第39話:開戦

刻一刻と迫りくる戦いの瞬間。

国民達に緊張感が高まりつつある。各自が戦闘に対して経験を持つ者がメインにそれぞれの配置にて指揮を取りつつある。

開戦は1日午前0時。真夜中に行われるわけである。当然辺りは暗闇である。闇に乗じることが出来、また奇襲作戦次第で主導権が両国どちら側に回るか先手で決まるというわけである。

いよいよ明日、開戦の時である。


千葉王国について。

千葉王国は別名「ネズミーランド」とも呼ばれることがある。王が鼠一族であるが故に様々な個性を持つ隊長が多い。

千葉国は東京国と同じく魔法などを多く使用したスキルを扱うものが多い。

千葉国の王「三木」そして側近の3人組「怒成」「隅賦」「古人」の強さは未知数である。最強の盾東西南北クラスかそれ以上かはまだ実力が明かされていない。

その他、国に纏わる各門番がそれぞれ8名いる。常に2人での行動が多い。

浦安&成田。

富里&香取。

勝浦&鴨川。

佐倉&習志野。

各4チームに分かれての行動であるが、いずれも曲者揃いである。


当日はどのような戦力で攻めて来るか互いに分からず仕舞いであるが、秋葉王の名を受けた十戒の内5名はそれぞれ配置に司ることにはなる。

目標は敵の侵入を阻止することである。

そして願わくば相手側の戦力を垣間見ることが出来次第、一気に敵陣へ攻め込み、敗戦を促すのみである。

当然自国の鎬を削ることにはなるので戦法としては「肉を切らせて骨を断つ」わけである。此方側も只では済まないが、相手国に圧倒的ダメージを与えることが出来れば良しとする作戦である。

各々の持ち場での現場状況を考察し、速やかな敵国侵入者の排除をモノとする。

そして衛兵の中に人ではない「AI人工知能ロボット」と呼ばれる最新のテクノロジーを駆使した科学兵器も搭載し、相手国のメーカーの情勢も同時に図り、他国への武力アピールもこなすのが今回の戦闘でのメインとなるであろう。


電車が既に満員となり、交通網は首都を中心に現在麻痺が発生している。

当然金成の両親も南区に避難中である。

ただ金成は両親の反対を押し切り、一人東区に留まったわけである。

やけに静まり返った東京国の東区であるが、ホームレスがチラホラと酒を浴びての垂れ込んでいるだけである。

風もやや冷たい。もう冬である。雪がシンシンと降り注ぐことも屡。

今年も来月でいよいよ最後である。もう12月か・・・。

誕生日は来年に控えているわけであるから、また一つ自分は年を取るんだなと感じているわけである。

「17歳か・・・」

金成の溜息はやがて白い煙となり、口から吐かれた。

まだ彼は16歳だが、もうそんな年なのかと実感している頃である。

色々と思い返している頃である。

学校の図書室でたまたま出会った「心理学」の本である。

人は物事の過去を振り返る時、必ず目が左上に向くということを知っていた。

逆に右上に向いていると、何かを想像していることになる。よって過去のことを振り返っているわけではなく嘘をつくということになるらしい。

何故かそんなことが今になって思い返すことになるとは、よほど明日の戦いが気になるということである。

高層ビルのマンションなど佇む街道にポツンと外套に照らされて自分の影をソット見つめていた。

「光と影・・・俺の影」

ボーっとしていた。だがやがて自分の影が1つから4つに増えた。

金成は振り返った。

「誰だ?」

そこには渋谷、池袋、原宿の3人がいた。

「俺たちも明日の戦いに参加するぜ」

「おいおい無茶するなよ。殺し合いになるんだぜ」

「このまま金成一人見捨てておけないだろ?」

「1人より2人、2人より3人、3人より4人ですね」

「お前ら・・・」

金成は涙ぐみながらも内心心配しつつ、それでいて心細かったところをこの3人が温めてくれたことを感謝している。

「いいか3人とも、俺のそばから離れるなよ」

「分かってるって。スキルマスターさんの力がなけりゃ俺たちはただのCランクかDランクぐらいの傭兵ってとこだからよ」

「傭兵じゃねえよ。親友だ」

「ははは、言えてる」

4人で笑いあっているともう時刻は23時を回っていた。

あと1時間後であった。


東区ゲートの近くには既に衛兵1万人以上が押し寄せている。

各ビルの上にはスナイパーが30名以上。各隊長がそれぞれ5名ずつビル屋上からその門の眼下を見下ろしていた。

「敵はどこから来るか分からん。我々がここで仲間を支援しなければならない」

隊長の一人がスナイパー組に活を入れた。

氷点下マイナス2度を回りそうなぐらいの寒さであった。

冬の到来にしてはかなり肌寒い状態であった。全員毛布などを着込みながらも、開戦前は熱いお茶や懐炉などで体を冷やさぬように心がけた。

かつての大戦も腹の冷えなどによる腹痛を訴え、戦いが出来なかったと書されている。

また、極寒の地とは程遠い東京国であるから心配はないが、雪国では自然との格闘なども余儀なくされているぐらいである。多くの衛兵達は雪中行軍中にそのまま生き倒れたともされている。


心の削り合い・・・。


全ては準備力が試されるのである。

現場での状況。指揮系統などである。

東区全体を守りにつくとされる最強の盾「鳳凰」は一等地の遥か高い200m以上はあるとされるビルの屋上からその門の様子を見守っている。東門との距離およそ5㎞であった。

そして各門より2㎞先に3名、伊弉冉、伊弉諾、美姫が各持ち場につき、最先端門より約500m先で待機するのは阿修羅と素戔嗚の2人組であった。敵陣をこの2名が程なく追撃し、残り3名の十戒が敵の侵入を2㎞圏内に留めようというわけである。

それすらも潜り抜けようものであれば、5㎞圏内を鉄壁で守る鳳凰が処することになるだろう。

金成達は東区から約3㎞離れたところに位置している。十戒より遥か1㎞後方にて4名は待機中である。

その他のマフィアやヤンキー達もそれぞれの間合いを詰めつつも、相手からの金銭や武器の巻き上げを目論み、その場で待機している。

警察隊も多くが検問でその場の立ち入りを一般車などは侵入不可としているが、歩行者などまで全てに目を通すことは出来ないわけである。


まもなく時刻0時になろうとしたときである。

神の門が消えようとしていたわけである。

「いよいよ始まるぞ!千葉国との戦争が!」

全員気を引き締め、門が消え去るのを確認した。

ついに千葉国と東京国とのゲートが繋がった。

辺りには誰もいなかった。

「敵はどこぞや?」

隊長たち2名先陣を切って門を突っ込もうとしたが、いきなり大型トラックが東京国目掛けて突っ込んできた。自動操縦であった。

「噂のドローンというやつか?」

敵国のいきなりの先手に思わず困惑をしたが、人間がまだ誰一人立ち寄ってきていない。

物凄いスピードで東京国に侵入をしてきた。

突如大型トラックに乗せていた積み荷が爆発した。

東京国東区の1㎞以内が一瞬にして炎が包まれた。

衛兵達の叫び声が響き渡る。しかしその声もわずか数秒で途絶え、爆風が一気に2㎞先にいる十戒のところにまで届く。

ビルの窓は粉々に砕けていく。

東区近くの高層ビルはほとんどが倒壊した。

先手を完全に千葉国に取られてしまったわけである。


これにて千葉国と東京国の戦争が開始した。

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