第38話:宣戦布告

千葉国は東京国の東側に位置する。

関東大陸において最も海に面し、人口も豊富且つ土地は東京国の2倍に近いぐらいであった。しかし首都である東京国は千葉国の人口2倍以上は誇っているので地の利は相手が優位であっても、戦力に於いてはやはり東京国の方が圧倒的であった。

その千葉国がついに東京国に対しての宣戦布告を成し得てきたわけであり、今回の騒動で東京国の王「秋葉」に対し、衛兵が慌ただしく妄りに動いているわけである。

「千葉国からの宣戦布告は本当であろうな?」

秋葉王が自慢の顎髭を摩りながらそう問うのであった。

「間違いありません。千葉国の王と思わしき人物からも声明が発表されています」

「久方ぶりの戦争というわけだな。まあ受けてたとうではないか」

秋葉王は立ち上がり、再び王直属の戦士十戒と王最強の盾東西南北を収集した。


東京国の戦力として十戒と盾は秋葉王が東京国の人口から選び抜いた選りすぐりのメンバーである。実力は札付きであった。

「戦争と言えど毎月1日の開門のみでしか相手側は攻めようがない。ならば東開門入口にて迎え撃つのみである。地下や空中からの侵略も不可である。つまり相手は必ず地上からその門を通り、この中央区を目指して狙ってくる。まだ同盟などの線は薄いがこの戦争に乗じて他国からの侵略も手薄いとは考えられない。一度戦争になれば市民は混乱し、場は益々収集がつかなくなる。各自東西南北はそれぞれの配置につけ。特に東区に力を入れて人員を構成していく予定だ。指揮系統は東区を担当する鳳凰に任せる。そして十戒は次の者たちが各エリアに区分けし、それぞれ配置に付け。阿修羅、伊弉冉、伊弉諾、素戔嗚、美姫の5名。他部隊長達総勢30名を引き連れ、相手国の侵入を第一に防ぎ、此方からの侵略をものとする」

秋葉王より作戦が言い渡される。敵陣への攻略の鍵を握るのはやはり王直属の戦士十戒である。そしてその周りを鉄壁で守るのは今回東区を常に担当する『鳳凰』であった。

幾度となく繰り広げられた戦争ではあるが、今回は陣地をも奪い合うぐらいの壮絶な戦いになるかどうかは相手の宣言次第ではあるが、今後の日本情勢にもかなりの影響力を与えるべく戦争になることはこの場にいた皆がそう胸中に察するであろうことは言うまでもあるまい。各々の戦闘配置が決まれば、そこを重点的に守り、そして相手国に敗戦を促すべく行動を一人一人が行う必要性が十分高まるのである。

そして東京国の血税である国民の命を預かる衛兵達は来るべく開戦に向けて着々と避難命令を余儀なくされていくわけである。

戦争が始まれば敵がどこに潜伏するかは分からないからである。

国民を一度北、西、南に移行させることはとにかく難しい。交通網の麻痺などは当然避けられないからである。病院などの患者を捨てる覚悟で挑む傾向の強い秋葉王は瞬く間に非難の集中豪雨に晒されることもまた、国民の怒りと悲しみがぶつけられることも一つの手段と変わることも大きな選択であった。


本日は28日。月初めまであと3日しかないわけである。

市民は逃げ支度をするわけである。各地区からの移動、もしくは故郷を離れることに対しての劣等感から意見は対立することが多い。はるか昔起きた関東大震災の時ですらも市民は事前に告知されながらも逃げることなく、運命をその場で辿るわけであったが、今回は明らかな軍隊との衝突である為、いつ流れ弾が飛んでくるか分からないような状態で戦うことになるわけである。

戦争とは無慈悲な賜物であった。


金成もニュースを見ていた。

東区にて千葉国との正面衝突が行われるということを知った。

失うものも多いが得られるものも多い。ふと考えたのだ。自分はこれに参加すべきであるか?

金成の資本主義な考えでは必ず「ローリスク・ハイリターン」がどうしても引っかかる問題である。しかしこれ程のゲームを逃すまいということも考える中、揺れるに揺れるわけである。

戦場がいかに地獄であるかがまだ理解出来ていないわけである。

王直属の戦士十戒や王最強の盾も当然現れることは想定できる。後はそこでどう技術力を上げるかどうかである。

気の迷いは己を弱くすることをよく金成は知っている。

「参加しよう」

リスクは高いことは承知の上かもしれないが、現状の金成にそのリスクはさほど感じないわけである。なぜなら彼もまた急成長をしてきている。既に能力値も数多く習得してきているわけであり、まだそこまでの心配があるとは限らないからである。彼はいずれ日本を統治する。打倒秋葉王の前にまずは東京国の力を合わせて戦線に赴くものであるとそう考えたからである。


若者に人気のハンバーガーショップ店「若人成程」にて待ち合わせをしていた。

金成、渋谷、原宿、池袋の4人であった。チーズバーガーなどを食べていた。

「3日後に千葉国との戦争か」

原宿は青ざめたような表情である。

「まあそう悲観的になるなよ。他国が自国より強いとは限らないんだしさ」

「いやそうでも、相手国の軍隊だって相当なもんだろ?戦争舐めるなよ金成。歴史書でもあるだろ、桶狭間の戦いや関ケ原の戦いなど有名な戦いはいくらでもあるんだからさ。ましてや相手は魔法も科学もなんでもありなんだぜ」

「まあ有名な開戦に於いては長野国と岐阜国の化学大戦は凄まじかったらしいですね。猛毒を使った爆弾が何万発も放火され、市民の命100万以上を吸ったとかなんとか。そういった化学兵器が持ち込まれてなければいいんですが、最近裏ルートなどからそういった武器商人達が仕入れて王国に裏金で売りさばいたりしているということも耳にしますからね」

池袋がストローでメロンソーダをズルズル吸いながら解釈する。

「マフィア絡みというわけか・・・。そうなってくると魔法だけでは中々太刀打ちするのも難しい話になってくるな」

「まあいずれにせよ俺たち高校生は避難したほうがいいだろうな。相手は軍人、プロ集団だぜ?AランクやBランクがゴロゴロいるっつーの」

「強さ情勢であれば細かく割ればAAランクやAAAランクという位置づけもありますね。AAランクはSよりは若干能力が落ちるもののAAAランクになれば完全にSは超えますからね。相手のAランクでもAAかAAA次第では攻略難易度も大幅に変更されますからね」

「相手がAだろうがSだろうが、倒すのみだろ」

「簡単に言ってくれる・・・Aだけでも千人力は軽いと言われてるのに」

当日の開戦は1日が長く感じ、そして閉門すると同時にもし敵陣に潜入しているとするならば、相手国との情勢と方針を図るべく、スパイの抹殺命令なども下るので地獄の1月とも言われることが多々ある。その多くが疲労と病に倒れてしまい、飢餓することもあるという。

「戦場に赴く」

金成は立ち上がり、3人の前から去った。3人は取り残され、その後の話し合いをしたのである。


来るべく戦争もわずか数日である。

時として迫りつつある。

言うまでもなく学校は現在臨時休校中であった。

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