何度騙されても彼を愛する理由

黒葉

第1話 ただ突然で

「出会いは・・・。」なんて語れるくらいの物語を作ってけるって信じていた。


そこには、きれいなものだらけの恋愛。


王子様に~とかそこまで求めないけれど、運命的な出会いをしながらありふれたデート、ありふれた記念日や誕生日などのイベント。そうして重ねた時間を経て結婚し幸せな生活

ただ求めるのはそのくらいだった。


いや、普通はそうなるのが"当たり前"で。そうならないのがずれた人生なのかもしれない。

私は、そのずれた人生の一人。


綴った言葉は、全て彼に騙された日々。


それでも、彼を愛した。

彼が生きた証とぬくもりと。一つ一つを思い出しながら、彼に触れるようにここに記す。



出会いも騙されから始まった。

書き出しはこんな所からいこうかな。


2012年10月、ちょっと高級感のある居酒屋に私はいつもの友達4人と「彼氏絶つ会」を行っていた。「彼氏絶つ会」って何か?その名の通り、彼氏を絶って(作らないで)仕事に打ち込むという宣言をする会だ。

そもそも、私は彼氏はいなかった。・・・あ、違うか。できなかった。というか、


作ろうとしなかった。理由はちゃんとある。

私の理想している出会い方は、彼がけがをして倒れているのだ。そこに私が手を差し伸べる。「どうしたんですか?・・・あ、血が出てます!」そういって鞄から絆


創膏を取り出し腕を強引に取り手当をする。

「これでよし」といって立ち去り、次の日に職場に新しく赴任してきたのはその絆創膏をした彼。彼から、ご飯に誘われて、付き合い、結婚する。


「あーもう、いい加減にして。現実のどこにそんな怪我した男が転がっているのよ。」


友達の一人、今日の彼氏絶つ会の主催者、佐藤美穂(さとう みほ)は年下キラーの27歳。自慢は自分の豊満なおしりと腕。表現を少し外せば、小太りという事。彼女は昨日彼氏にフラれた。


