カナコ

カナコ?

―――聞き覚えがない。

少なくとも、現実の世界では。


毎夜電車の中で見る夢で、昔住んでいた街に自分は立っている。

いつもの公園の―――砂場、柘榴の木、病院の駐車場を経て、

漬物屋さんと駄菓子屋の角を通って自宅に帰ろうとしているのだ。


そこで、毎回家に着く直前に、彼女―――カナコに遭遇する。

日はまだ暮れてないから―――と、

カナコと一緒に暗くなるまで遊んで・・・いつもそこで目が覚めるのだ。


夢の中のカナコは一言も喋らず、ただ無邪気に笑っていた。

その笑顔を見ただけで、何の違和感もなくカナコと遊び始める。

それなのに、目が覚めると過去の記憶にカナコという名の少女の存在はない。


知りたい―――。

昔の記憶の中にだけ現れる・・・君は一体誰なんだ?

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