第116話:ゲーム

「久しぶりだな金成」

 赤髪のロン毛、まさに王直属の戦士十戒の一人「阿修羅」が玉座にいたのであった。

「あんたがラスボス…なわけないな」

「こいつって確か千葉国大戦の時の?」

 渋谷が疑問を投じる。

「ああそうだ、あいつは王直属の戦士十戒の一人だ。秋葉王の直近の兵士、だが奴しかいないとなると、嫌な予想が的中しそうだな」

「え?」

「さてどんな最終ステージを迎えることになるかは私にもわからぬ」

 阿修羅は少し緊張気味であった。

「おい教頭」

「何でしょうか校長」

「喉が渇いた」

「何になさいますか?」

「ココア」

「かしこまりました」

 教頭はそのまま城の給湯室に向かっていった。

「新しいゲームの試作品でも考えていたのかい?校長」

「ん?何のことかね?」

 校長は立派な顎鬚を摩りながら金成の疑問に対して疑問で返す。

「あんたやけにこの城の構造が詳しいと思った。いや、その前に城内に潜入する前にもやけに敵兵が少ないルートを通り、俺たちをすんなり城内に招き入れた」

「ほほう」

「どういうことだ金成?」

「そして夜叉と鳳凰と俺たちが戦っている間はただ傍観し、都合よく現れた。おそらく隠し通路か何かを利用したんだろう」

「ふふふふふ」

「校長、ココアを持ってまいりました」

「教頭、あんた敵陣でよくココアが作れたな」

「ええ、まあ」

「とぼけるなよ、てめら2人は最初から怪しかった。やけに俺の能力についても聞き出そうとしていたしな」

「???」

 金成、渋谷、阿修羅、校長、教頭。今はこの5人が対面している状態だ。

「この敵との戦い方の配置、そして城内のカラクリや所々に用意されていた宝箱、まるでゲームの世界にいるかのようだったよ」

「ほかに感想はないかね?金成君」

「新しいゲームの企画でもしていたのか?それとも本来のRPGなら敵をぶつけ、勇者を育成し、魔王と戦うというシナリオにでも飽きたのか?だから勇者と共に魔王が一緒に魔王の城に乗り込み、玉座まで共に戦友として築いたら今までにないゲームになるとでも思ったのか?」

「くくくく」

「ふぉふぉふぉ」

 校長と教頭が不気味な笑みを浮かべる。

「金成、この2人は一体」

「こいつらは俺たちが討伐しなければいけない魔王そのものだ」

 パチパチパチと二人が拍手をする。

「見事だな金成君、我々の正体を見破るとはな。執事君、そう思わないか?」

「ええ、そう思います秋葉王様」


 なんと校長の正体は「秋葉王」、そして教頭の正体は「執事」であった。

「こいつが秋葉王だったのか?俺たちの高校の校長になりすましてたのか?」

「まあ俺の趣味の一環でな。コスプレしてたまーに王宮を抜け出してたのよ」

「全く秋葉王様の思い切った企画には部下たちも振り回されすぎですなぁ」

「何が面白くてこんなことをしたのか答えろ」

 金成は秋葉王を睨みつけた。

「今まで勇者と一緒に魔王と旅をするRPGなんてプレイしたことあるか?魔王は勇者が来るまで何故待つ必要がある?君は空港でポテトチップスを食べようとした時、中から蛇が出てきたらどうする?びっくりするだろ?それと同じ原理さ。面白い企画をしてやろうと思ってな。ちょっと新しいゲームクエストをプレイしたいからって有給休暇申請にその内容を伝えると、どういう心境で上司は対応してくれるのかと考えただけで遠足気分だよ。もういつ俺の正体ばれるかワクワクだったけど、結局玉座までたどり着いたってわけだな。褒めて遣わす」

「ふざけろ!てめえのくだらねえゲームでどれだけの命が奪われたと思っているんだ」

「くだらないゲーム?こんな面白いゲーム今までプレイしたことないだろ?そうだ、新しい企画をさらに考えたぞ。敵だと感じていた阿修羅を特別お前らの味方につけてやろう。こっちは俺と執事君だけでいい。そっちは3人で挑むといい」

「秋葉王…?」

「阿修羅、何故金成はお前の能力を使えるんだ?何故素戔嗚の能力を使えるんだ?」

「それは」

「これ以上は討論の無駄だ。裏切り者にもしっかりと制裁を加えなければいけないわけだ。だからお前を最終ステージに待機させておいたんだ。敵兵をまさかの味方につけて魔王と側近に挑む!これゲーム会社に出したらヒットするかな?」

「くだらねえお喋りはそこまでだ。全員の敵を、そして今日俺がお前を討伐し、この東京国から統治していく」

「理想を掲げるのは結構なことだよ金成君、だが君には私の右腕として働く権限もあるんだがいかがかね?」

「いらねえよボケ!」

「そうかい、それは残念だ。ならば仕方あるまい。まあ私はゲームの魔王みたいに変身などは使えないんだがな、技なら3つ使えるからまあ一つ一つ使えさせるように頑張って努力してくれたまえ。ではこのココアを飲み終わったら始めるとしようか」

 ゆっくりと時は流れていく。ココアを飲んでいる秋葉王に誰も奇襲はしない。


「金成、ちょっといいか?」

 阿修羅が少し秋葉王から距離をおき、話しかける。

「なんだ?」

「君はどうやってあの鳳凰を倒したんだ?」

「俺のオリジナル能力で奴から能力を奪い、倒しました」

「マジか!?誰も倒すことができなかった相手だぞ」

「それより増援は期待できないにしろ、ぶっちゃけると俺たち3人で秋葉王と執事は倒せそうですか?」

「ハッキリ言って無理だと思う」

「え?」

「俺はランクでいうとAAランク、そこの男の子はよくてBランクってとこだろ?金成、君は俺と同じぐらいAかAAとするが、恐らく秋葉王以前にあの執事にすら勝てない可能性がある」

「奴らの強さランクは一体…?」

「執事はSランクの上のAAAランク、秋葉王はさらにその上のSSランクだ」


 金成と渋谷の2人にさらなる恐怖と絶望が訪れた。

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