第118話:執事
「私の目の黒いうちは国王様には指一本触れさせませんよ」
執事が大きな槍を突きつけ、そう答える。
「最も恐ろしいのは我々王直属の戦士十戒でも王最強の盾でもなく、自分自身の側近に常においているあの執事だ」
阿修羅はかなりの警戒を抱いている。
「AAAランクと謳われた執事は2つのスキルを有すると聞く」
「ご名答。私の持つスキルの一つ『セバスチャン』これは主君に対してのいかなり忠義をも交わす契約。たとえ私が死んでもその目的は達成させるのが執事の心得」
「あんま大したことはなさそうだな、そいつは」
「いえいえ、とんでもございませぬこと。中々国王様の近辺にいるのは難しいことですぞ。そういった能力が無ければ役目は務まりませぬからな」
「それでもう一つは?」
「先程お見せした神より賜りし極技『オーディーン』でございまする。全てを貫きとおす技故、一度喰らうと高確率で即死します故、ご容赦くだされ」
「そっちの技の方が危険そうだな」
スキルマスター発動:ライジングサンダー
「ようは当たらなきゃいいってわけだな」
「おっしゃる通りでございまする」
「やれ、執事君」
「かしこまりました」
ご老体とは思えぬほどの新発力、これが一つ目のスキルセバスチャンとしての絶対的忠義というやつだろうか。金成や阿修羅の速度と同等レベルにまで飛躍する。
「いくぞ、金成」
「おう」
渋谷は少し端にいることにした。足手まといにしかならないからである。しかし、それでも命を懸けてここまで来た以上は何か役に立つことが出来ないか、必死に模索した。
「光速にテレポート、かなりやっかいですな」
阿修羅は一瞬で姿を消し、背後に回る。しかし執事には既にそれがばれている。
金成は正面突破、前後で挟み撃ちをする。
「名槍グングニル:円舞曲」
超高速回転により、360度塞ぎきる。そして槍の長さが自由自在に変化し、攻撃範囲も非常に広い。
スキルマスター発動:アリストテレス
斥力により槍の攻撃を弾き返す。阿修羅は自身を瞬間移動し、交わし、間合いを見切る。
「ふん、コバエがとんでいたところで、人間の創る数多くの罠の前では所詮はただの足掻き。インスタ蠅か何かと変わりはせぬわ」
「ならこの光景写真にとってアップロードしてもらわないといけないな」
「こざかしい」
槍を持ち換え、形状変化。二層に切り替えることにより、より空気圧を受けやすく、衝撃波も出しやすく変化させた。
「衝撃で状態を崩して、一気に本体を串刺しだろ?」
「さてどうでしょうかね?」
「いい戦いをしておるなあ君たち」
秋葉王が観戦していた。血を拭いさり、再戦を申し出た。
「私も混ぜてくれよ執事君」
「わがままですなあ国王様、さっき私に任せたばかりではありませぬか」
「またやばくなったら君が私を命に代えて助けたまえ」
「かしこまりました」
「そうそう、俺は秋葉王に用があるんだ。阿修羅、そいつを頼むぜ」
「ああ、さっさと済ませるんだな。いつまで持つか分からんぞ」
秋葉王のアキバミクス第一の矢「金欲」これが再度発動される。当たるまでの追撃、もしくは秋葉王が一度キャンセルでもしない限りは流れるように追い込んでくる。
「第一の矢10本攻め」
同時に10本の矢を今回は攻め立てる。
スキルマスター発動:アルティメットアイズ
究極の両目で応対する。しかし攻撃はかなり複雑、且つ、未来予想できても矢が自動モードで攻め立てるため、動きの修正がいくらでもかけられる。これについてはかなりの危険を有していることが手に取るようにわかる。
「避けられねえな」
未来予想は秋葉王の能力の前ではあまり意味をなさない。究極の両目は閉ざした。
スキルマスター発動:テレポーテーション
光速と瞬間移動、これらを使って難を乗り切るしかない。
2ステップで避けるが、矢はどこまでも追ってくる。試しに雷で攻撃をしてみたが、矢はつぶれることはない。
「やはり秋葉王を叩かねばいけないか。しかしもう一つ解除方法があったな」
「さあ、お前も金融政策に飲み込まれてしまえ。共に築こう!資本主義社会を」
「てめえの思惑に流されるかよ」
金成は両方の能力を解いた。
「観念したか小僧?」
スキルマスター発動:フェニックス
もしものことを考え、先程鳳凰から手に入れた再生能力を発動した。
金成に一気に10本の矢が刺さる。
「残念ながらその矢はダメージは特にないから意味がないのだよ。君の心の中に集う欲望に問いかけるのだからな」
「ぐああ」
金…。金が欲しい…。
まさに今ジャッジメントをされている気分であった。お金があれば、なんでも欲しいものが買える。お金があれば服も、うまい飯も、旅行にだって。いや、車、家、そうだ、結婚資金に充てることも出来る。夢のマイホームだって買える、風俗にもギャンブルにも、薬にも手が出せる。なんでも思いのまま、目に見えないもの以外全て買える。これで生活保護や年金に頼ることないじゃないか。宝くじだって当たる必要はない。お金がもらえる。お金が欲しい。お金があれば節約だってする必要は無いんだ。就職も、いい大学に行かなくたって。全てはお金の為に。年収2000万なんて目じゃない。資産家なんて、FXなんて、競馬なんて。目に見えるものすべてを手に入れる。目に見える、見えないもの以外。
目に見えないもの以外…?金成はふと欲望の中に一つの言葉を思い出した。
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