第46話:成田
阿修羅と素戔嗚、浦安と成田との戦いに於いて圧倒的不利な状況下で阿修羅と素戔嗚は戦っていた。
その時であった。雪が東京国に舞い降りた。
「雪だ」
真夜中の氷点下、次に襲い掛かる自然の驚異、雪が舞い降りたのだ。
「雪が降ると美姫が五月蠅いよな」
「ああ、あいつは桜を好むから」
ニュースを確認するとこの日は全国的に記録的大寒波。年に1回あるかないかだ。
多くの積雪に住民らは悩まされる。当然雪が降ると武器によっては使えない。火薬も点火させづらくなるからである。
大寒波が押し寄せてくると戦車も動きづらくなる。
足元が凍結する為、戦闘に於いて一瞬のスリップも勝敗を有無を来す。
「大雪になる前にケリをつけなければいけませんね」
「ニュースでは既に北海国や青森国は積雪110cmらしいな。東京国も本日が山場となりそうだ」
「冬の雪中行軍なんてしたことあるんですかねえ」
「さあてな。有名な歴史の中では八甲田山の雪中行軍中に2つの連隊が全く違う結果をもたらしたんだとか?」
「そうそう、準備力ってやつですね」
阿修羅と素戔嗚がそんな会話をしていた時に
「何を話しているか知らんが、よそ見してんじゃねえぞ」
浦安が攻めた。
オオオオオオオオオオオオオ
成田の呪いの歌、浦安は耳栓をしている為、効果はないようだ。
雪の中武器をかわし続ける2人であったが、雪が彼らの体力を奪う。
長期戦は確実に凍傷も起こし、何より頭の回転が鈍るので余程の集中力がなければ不利である。さすがに王直属の戦士十戒と言えど、長期戦はかなりの不利である。
しかし彼らも数多くの修羅場を超えてきた為、この程度の戦いはものともしないのもまた事実であった。
「伝説の竜を討ち取った国も、こんな大雪の日であったかな」
素戔嗚が雪を掴みながらクスッと笑った。
「大きなボタン雪ですねえ」
阿修羅が雪を手に噛みしめ、それを握りつぶした。
「素戔嗚、準備が出来たら教えてください」
「あと1分で完了する。暫し待て」
浦安の武器が二人を襲いまくるが、なかなか当たらない。
「さすがこの2人はなかなか強いな。だがいつまで持つかな?そんなに激しく動き回っているともってあと5分といったところだな?どんどん積雪によって足場も乱れていくぜ」
オオオオオオオオオオオ
成田はひたすら呪いの歌を奏でる。さすがの暴風が少し出た処でその風に乗って歌が流れるだけで、大して音が掻き消されるわけでもないのであった。
この集中力が欠ける戦闘の中では互いにスキルを使うことも難しい。
いっその事、耳を潰してしまおうかと思った2人だが、それこそまさに平衡感覚が失われ、勝ち目がないものと考えたのだ。
しかし強運もまた戦闘に於いて、「運も実力のうち」に入るものであった。
それが今日降りしきる「雪の影響」であったのだ。
雪中行軍では雪に対する準備力が問われるが、彼らにとってはまさにこの雪こそ準備不足を解消する決めてとなるのであった。
2人はひたすら雪を握りつぶした。その時が来るまで。
「阿修羅」
武器を避ける中、素戔嗚が呟いた。
「準備が出来た」
既に1分が経過し、二人の動きが雪と寒さで体力が奪われ、徐々に動きが鈍くなり、浦安の攻撃を霞める程度にまで来していた。
「間に合わないかと思いましたよ全く」
「?」
2人が同じ位置に来した時、浦安は疑問を感じた。
もう逃げられまいと観念したのか?そう感じたが2人にしてはらしくない行動だ。
だが、
「2人とも死ねぇ」
武器を大きく剣を30本程宙に浮かせ、一気に2人に飛ばした。当然守りもかためつつ、浦安と成田の辺りには無数の武器を時計回りに螺旋させていた。
素戔嗚が集中力を高めた。剣に禍々しいオーラが宿る。
闇のオーラであった。どす黒く、すべてを否定するかのような暗い闇。
「何をしようと無駄だぜ。成田の前では無効化だ」
成田は万が一阿修羅が背後に回ってきてもいいように呪いの歌と無効化の準備に入っている。
といっても、この無数の武器の雨の前では近づけようがない。
「いつでもいいぞ」
「んじゃあ、この戦い終わらせましょうか」
阿修羅が左手に壊れて横たわる戦車を、右手を素戔嗚に触れた。
「テレポーテーション」
戦車と素戔嗚が消え、一気に浦安と成田の背後にとんだ。
その差はわずか1秒差であったが、1秒早く戦車が飛び、時計回りに螺旋状で回る無数の武器のところに突っ込み、それが盾となって武器を全て弾き飛ばす。
一瞬ではあるが、成田と浦安の背後が無防備だ。
そこに1秒後に素戔嗚が飛んだ。
オオオオオオオオオオ
呪いの歌を諸に喰らう素戔嗚であるが、
「死ね」
剣を成田に突き刺した。
呪術により無効化しようとしたが
「出来ない!!」
どす黒い禍々しいオーラを消すことが出来ず、成田の体を素戔嗚の剣が貫き、その隣にいた浦安の体をも同時に貫き、串刺しにした。
と、同時に浦安の能力「スカイウォーク」も解け、30本の剣は全て飛ばず、わずか7本だけが阿修羅の体に突き刺さり、後の剣は地面に落ちた。
「ぐほぉお」
2人は口から血を流し、腹からも流血した。辺りの白い雪がどんどん赤く染まっていく。
「な・・・ぜ・・・」
成田が血を吐きながら素戔嗚に疑問を投げかける。
「呪いの歌も・・・無効化も・・・効いていないのか?」
素戔嗚が自身の右耳を指さした。
その時初めて成田は気が付いた。
「雪を握りつぶし・・・それを体温で固め、耳栓代わりにしたというのか・・・」
阿修羅も同様であった。1分間時間が必要だったのは、ひたすら浦安の武器を避ける最中、必死に雪を掴み取り、握り潰して耳の穴サイズに固める必要があったからだ。
「もう一つ教えろ・・・」
「なんだ?」
「俺の無効化・・・なぜ効かない・・・」
「ああ、これか、これは魔法ではないからだ」
「なに?」
「最後に見せたのは俺のオリジナル奥義『九頭竜:十束の剣』だからだ」
「なんだと!!ぐほぉ。お前最初に見せていたのが十束の剣じゃなかったのか?」
血を吐きながらも必死に素戔嗚を浦安は見ていた。
「お前たちの勝手な思い込みだ。俺が最初に見せた剣は草薙の剣。そこに俺のオーラを移すことで初めて十束の剣になる」
「騙されたってわけか・・・」
「お前ら二人が銀行員の融資部ならば、こんな粉飾決算も見抜けなかったのかと懲戒解雇だな。俺の能力八岐大蛇が8つまでの能力しかないなど確信しなければ、9つ目の能力に気付けたものを」
「まさに素戔嗚は心に闇をもっている冷酷な男ってわけですね」
阿修羅も重症は負っていた。
「あの時の銀行の話、もしこいつらに気付かれてたらどうする気だったんだ阿修羅?まあ話の流れはわけわからんかったがな」
「昔銀行に勤めていた、つい癖ってやつですかね?」
「ふん」
「王直属の戦士十戒・・・しかとその強さ、お見受けした」
浦安と成田は息を引き取った。
雪が降りしきる中、2人の男はその場を去ったのだ。
戦争もいよいよ中盤へと向かう。
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