「本当、そんなのいたとしたらホームレスかヤクザくらいね」


この子は、河内ベル(かわうち べる)下の名前は本名じゃないが、いまだに私たちもしらない。自分を偽るのが大好きで恋愛対象は女性も男性もいけるバイセクシャルだ

今付き合ってる相手は女性だが、彼女は束縛するのでうざいらしい。コロコロと服装やイメージを変えてしまう。ロングの時もあればショートの時もある。


「夢を見るのは良いと思います・・・。私も、今はユキトくんが好きです」


この人は、アイドル好きの妄想オタク・・・柳梨華(やなぎりか)私と変わらないけど唯一違うのは、この子は恋愛対象が人間で芸能人だってことくらい。

25歳でこのグループの中では最年少だが、着ている服はダサい。


「それは、アイドルでしょ?アイドルも妄想の空間にはいるのよ」


この子は20歳。牧野友梨佳(まきのゆりか)だけどなぜか貫禄のある。さばさばしていて、グループの中では一番年下なのにお姉さんっぽい。


「で、でも。妄想をすることで輝けるときもあるんです」


「梨華の言う通り、妄想することで一日が幸せになるのさ!」


私と梨華が大威張りで3人に言う。


「妄想が満たす部分と現実が満たす部分はちがうだろ」


友梨佳は、グサッとくるひと言を投げる。


「そうよぉ現実にいる男も女もすきにならなきゃ」


「いいの。今はそれで。」


「たくっ。一生夢見るつもり?」


「私も今はユキトくんだけでいいかな」


「絶つ会だからいいんだけどね。」


「そうだよー。いつかきっと幸せくるぐらいでいいの」


そう自分にいつも言い聞かせて街中で見るカップルの出会いを想像して

『いいなぁ』なんて勝手に考えているものの


理想的な出会い方には譲れなかった。


そんな私の趣味は日記をつけること。

そこにはこんな出会いがしたい。


こんな事がしたいっていうただの欲望が書いているものばかり。


日常の中で思いついたらすぐ書けるようにいつも持ち歩いていた。


彼氏絶つ会と言いながら結局嘆きの会になり

皆がベロベロに酔うなか私はほどほどにしていた事もあり

周りの介抱へと回った。


友人たちを送り、疲れ果てながらも


最終電車を待っているとき、ふと思いついたよくドラマであるような妄想を書きためようと鞄から日記をだそうとした時


その日記が鞄の中に見当たらない。


「え・・・最悪!!」


たかが日記、でも今まで書きためた思いは絶対に取り戻したかった。


終電を逃すことをわかっていて慌てて居酒屋に戻る。


居酒屋は店を閉め後片付けをしている中『忘れ物をとりたい』ということで

特別に入れてもらった。


店内を探し回ったが日記はなかった。



お店の近くから電車まで自分が通った所を何度も見返す。


けれども何も落ちていない。



「うぅ・・・」


その時、少し隠れた路地から男性のうめき声が聞こえた。


外は真っ暗で深夜の中、少し怖くなったが

次第にその声は辛そうな声に変わっていく


「うっ・・・いてぇ」


助けなきゃ。なんて衝動から

男の人に駆け寄る


「大丈夫ですか。救急車呼びますか?」


そう言って携帯を取り出すと携帯の画面のあかりが彼の顔を照らした。


平均よりは少し高い『かっこいい』と思うような顔立ち。


勝手に頭の中で妄想が始まる。


「あっ・・・救急車・・・」


見とれていた自分に気づき我に返り救急車を呼ぼうとすると

手を取られた。


「タクシー・・・呼んで・・・」


「え?あ・・はい」


言われるがままタクシーを呼び彼をのせる


「住所とかって・・・」


「一緒に付き添ってくれる?」


痛々しい声でそう言われ『はい』とただ流されるままに


「あの住所・・・家どこですか?」


聞いてもうめくだけで、困り果てタクシーの運転手も困っているので


「じゃぁ、とりあえずうちに来てください。」


そう言って自分の家の住所をタクシーに伝え家に向かった。


居酒屋から約1時間程。

都会からすこし離れた場所にある私の家は都会の真ん中からすればすこし景色が

違った商店街が連なる場所にあるオートロック付の2DKのマンション。


ここの相場なら家賃も都心から離れている為比較的安かった。


タクシーの料金を支払い、彼を下ろそうとするもののふらつく彼。


「大丈夫ですか。肩かしますで・・・」


「うぅぅぅ・・・」


それしか言わない彼を必死に力を振り絞り起こして、彼の腕を掴み自分の首に手を回してタクシーから引きずり出す。


「ありがとうございました」


タクシーにそう挨拶すると、オートロックの差込口に自分のポケットに入っていた鍵を取り出し差し込んであける。


若干引きずる形になるながらも彼を支えながら自分の住む階へ行く。


こんな時に古く狭いエレベーターながらもついててよかったなんて良さに気づきながら普段は運動と待ち時間の無駄だと想いながら

階段で駆け上がるものの、エレベーターを使い

彼を乗せ2階に上がった。


彼を一度ドアの横に座らせて、鍵をあけて玄関に自分のヒールを脱ぐとすぐさま

スリッパに履き替え彼の腕を持ち上げて玄関に座らせた。


座れせるもそうそう彼は倒れこみ、仰向けになる。


「本当に病院いかなくて大丈夫ですか」


「へいき」


強引にでも連れて行かなければならないのかもしれないけれど

彼の靴を脱がせると


「立ち上がれますか」


と一声かけて彼自身精一杯の力を支えながらとりあえず私のベッドまで運んだ。


「本当に大丈夫ですか。汗とか出てますし」


「嫌いなんだ 病院」


「でも・・・」


「へいきだから 休めば」


その強情さに呆れながら、水を持ってきて、タオルや氷も用意した。


「水、ここ置いときますね」


彼は、ふらつきながら自力で起きて

ポケットを探り袋を取り出すと錠剤をだして水と一緒に飲み干す。


「通院とかしてるんですか」


「初めてあってさ・・・踏み込みすぎじゃない?」


「この状況だもの、救急車呼ばなくていいのかとか不安になるじゃないですか」


「・・・そっか。これは処方箋。たいしたもんじゃないよ。ただの風邪薬みたいなもの」


「・・・とりあえず、これ水枕です。汗もひどかったんで。もし起きれたらお風呂どうぞ。玄関前の扉の所なので。用意しときます。・・・着替えは・・スエットくらいしかないんですけど」


「あぁ」


そっけない返事と大変な事に巻き込まれた事に疲れて、先バスルームの向かい

頭を冷やすようにシャワーを浴びた。


色んな疑問が交差した。


シャワーから上がると彼は眠っていた。


布団をかけて上げると、その後色々あったせいで疲れてソファーにそのまま寝入ってしまった。


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