第110話:夜叉
「見覚えがあるようだな。この能力、奪ったのさ」
「確かお前の能力は殺すことで奪えるんだったな?」
金成は下を見ながらそう夜叉に問いかける。
「ああ、こいつは高校生の割にはかなり強かったな。かなり速い動きをしていた。だが近くにいた仲間を人質に取ったらあっさりと能力を吐き、俺に能力をくれたよ。勿論そいつを殺した後に友達も全員殺したがな」
「屑が」
金成の目に怒りを灯していた。そのままの勢いで夜叉にとびかかる。
だが夜叉も同じくライジングサンダーで応対する。当然夜叉のほうが同じ能力であっても遥かに上を行く。
しかし金成の眼には未来の眼がある。さすがに小谷社長を殺してまでこの眼は奪われていないと踏んでのことである。
互いの雷対決はかなりの電光石火を強いられ、瞬時に同じ空間を秒速何周もしている。互いに相手をとらえきれない程の動きと熾烈な戦いが強いられた。
渋谷がかけつけた。
目にも止まらぬ両者の戦いに絶句するしかなかった。
「なんだよこの戦い。目で追いきれねえ」
光速と光速のぶつかり合いであった。どちらかが息を切らした方が勝者といったところであろうか。
「動きはいいが、それに似合うだけの身体はまだ手に入れてないようだな」
「スキルの数でそれをカバーする」
「ならそれは俺も一緒だ」
一枚上手であった。夜叉はまさしくSランク、金成はせいぜいAランクといったところである。将棋でいう初段と5段ぐらいの差がある。だが勝負はランクだけでは決まらない。その時と場合によって、そして相手の呼吸によっては逆転勝利というものも決まる。プロ同士の戦いというものに常に「余裕で勝ちました」はありえないからである。
「きりがねえな」
金成の動きが止まった。ライジングサンダーをといた。
「おいおい降参か?」
「馬鹿言え」
スキルマスター発動:ナイトメア
視界を暗くした。
「死角を狙うってわけだな」
夜叉は構えた。
しかし黒い靄の中には入ろうとせず、常に警戒を怠らない。
「どこから攻めて来る気かは知らんがな。俺の速度には追い付けねえぞ」
スキルマスター発動:トレード
パチンと音が鳴ると同時に、夜叉と金成の居場所が入れ替わった。
急に視界が悪くなり、夜叉は少し焦った。
「何だ今、急に場所が入れ替わったぞ」
急いで夜叉はそこから抜け出した。金成が立っているのを確認し、すぐに攻撃を開始した。
「死ね!」
雷の拳を突き出した。金成はノーガードだ。
しかし、金成を殴り飛ばした瞬間消えた。
「何?」
「スキルマスター:マジカルトリックだ」
「やろう、本体はどこに?」
「地面の下だ」
金成はスキルマスターを連携させ、スイミングで地面を泳いでいた。
「隠れても無駄だぜ」
地面を思い切り叩き割った。
金成の顔がひょっこり姿を現す。
「くらいな!」
夜叉が殴り掛かる。
スキルマスター発動:テレポート
「こいつのメモリはどれだけ多いんだ!?」
夜叉は完全に金成を見失った。
しかし上空にいることに気付いていない。
スキルマスター発動:ジャッジメント
夜叉の動きを拘束する為、札を記した。それを投げ飛ばす。
殺気に気付いた夜叉は上空を見、そして何かを飛ばしていることに気付き、その場を光速で離れる。
金成も着地し、手を翳すだけで何もしない。
「あぶねえあぶねえ。それが何かは知らないが迂闊には触れぬことだな」
「まあ俺と同じ雷を使っていればどのみちこの紙が付く前に燃え尽きちまうけどな」
「なるほどな」
「それよりあんたの動きはこれで抑えた」
「は?」
スキルマスター発動:ブロックチェーン
突如、先程まで目に映っていなかった鎖が姿を現し、夜叉の動きを拘束した。
「おいおい、冗談じゃねえ。いつの間に」
「お前が札に気を取られている隙にな」
「俺がどこに移動するかなんか予測できるのか?」
「ああ、俺には5秒先の未来が分かるからな。目に見える罠はフェイク、実際視えない罠をお前の足元に張り巡らしていた」
「ち、なかなかやるじゃねえかてめえ」
スキルマスター発動:八岐大蛇
8頭の龍が金成の背に現れた。
「おいおい、それは素戔嗚の。てめえ殺して奪ったのか」
「お前のような野蛮なやり方など俺はしない」
「じゃあどうやってその能力を奪ったってんだ」
「死にゆく者に教える義理などない。せめてあの世で後悔するがいい」
「は!てめえみたいな餓鬼に殺される夜叉様じゃねえぞ」
「試してみるんだな。せいぜいこの獄炎に耐え抜いてみるんだな」
夜叉は必死に抵抗した。しかし見えない壁と鎖が邪魔してその空間から脱出することができないでいた。
「八岐大蛇最強技:劉淵獄」
一気に8頭の竜が火を噴き上げ、高濃度の炎を夜叉に襲い掛かる。
「ぐおおおおおおお」
最大級の熱は城の煉瓦も溶かし、いつしか爆発を起こし、そのまま夜叉は城内から落下していった。
「あの世で八王子に償いでもしてな」
金成はそう言い残し、次の階段へと進もうとしたら、渋谷がいた。
「渋谷、いたのか」
「ああ、金成お前凄い戦いだったなさっきの」
「まあ、ちょっと疲れたがな」
「先を急ごう。それより校長と教頭は?」
「先を急ぐと言ってそこの階段を登っていったぞ?」
「え?俺はすれ違わなかったぞ」
「どういうことだ?別の道があるのか」
「いや、そんな別通路とか見当たらなかったんだが…」
「気にはなっていたんだが、あの2人何かあるな」
校長と教頭に対する疑念が金成の思惑にいよいよ釘をさしてきた。
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