第111話:鳳凰②
「ねえねえ俺と鬼ごっこしようよ」
原宿の服を引っ張る子供である。しかし、それがまだ鳳凰ということを誰も知らない。
「お前何でこんなところにいるんだ?」
原宿が問いかける。
「鬼ごっこしに来たの」
「何だこいつ」
「関わらない方がいいかもしれんな」
葛飾が次の部屋へ行こうとする。
「ねえねえ鬼ごっこしよ」
次々と服を引っ張っていく。
「遊んでいる暇はねえんだよ。それにここがどこか分かっているのか?」
「城?」
「だいたい何で餓鬼一人がこんなとこうろついてるんだよ?迷子か?」
「よせ葛飾、この子供にはかかわらない方がいい」
池袋が眼鏡を持ち上げながら答える。
「ちえ、つまんね~」
「何だってんだよ」
原宿、葛飾、池袋、品川、江戸川の5名は先を急ぐことにした。
ドン
何やら5名は見えない壁に入ってしまったようだ。
「なんだこれ?」
「次はお兄さんたちが鬼の番だよ?」
「は?」
「これは俺の呪術の一つ『デスorアライブ』この半径20m以内に張り巡らされた空間の中で3分以内に俺を殺さなければ上空の死神の鎌によってこの空間にいるものの首を俺ごと吹き飛ばしちゃうよ?」
「それだとてめえも死ぬじゃねえか。何考えてんだよ」
「まあ俺は死なないんだけどね☆」
「おいおい、それよりお前を殺さなきゃならねえだと?お前何者だ」
「俺は王最強の盾の一人、東区を担当させられている鳳凰だ!と言ってももうすぐ死ぬ君たちには自己紹介しても無駄だよね」
「こいつ、王最強の盾か!?こんな子供がか」
「くそ、油断した。池袋、こいつの言っている呪術は本物か?」
「死神が上空にいる以上、この子供が言っていることはまず間違いないだろう」
「なら本当に殺すのか?」
「それしかあるまい。しかし殺すと言ってもどうやって」
「切り刻む」
原宿が2刀用意し、そのまま切り込む。
「うわ、はや!」
鳳凰はそれを避ける。
「スイミング」
品川はスイミングを試みた。しかし、空間をシャットアウトされているせいか、地面に潜ることが出来なかった。
「となると俺のトレードも空間の外に転送することは不可能というわけか」
「どうするよ全く」
「とりあえず殺してみるしかないだろ」
葛飾に向けて刀を振り向け、原宿は切りかかった。
「あれれ?仲間割れ?」
「トレース」
パチンと音を鳴らし、鳳凰と場所を入れ替えた。
ズバッ
鈍い音が鳴り響き、鳳凰の首を飛ばした。血が噴き出て、そのまま倒れ込んだ。
「死んだか?」
「だが空間が閉じない。何故だ?まだ死んでいないのか」
鳳凰は身体を起して、そのまま首を蘇生させた。
「なんだよこいつ…」
「残念、そんな攻撃じゃ俺は死なないよ」
「こいつ不死身か?」
「俺の再生スキル:フェニックスはいかなる攻撃ダメージを受けても再生し続けるんだよ!最強だろ?な?」
「こいつ…殺せないのか」
「ほら、あと1分しかないよ。早く頑張って!前来た千葉国の忍者はもっと頑張っていたよ」
笑顔でそう答える鳳凰である。まるでゲームを楽しむかのようであった。
「池袋!」
「分かっている」
札を書き記した。
「お前は俺の指示に従うしかない。今すぐにこの呪術を解く」
札に書き込み、それを鳳凰につけようとした。
「なんだそのおまじない?」
鳳凰はぼーっと突っ立っていた。
「すぐにわかるさ」
ジャッジメントが成立した。
「わわわ、体が勝手に動く」
「さあこの忌まわしい呪いを解け」
「ううう」
しかし呪術が解けることはなかった。
「何故だ?」
池袋は冷や汗を掻く。
「残念~、俺の呪術は一度発動するとどちらかがゲームオーバーしないと呪いが解けないように制約されているんだ。だから俺が死ぬか、君たちが3分後に死ぬかのどちらかでしか解決できないんだ。それだけこの『デスorアライブ』の制約は重いんだよ」
「まずい、こんな子供が相手じゃいくら金成でも勝てやしねえぞ」
「今の俺たちに出来ること、それは情報を少しでも残すことだな」
「鳳凰、お前はもし別の少年を見かけたら、正直にこの自体を話すんだな」
池袋は鳳凰に命令した。
「さあどうかな~?」
「みんな、腹をくくろう」
「金成、この世界の秩序は君が正すしかない」
「後は頼んだぞ」
全員天の死神を見つめた。
「玉みがかざれば光なし」
鳳凰もろとも全員の首が飛んだ。
おもちゃ箱は血に染まった。しかし、その後鳳凰は起き上がり、次の獲物を待ち構えた。鳳凰についている池袋の札は、池袋の死後もまだ時間が経過していないので効力は持続し続けたままであった。
「次はどんな奴らが来るのか楽しみだなー」
金成と渋谷が階段を登り終え、おもちゃ箱に到達した。
その無残な光景に二人は発狂した。涙を流し、共に戦線で戦ったことに対する黙祷を捧げた。
「金成、これは一体何が…」
「分からない。だが敵は5人を一斉に殺すことが出来るほどの実力者」
「やっほー、お兄さん達」
渋谷と金成が振り向いた矢先に鳳凰が立っていた。
「子供?」
誰もが最初に思うのはこの言葉、だが生涯に於いてもっと恐ろしいのは「油断」というものであった。
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