第87話:東京国外状況

 日本47ヵ国の中でも最大級の土地を誇る北の国と称される「北海国」では現在、独裁国家が進み、既に核保有などの軍事に力を入れている。

 その南に位置する「青森国」はその昔、八甲田山の雪中行軍の際、2つの連隊に別れて雪の中を行軍するも、片方の連隊が消息不能となり、ついに199名の死者を出す大惨事へと発展した。その死者の魂が残るこの国の城の王は誰も見たことがないとされるぐらいのものであるが、その軍隊199名の戦士は皆、死者の魂を宿して軍団を用いた王国組織である一方、北は軍事力に力を入れていた。

 先日行われた青森国の王と秋田国の王の外交の際、食事のテーブル席の合間に、北海国を連携して叩くか否やで揉め事をしていた際、デザートのチーズケーキが出てきた際に、青森国の王と思わしき人物が隣にいた秋田国の王に耳打ちをした。

「内戦の激しい岩手国にたった今、ミサイルを759発打ち込んだ」と。

 秋田国の王は焦りを隠せない様子であった。100秒間沈黙するも、聞き取りづらかったと言い、再度聞き直した。

「え?何て言ったんだい?聞こえなかったよ」

「だから、俺はこの24時間以内に759発ものミサイルを壁の扉が無くなった瞬間に岩手国の本拠地に打ち込んだよ」

 秋田国の王は青ざめた。青森国の強硬なる姿勢に強張ったのだ。

「北海国の王、札幌王を討ち滅ぼし、領土を拡げないかい?」

 青森国の王は八甲田山の戦士199名とミサイルを使って一気に領土を拡げようという戦略であった。

 秋田国の王は苦笑いを隠すことができないまま、青森国の外交を介さず強行突破する姿勢に戸惑いを隠すことができないでいた。


 大阪国の浪速王が壁を打ち砕いたことは世間に晒されたことは既に全国のニュースへとなった。しかし人々の記憶は非常にあいまいなものになり、とにかく壁は無くなるんだなということは、大阪国と京都国が証明した。くくりは大阪国だが、領土の名前は大阪区と京都区の二つに分かれたのだ。いずれ兵庫国、三重国、和歌山国、滋賀国、奈良国の壁を無くし、7ヵ国の連合『近畿国』を築き上げると浪速王は目標を掲げているのであった。


「誰かイッヌの写真くれ」

「ほい」

「ただのガイジーヌやんけwwww」

「これほんとすこ」

「お前らwwww」


 掲示板を見る限りではこんな会話がはびこることも多い。社畜の話になるとたいていが自宅警備員と名乗るものに叩かれることも多い。ネット社会には国境の壁というものは存在しないが、顔が割れていない面、ビッグマウスになる者も多い。

「秋葉王……」

「今俺は猫の動画を見ることで忙しい」

「はぁ……」

 執事は呆れていた。秋葉王はどうもヲタなところをたまに見せることもあるからである。

「ココアをお持ちしました」

「そこに置いておいてくれたまえ執事君」

「はい、それと」

「ん?」

「例の銀行暴動の件、それと素戔嗚の件ですが」

「犯罪者が割れたか?」

「おそらくスキルを担う高校4校のうちのどれかかと」

「ほう、面白い」

「いかがなさいます」

「無論だな」

「と、申しますと?」

「我が直属の戦士阿修羅を除く各8名をそれぞれ2人ずつ各校に派遣せい。目にモノ見せてくれるわ」

「つまり内戦ですな」

「そういうことだ。俺に歯向かうものどうなるか目にモノ見せてくれるわ」

「かしこまりました」


「呪術に化学兵器か、全くこいつも逝かれたクレイジー野郎だな」

 生徒会長の浅草が近づき、物申す。

「当校での任務はこれにて完了と言ったところですかね」

 金成は浅草の了承を得る。

「お手柄だな、金成」

「これにて一件落着となればいいんだがな」

「まあ情勢はいついかなる時も虎視眈々と眺めるものでもあるのだろうよ」

 東高校のメンバーはそれぞれ帰ることとした。


 金成は帰宅し、考えていた。

「以前の自分もそんな考えを持っていたのだろうか?」

 金成は日本統治時代に生まれたことに対し、原点を振り返る。

「そういえば俺は最初ニヤニヤしながらいっちょやってやろうか、って思い立って今に至るんだよな~」

 ぼーっとしている。しかし何かを始めるには行動が先になり、意識は後からついてくるものであった。

「退屈しのぎになったんだろうかな~俺の人生って~」

 たまに自暴自棄になるのもよくありがちなことであるが、しかしそれでも既に多くの人からスキルをもらい、既に多くを巻き込んでもいる。

 いつ敵が攻めて来るかもわからないし、今後は人質という面倒なものをとられた時に切り捨てる覚悟など今の彼には到底無いに等しいものも感じる。しかし、次なる手札は既に切られている。

 今後王直属の戦士2名が各高校にそれぞれ配備されることになるのである。

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