第117話:金成VS秋葉王

「どうせ他人のお金だから」

 そう言って他人のカードを使って豪遊する未成年の少年がいる。全く反省の色も見せない、つまりそれが当たり前であるかのような態度である。

「正直疲れました」

 そう言うのはある国で独裁者がミサイルを打ち上げることにうんざりしている国民の一人である女性。他国からの制裁により貿易は困難、これでもし原油を止められたら我々は生きる術がないのではないかと飢餓と病に侵されていた。

 東京国だけではない。既に他国では民主主義もなければ経済発展に関しても乏しい。経済成長率の低下と出生率の低下、既に日本46ヵ国で同時進行に行われている。勝者は10人に1人の割合である。残りの9人は犠牲になるしかないのか。


「あんたの政策、アキバミクスは失敗に終わったんだ」

「何のことかね?」

「アキバミクス、夢物語のようだな。明日の王国改正であんたは国王を辞めるのか?」

「辞めるわけねえだろこんなおいしい話」

「なら引きずりおろしてやるよ」

「どうやって?」

「神より授かりし力によってな。王様と言えど神様には勝てない」

「お前何神様にでもなったつもりでいるんだ?笑わせる」

 金成と秋葉王の戦いである。


「ではお見せしよう。俺の最強スキル:アキバミクス第一の矢を」

 金成は先程阿修羅にアキバミクスには三つの矢が存在すると聞いた。

その一つが『大胆な金融政策』つまり、心の中にお金の貪欲が存在するものを意のままに操る操作能力。この第一の矢は政治家程心を動揺させられやすく、また貧困層程お金に欲望を抱いているものはすぐに操られてしまう。この矢に打ち勝つ方法は2つ。1つはまず矢を受けないこと、もう1つは金の欲望に溺れないことである。目の前に大金を積まれてしまえば誰もが魔が差してしまう。そんなお金の欲望に人々は心を悪魔に奪われ、次々に犯罪を犯す。

 銀行強盗、暴力団、政治とカネ、芸能プロダクション、マスコミ。全てこの世は金で動く、いわばキャッシュフローは血液のような存在。人の流れ、世の流れ、そしてお金の流れ。全てを牛耳っているのが今この東京国で最も恐ろしく、そして人の心に介入できる最強技、それがアキバミクス第一の矢『金欲』であった。


「直ちに連携を取り、他国との連携をしっかりと行い、制裁強化に圧力をかけます」

 秋葉王が無心にそう言葉を発する。

「新聞記者もそうだが、難しい言葉使ってごまかそうとしてんじゃねえ!もっとスマートに保育園児にもわかる言葉で言え!友達と協力してあいつをいじめて、あいつから金を盗もうとかみたいにな!」


スキルマスター連携:ライジングサンダー&アルティメットアイズ


 金成の身体が全身雷に覆われ、両目には未来の情報が入ってくる。

「行くぞ!」

 超高速で移動をした。

「ほほお、これは早いなぁ」

 秋葉王は弓矢を構える。するといきなり発射した。

「この矢は人であればどこまでも追撃する」

 絶対に逃れることのできない技のようだ。まるで生まれたばかりの赤ちゃんが命を授かった瞬間に法律から守られるかのように、不可抗力のようだ。

 これでは一つ目の矢を受けないという技が通用しない。となると、金成の心が勝るしかないというわけか。

「そんな矢を喰らう前にあんたの首を落とす。電光石火」

 光速で動き、そして間合いをつめ、一気に蹴りにかかる。

秋葉王の脇腹に蹴りを入れた。しかし、金成は足を痛めてしまう。

「ぐああ」

 金成の足が腫れあがってしまった。

「めちゃくちゃ硬いな」

「これぞ、国民の血税、軽いのに硬い。ダイヤモンドコート!!」

 マントを脱ぎ捨て、披露したのは何億円するのか分からない、ダイヤモンドで包まれた鎧であった。

「執事君、これいくらしたっけ?」

「はい王様、970億円でございます」

「おれ苦労してこれ手に入れたっけ?」

「いいえ、国民が汗水流して働いて蓄えた血税を我々が搾取し、その金で購入したものです。まさに資本主義者ならではの優位な情景」

「てめえら2人とも死ねや」

「ヘリコプターマネーでジャブジャブにばらまいてやれば政治家もまた黙る」

「一部の民間にだけだろ、てめえらがやっていることは」

「それで何か不満があるのかね?どうせ富裕層になれるのは上位10%ぐらい。あとの下位90%は我々の為に土方でもなんなりやってくれればいい。なんなら地下労働でも紹介してやろうか?それともサービス残業してでも死ぬまで働いてみるか?お金ではない、人間の真価を求める為に、自分は何のために生きて」

 ぼこっと蹴りを秋葉王の顔面に入れ込んだ。

「ぐおお鼻がああああ」

「おかしくなりそうだ、てめえのその話を聞くとな」

「君はまだまだ子供だから知らんのだよ、大人の世界ってやつをな。君は今でも正義のヒーローなんてものがこの世の中に存在すると思うのかい?」

「いねえよそんなもん、それぐらい毎日ニュース見てりゃ馬鹿でも分かる。警察が正義?駅で女性のスカート内を盗撮してるような奴が?教師が正義?生徒とみだらな行為をしている奴が?政治家が正義?政治資金を横領するような奴が?ふざけろよ!!ていうか、国王であるお前が一番ふざけてんだよ」

 金成は城内天井に飛び立った。

そして勢いをつける。


スキルマスター発動:グラヴィティ


 自身に重力をかけ、一気に加速をかける。

「おおい、これやばいって。執事君」

「はい国王様」

 金成の重き蹴りを執事が弾き飛ばした。

鈍い音が城内に鳴り響いた。

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