第109話:窮地

 夜叉のユグドラシルによりフィールド全体が木の根に覆われてはいるが、渋谷が炎で燃やし、突破をしていく。夜叉と金成は戦いを続けている。

「先を急ぐぞ、金成」

 金成を残して皆が先を急いだ。背水の陣でなければ王は討伐できないという。

確かに応戦するものがまだ誰もこの城に到達できていないのも事実である。やはり他の王直属の戦士や最強の盾が圧倒的過ぎて他の3高校からの応戦は一切ない状態で秋葉王に戦いを挑むのは至難の業としか言いようがない。

 だが、現実は刻一刻と過ぎていくしかないのである。仮想通貨に於いては8月1日より取引停止措置をとり、さらにゲーム関連の株価は軒並み安く、新興株上昇にストップを入れざるを得ないぐらい勢いは低下してしまっている。

「結果というものは誰にも分らないものである」

 これは現実的によくあることである。しかし結果を自身の力で流れを変えることも可能である。だが、それにはやはり外的要因、準備力、そして運があるかどうかによっても攻略の難易度は変わるのだ。

 今は明らかに下降トレンド、しかし既に始まった勝負から抜け出すことが出来ないジレンマ。まずは夜叉を叩く、そして次に王がいれば一気にチェックメイトに入るつもりでいる。

 いかなる実力者なのかどうかはともかく、今は現状を打破することに集中しなければいけないのだ。

「金成よ、先を急ぐぞ」

 校長と教頭も先を急ぐことにしたのだ。

「おいおい逃がさねえって」

 夜叉が容赦なく攻撃をしてきた。しかし教頭の槍がそれら根幹を駆逐した。


「金成抜きで俺たちだけでなんとかなるのかよ?」

「分からん、ただかなり厳しい状況だ。応戦を期待したいところだが、これではボスステージに辿り着く前に全滅だ」

 敵を前にしても決して弱腰になってはいけない。覚悟を決めなければいけないのだ。それは人生においても避けては通れない苦難の道だ。

 新たな部屋へと渋谷達は入った。そこはおもちゃ箱のような部屋であった。

「なんだこれ」

 原宿や池袋は疑問を投じた。

「俺は一度戻って金成の様子をみる。俺の炎なら少しはサポートできそうだ」

 渋谷がそう言い残し、階段を降りて行った。

「俺たちだけでなんとかなりそうなものか?」

「まあ校長たちを待とう。その間に敵の主力部隊来ちまったら終わりかもしれんがな」

 そんな時であった。上から見下ろすように一人の男が陰に潜んでいた。

「ふーん、敵見っけ☆」


 金成と夜叉の交戦は続く。

「スキルハンター:ローズニードル」

 突然夜叉の身体に棘のようなものが纏われた。

金成は寸止めで殴り掛かるのをやめた。しかし、夜叉は地面にそれを翳し、さらに無数の棘が金成を襲う。

「範囲がかなり広いなおい」

 ユグドラシルとの連携からして相手もやはり能力を2つ同時に引き出すことができるようだ。先程の木の根に薔薇の棘が追加されている。毒もあればこれはかなりの致命傷になってしまう。

「無数の針の中でお前はどう生き延びる?」

「針が怖くて近づけないとでも?」

「ならばやってみな」

 超高速の中で金成は襲い掛かる根を次々と交わす。

攻撃の範囲から言って中々近づくことも容易ではないが、相手の思考パターン、そして何より金成には併用技がある。


スキルマスター連携:アルティメットアイズ


 究極の両目は5秒先の未来が視れる。これを使えば、難なくクリアできる問題だ。

だが、相手の手の内がまだこれで終わりとは到底思えない。まだ油断できない中で、こちらの手の内を明かすのはナンセンスである。

 だがそうも言ってはいられない。早くこの戦いに蹴りをつけなければいけないからだ。

「電光石火」

「かなり動きが速いな」

 一気に間を詰めた。

「疾風迅雷」

 夜叉に直撃した。

「ぐお」

 全身棘で纏っていてもしっかりと電流は流れるものである。

無数のいばらの鞭が金成に襲い掛かるが、それらを交わし続ける。

「打撃ではなく、魔法系ならばこんな棘人間意味が無いとでもいうか?」

「何度でも打ち込んでやるよ。てめえが感電し、麻痺するまでな」

「やってみな」

 金成は再度近づいた。夜叉は棘を解いた。

「棘を解いたら次は蹴り入れるぜ。雷の威力で蹴られたことあるか?」

「ねえよボケ」

 金成は蹴りを入れた。しかし交わされた。

「なに?」

 金成がまだ雷を放っていないのに夜叉も雷を帯びている。

「どういうことだ?」

「お前、これに見覚えがあるだろ?」

 夜叉の身体が全身の雷で纏われている。

「お前、もしかしてそのスキルは…」

 金成は突然の出来事に言葉を失った。驚愕のあまりか、それは自分と同じ能力を使っている奴が目の前にいるからだ。

「まさか八王子の…」


 その頃おもちゃの部屋での出来事であった。

「ねえねえ兄さんたちさ、俺と鬼ごっこして遊ばない?」

「え?」

 目の前に小学生の男の子が現れ、びっくりしたのだ。

「何でこんなところに子供が?」

「まあ俺らも言えた義理ではないんだが」

 窮地に立たされていた。目の前に現れたのは紛れもなく、王最強の盾の一人である「鳳凰」であった。

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