっそりと姿を現した。

2mは超えるぐらいの大男であった。立派な顎鬚に、民族衣装であった。

「ここに人が訪れるのはわが師の素戔嗚以来。今日は何用で俺に逢いに来た」

「あんたの力を貸してほしい」

 金成は一歩前にでた。

「主は何者だ?」

「俺は金成、素戔嗚から剣を伝授された」

 草薙剣を見せた。

「ほお、主がわが師の認めた存在、それならば案内人は摩天楼といったところであるな」

「そうだ、あんたに逢うのは初めてだが、力は聞く」

「力とは何か?」

「あんたは誠実さがある。人を押しのけてまで上に立ちたいと考えない。これは人として素晴らしいことだと考える」

「面白い小僧だな。気に入った、我が試練を受け、無事に合格できれば味方に付くとしよう」

「いいだろう」

 金成と大穴牟遅は2人で森の奥に入る。

断崖絶壁に差し掛かる。そこで大穴牟遅は矢を放つ。

「すごい距離で飛んで行ったな」

「よし金成、あの矢を取ってまいれ」

「ええ?」

 金成は少し後退り、目黒に依頼した。

「サイコメトリー能力俺にもくれよ」

「んん?お前の試練だろ、自力で何とかしな」

 目黒にそっぽを向かれてしまった。

「そうだ、自力で何とかしなければ試練にはならんぞ」

「金成、さっき自分で言ってただろ。一家の大黒柱になるって」

「へいへい」

 金成は渋々森へ向かった。


スキルマスター発動:ライジングサンダー


 光速で移動した。あれだけの勢いで矢を放てば、何かしらの木々の乱れがあるはずと考えたのだ。

 ものの数秒で矢を見つけることが出来た。

金成は戻ろうとした時、大穴牟遅は矢に炎を指し、それを金成のいる森に向けて放ったのだ。

「さて小僧がこの炎の中から帰ってくるか見物であるな」

 大穴牟遅の試練が続く。

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