第二章 狂ってしまった運命


誰___?


誰なの___?


なぜ私に近付こうとするの___?


やめて__こないで____


ひとりにさせて____





村までの道を歩いている時、シェインとエクスは母親にこの想区のことについて聞いていた。


どうやらここは朝昼晩関係なく暗いらしい。その原因となっているのがこの想区を支えている主のような存在が身を隠したからのようだ。

前まではちゃんと明るく、太陽に恵まれた場所だったと言う。


・・・肝心の、その原因が誰なのかは分かっていないと言っていた。

村人たちは、「何者かに太陽を隠されてしまった」といっているらしいのだ。


「太陽・・・ですか。太陽を隠すと言えばあの方しか思い浮かびませんね」

「あの方・・・?」

「わからないんですか?太陽と言えば太陽神、天照大御神様でしょう」

「あぁ!」


太陽と言えば太陽神、天照大御神だとシェインは言う。確かにわからなくもないが、太陽神がわざわざ太陽を隠すようなことをするのだろうか・・・と、エクスは考えていた。

「神話にあったでしょう。天照大御神が姿を隠し、太陽も隠れ、地上は真っ暗になってしまった・・・と」

「・・・?それだったら運命の書通りに動いているんじゃ・・・?」

「運命の書に近いけど、運命の書に書かれてない事が起こったんでしょう」

エクスとシェインは、この想区で何があったのか考えていた。


「あれ?でも、もしも天照大御神なら須佐之男命や月読命だっているってこと?」

「・・・いないと思いますよ。ほら、さっき〝太陽に恵まれた〟って言ってたじゃないですか。」

「んー・・・つまり、他にも神様が居たとすれば、太陽を強調しないって訳ね!」

「そうなりますね」

「んじゃあ、今回のはほとんど天照大御神にあるってことか・・・」



・・・ふと、レイナの腕を控えめに引っ張った男の子が、先程まで居た高原の方を指さして言った。

「おねーちゃん達、あそこに何かいない?」

「・・・何かしら・・・っ?!」

そこには大量のヴィラン達とメガ・ヴィランが。まるで、エクス達の後を追ってきたかのように。


それを見て、今度はタオとエクスが前に出た。

「メガ・ヴィランの方は俺に任せろ!」

「わかった!」

タオはエルノアに。エクスはファントムになって駆けだした。


早速メガ・ヴィランはお得意の突進でエルノアに突っ込んで行く。

その時エルノアが引いていた矢には緑色の光が集まっていた。

メガ・ヴィランがすぐそこまで迫ってきた時、


「撃ち抜きます!」


エルノアが放ったのはただの矢ではなく・・・もはやレーザービーム。

それに正面衝突したメガ・ヴィランは押し戻されていく。

エルノアがハッとすると、既にヴィランたちに囲まれていた。

ヴィランたちが飛び掛かろうとした時、何者かがエルノアを庇うようにヴィランたちの間に滑り込んできた。

そして、持っていた大剣を振り上げると、


「踊れ!」


そう言って影になり、エルノアの周りにいたヴィランたちを斬っていく。

どこから斬られるのかわからないまま、ヴィランたちは次々と倒れていった。


・・・この戦いもやはり圧勝。

メガ・ヴィランの強烈な突進も、エルノアの希望のプランタンや、ファントムのファントム・レクイエム・アリアには敵わなかった。

その強烈な必殺技にヴィラン達が敵うはずもなく、ヴィラン達はあっけなく倒れた。


その様子を見ていた母親は、

「あの・・・毎度毎度ありがとうございます」

「いいんですよ!ヴィランを倒すのも私たちの役目の一つだったりするので。」

「そうですか・・・」


母親は、我が子と楽しそうに話す四人をじっと見つめていた。

この人たちは不思議だ。今までずっとあの化け物に脅え続け、苦しい日々を送っていたのに・・・

なぜか心が温まる。見ず知らずの自分たちを迷わず助けてくれたこの人たちなら・・・

いつの間にかどこかで狂ってしまった、この〝運命(ストーリー)〟を元に戻してくれるのだはないか・・・そう、母親は思った。

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グリムノーツ 太陽神の想区 @alusi

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