第115話:ルール
勝てば官軍負ければ賊軍という言葉がある。勝者だけが正義、負ければいくら正しく物事を言ってもそれは間違ったことを意味する。スポーツの世界でも将棋の世界でも一定のルールというものが存在する。そのルールに従って行えばどんな新手であってもそれはマニュアル化されることもある。
しかし社会に於いては法律など順守しなければ処罰の対象となるが、所詮はそのルールは人間が創ったものであって、必ず守らなければいけないというわけではないのだ。何故ならその現場にいる人間、証明できる人間がいなければそれは例え倫理に反する行為であっても「ばれなければいい」という考えを持つからである。
何故不倫騒動が起きるのか?答えはそれがばれているからである。芸能人の不倫が世間に晒されている一方、一般人の不倫報道はあまり聞かない。日本領域全体の人口からしても毎日何十組と行われても不思議でないのに、それはただ単に「隠している」からなのだ。
戦いに於いてルールとは無情である。日本統治乱戦の世界に於いて、そのほとんどが保有するスキルはたいてい1つだけと決まっている。カバーリングで呪術や忍術、科学力を保有するものもいるが、スキル自体はほとんど1つしか持ちえない。
だがそのルールを金成やスキルハンターの夜叉は制約を交わすことによって呪縛の解放を行った。結果として戦いに於いて複数のスキルを使うことにより、相手の有利不利な状況に持ち越すことが出来るのだからだ。
だがルールとはそれだけにとどまらない。勝てば官軍負ければ賊軍である以上は、スポーツのように1:1の戦いが必ずしも行われるわけではなく、時には一人で1,000人相手にしなければいけない場面もあるのだ。それが今まさに、秋葉王討伐に於ける未知なる敵の数と能力の戦いとなっているのだ。
スキル:フェニックスを手に入れた金成にとって、着実に目標のスキルを身に着けている。鳳凰とは違って自動化されるわけではないので、発動させない限り再生能力は発揮できない点は難点ではあるが、それでも自己治癒力を高めることは長期戦闘に於いてはかなりの有利不利を生むことは間違いないだろう。
「金成、大丈夫なのか?」
「ああ、なんとかな。今一瞬俺は死んだのかと思ったけど、死ぬ前にこの力を使えば何度でも蘇られるってわけか」
「しかし多くのスキルを使う金成にとっては、すぐに消耗戦にならないだろうか?雷の力に未来を視る力だけでもだいぶ体力使うんだろ?」
「まあそこは技術の力量次第と言ったところだろうな」
金成は立ち上がった。休んでいる暇もないというわけだ。
「おお金成、無事だったか」
金成と渋谷が振り向いた。そこには校長と教頭がいた。
「校長、あんた今までどこにいたんだ?」
渋谷が疑問に問いかけた。
「ん?さっき階段を上がってきたばかりだが?」
「だが俺と金成とすれ違わなかった?どこにいたんです?」
「ああ、トイレに行っていた」
「トイレって…ここは敵城ですよ?」
「まあ人間生理的なものには勝てんということよ」
「それにトイレの場所がなんでわかったんですか?」
「ああ、トイレはここですよと札があった。よくデパートとか行ってもトイレの場所など案内されている掲示板あるだろ?あれと一緒」
「はあ……」
「それより先程自動販売機で面白いもの見かけたよ。清涼飲料水を飲みたそうにしている緑色の小さなカエルがいたんだ。思わず写真撮ってきたけど見るか?」
「みませんよ、そんなもの。あんただいたいここで人が死んでいるというのに何を呑気なこと言ってるんだ?」
金成が苛立つ。
「別に人は誰もがいつかは死ぬだろ?」
「……」
これ以上の言葉のやり取りはなかった。
4人は階段を登っていった。特に罠などはなかった。それに王直属の戦士と王最強の盾のフロアがあるということは、いよいよ玉座に近かったからだ。
「金成君、君はレポートを書くときにインターネットの知恵袋など活用したりするかね?」
「しませんよ。誰かの解答なんか気にせず、既存の掲示板などで意見のやり取りがあると思います。例えば映画のタイトルやあらすじだけを確認し、あとは個人的な意見を述べよというのであれば、既に映画を観終わって感想を述べている人の者から盗作します」
「まあ一時期試験中にスマホを使ってカンニングをしたものもいるからな~」
「今回私が取らせた学校方針として、難解な問題を出させたわけよ。そしたら当然生徒の一人は知恵袋に投函するわけだ。先生の出した問題をな。その生徒ももう少し知恵を絞ればよかったのに、出した問題をそのままの文章で提出するものだからその問題を出したものからすればすぐに分かることだ。だから質問者に対して解答を出したんだよ」
「誰が解答したんです?」
「その問題を出した教師本人だよ。その教師自らがその問題に対して解答した」
「ええ~!それは青ざめるじゃないですか。解答がきた!と思ってわくわくしながら開いたら、まさかの担任の先生が知恵袋に解答していたなんて、そんなの驚愕ですよ」
「そうだろ?だから解答はせず、明日私が教えてあげるから職員室に来なさいというコメントを残したわけだよ」
「大変っすね」
「そろそろ玉座に近づいてきたぞ」
「この扉だな」
大きな扉であった。ここが玉座というわけだ。
「みんな、準備はいいな?」
金成は扉を開けた。玉座の間は広い。しかし確実に目の前に一人の男が立っていた。金成は、その男に見覚えがあった。
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