第2話「真紅の痛み」

「―――フィリア!」


GM:そう叫んだのはフィリアの父だった。

そうして父の身体がフィリアの身を包み次に感じた感触は――自分の肉が切り裂かれる感触。


フィリア:「とぉ、さま……?」

何が起きたのか理解できていない。


GM:目の前で君の父の身体は二つに引き裂かれていく

それだけでなく、君は顔や体中に熱い痛みが走るのが分かる。

気づいた時には君は血塗れの床に倒れていた。目の前にあるのはただ赤の一色。


フィリア:痛みは……ある。けど、それ以上に熱い。

体が、顔が、背が……感じる何もかもが熱い!

「あ、う、あぐぅぁぁ」


GM:父が綺麗だと言った自分の羽が地べたに転がっている。


フィリア:「はねぇ、わた、しの……ぐぅぅぅッ!」

羽に手を伸ばそうとするけど体が言う事を聞かない。激痛と熱が体中を駆け巡る。


GM:そんな君を見下ろすように一人の……おそらくは15、6程度の少年だろうか。

そんな人物が立っている。


フィリア:見えない。血海に彼が足を踏み入れたのだろうか?

水音がする。顔を水音がなった方に向けようと……

「ぐぅぁあッ!!」

背が火傷しそうに熱い。体を動かすことが出来ない!


GM:薄れゆく意識のなかぼんやりと見る。

その男の血よりも紅い真紅の髪とその右腕から生えたような真紅の剣を。


フィリア:「わ……れなぃ」 

口が上手く動かない。「わす、れない」


GM:その真紅の少年は踵を返し、君の前から姿を消した―――。


フィリア:それでも……痛みに耐えながら口にする。憎しみの呪詛を。

「おまぇ、わすれない!!」


GM:やがて君は――意識を無くした。


フィリア:なにも見えない。なにも聞こえない。

感じるのは痛みと熱と、血の味だけだ。それすらも、薄れていく。


そうして少女フィリア=クーへの血の記憶はそこで途絶えた―――。


GM:そうして、次に目を覚ました時、そこは最後に見た景色とは全く変わっていた。

美しい装飾の施された部屋の中央の大きなベットで君は目を覚ます。

見ると体中に包帯や応急手当が施されている。


フィリア:あ、普通に繋がった……夢での回想かなとか思った。

「……高い?」

見ているのは上だけ。周りは見ない。

そして、気付くよ。普段、感じることが出来ないはずの、背中のシーツの感触を。

羽があるため、ベッドにこんなふうに横たわることができない……はず、なのに。


GM:そう。普段なら感じないはずの感触だね。


フィリア:背はベッドの感触を伝える。「…………ッ!」

すこし考えて、気付くよ。はね起き……ようとしても出来ない。

激痛が体中を駆け巡る。

激痛で目を瞑り、またある事に気付く。視界が、右目の視界が無い。


GM:右目までも(笑)


フィリア:顔を切られたんですよ。

失明はしていない……と思う。包帯巻いてるから見えないの。


GM:ああ、なるほど。ではそんな風に君が自分の体調の異変に気づいた頃。

「気づいたか」

不意に部屋の扉からそんな声が響き、中に金髪長身の男が入ってくる。


フィリア:その声は聞こえていた。でも、声の主を見ようとしないよ。


GM:ではそんな君の様子を見て男は納得したように呟く。

「……どうやら自分の置かれた状況が今ひとつ飲み込めてない様子だな。まぁ無理もないか」

男はそう言って君の方に近づいてくる。


フィリア:……よし。


GM:よし?(笑)


フィリア:「とぉさまッ!?」

声にそこで反応すると。父の声に似ていたから。

でも急に首を動かしたから激痛が。痛みに耐えかねて目を閉じてしまう。


GM:がばっと抱きつかれたまま男は静かに立っている。

しばらくして男がゆっくりと口を開く。

「……気は済んだか?」


フィリア:「……とぉさま、じゃない……。ごめん、なさい」

彼を解放するよ。そして正面から彼の顔を見る。


GM(金髪の男):「分かればそれでいい」

男の格好を見ると、かなりの貴族階級を示すような豪華な服を着ているのが分かる。

それだけじゃなく彼の持つオーラも普通の人とは違うものを感じさせる。


フィリア:ほぅ。無言で彼の顔を見る。それだけ。


GM(金髪の男):「自分に何があったのか、おおよそ理解はできているだろう」

問いかけるように男は君を見据え、言葉を続ける。

「お前の父がなぜ死んだか、教えてやろうか?」


フィリア:迷いはしない。

「教えて」

顔には何も表情を浮かべない。


GM(金髪の男):「弱いからだ」

ハッキリとその一言を。


フィリア:「だから殺された?」


GM(金髪の男):「お前の父に力があれば殺される事も、娘をこのように傷つけられる事もなかったはずだ。自分の身すら守れない者は結局なに一つ守れはしない」


フィリア:「……じゃあ」

瞬きを二、三回。

「私が強くなったら、あいつころせる?」


GM(金髪の男):「ああ、お前が望むなら可能であろう。幸い、お前にはそうした素質がある」

そう言って、男は君の瞳の奥に眠るなにかを見抜くかのように断言する。


フィリア:「あなた、つよい?」


GM(金髪の男):「そのつもりだ」


フィリア:「ひとつ、おねがいしてもいい?」


GM(金髪の男):「何だ?」


フィリア:「わたしをつよくして。なんでもするから」


GM(金髪の男):「いいだろう。それでこそ、私が救った価値のある命だ」

言って男は顔にかかる髪を払い、自分の名を告げる。

「私の名はシュヴァルストだ。お前の名は?」


フィリア:「フィリア=クーヘ。それが私の名前。とぉさまが付けてくれたの」

表情は変えないよ。無表情のまま。


GM(シュヴァルスト):「なるほど、フィリアか。いいだろう、フィリア。これからお前は私の剣となり力をつけろ。その先にお前の望むものがある」


フィリア:「ほんとうに?」 微笑むよ。


GM(シュヴァルスト):「私は嘘は嫌いだ」

こちらも微笑み返す。


フィリア:「ありがとう。わたし、あなたの剣になる。だから、あいつをころせる力をちょうだい」


GM(シュヴァルスト):「殺すために求める力、か。まあ、それも一つの道だな」

そう言って彼は納得するように頷く。

「その才能、存分に私の下で発揮せよ。フィリア」


「うん!」


その日、エデン帝国参謀にしてエデン最高司令官八王のひとりシュヴァルストに拾われた一人の少女の運命は大きく動いた。

全ては家族と自分の幸せを奪った真紅の人物に復讐をするために。

そうして数年の月日が流れる事となる――――。

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