第3話 王様の運命の書

王様はお気に入りの上着にマントを着て、エクス達の所へ戻ろうとした。

「ととっ! こいつは忘れてはいかん」

そう言って、王様は王冠を取り、エクス達の所に戻った。

入口に戻ると、

「待たせたのぉ!」

と、王様は準備が出来た合図のように声を出した。

「よし! ではカオステラーを倒しにいくか!」

タオが勢いよく言って返ってきた返事が……。

グルルル……。

4人はヴィランが来たのかと思い、周りを警戒した。

ただ、一人だけ顔を真っ赤にして警戒していない者を除けば。

「レイナ! ヴィランが来ているかもしれないよ!」

「お嬢! どうしたんだ!」

「姉御、早く構えないと、ヴィランが来てますよ」

「そうじゃぞ。 いつ襲ってくるか分からないからのぅ」

レイナ以外の4人はいつでも戦闘出来るように準備をしている。

しかし、レイナは顔を真っ赤にしながら、無防備な状態でいる。

「……よ」

「どうしたの!?」

エクスはレイナの小さな声が聞き取れず、聞き返すように答えた。

レイナの身に何かあったのかと、皆が思っていると、

「今のは、私のお腹の音よ!」

レイナは顔を真っ赤にしながら、言い放った。

「へ?」

全員の動きが止まる。

そして、静かな間の後に笑いが飛んだ。

「姉御のお腹の中にはヴィランがいたのですか!」

「いや〜たまげたな。 まさかお嬢のお腹の中から鳴き声が聞こえてくるとは」

「もう!やめてよ!」

「姉御が面白いので、やめたくありません」

「おふざけは禁止!」

この光景にエクスも笑っていた。

「そうじゃな。 一度、ご飯でも食べるか。 幸い、パレード用に用意していた料理もあるし」

「料理!?」

料理の言葉にレイナがよだれをたらしそうな勢いで食い付く。

というより、少しよだれが出ていた。

「ポンコツ姫、発動ですね」

「だな」

レイナはシェインとタオの言葉を聞く耳も持っていなかった。




5人は食堂に行き、いつでも食べられるように包装された料理があった。

「では、好きなだけ食べてくれ!」

王様がそういうと、レイナはすぐそま包装を取り、肉にかぶりついた。

「もう、こう見ると、お嬢がお姫様だって忘れそうだな」

「私もです」

「ハハハ……。 じゃあ僕たちも食べようか。 王様。 いただきます」

「皆たらふく食うんじゃぞ」

王の優しい行為に甘え、全員でご飯を食べた。

そして、あらかた食べた後で、

「よし! 腹ごしらえもしたし、カオステラーのところへ向かいますか」

「待ってくれ」

それを引き止めたのは、王様だった。

「わしの運命の書の話をさせてくれないか?」

その言葉に全員の目付きは真剣になっていた。

「わしはとある、国の王様じゃ。 そして、オシャレ好きでもあったのだ。 それで、わしに立派な衣装を探してこいと部下に命じた。 そこから、持ってこられたのはなんだと思う?」

「とても派手な衣装だったのではないの?」

「エクス君が思っているのとは違ったんだよ。 その持ってこられたのは透明だったのだよ」

「そんな、透明な服なんて作ることが出来るはずがないじゃないですか。 騙されてるのじゃないですか?」

シェインの問いに、王様は頷いた。

「その通り、わしは騙されていたんじゃ。 その服は存在していないのじゃからな」

「何故、皆気付かなかったのかしら?」

「運命の書には詐欺師に騙されるとしっかり、書かれていたのじゃ。 皆は分かってて、言わなかったのじゃ。 ストーリーが破綻してしまうからのぅ」

「その後、どうなるんだ?」

タオが聞くと、

「その後は、パレードでわしがパンツ一丁の状態で出て、皆に王様は裸だ! と、言われ、わしは顔を真っ赤にしてパレードを強行するという話じゃ。 これがこの想区 裸の王様の話じゃよ」

王様は話を終えた後で、溜息をついた。

「この想区では剣も出てこない。 魔法も出てこない。 平和な話なんじゃよ。 それがどうして……。」

王様は下を向き、何かを考え込んでいている。

「どうして、役割の人に心の自由を作ってしまったのだろうか? わしには分からん。 何故だと思う?」

その回答には4人も黙っていた。

答えを知っている者は誰もいないのだから。

「わしは、一度でいいから冒険をしてみたかったのじゃ。 そりゃ、剣や魔法が飛び交うようなところでな。 けれど、それはもう叶わないと思って諦めているよ」

レイナはその言葉に対し、何か言おうとしたが、突如の衝撃音で音をかき消された。

5人が急いで向かうと、城の入り口が激しく破壊されており、機械仕掛けで動いているようなメガヴィランが扉の前に立っていた。 メガヴィランの隙間から入っていくヴィラン達。 4人はヒーローにコネクトし、対応した。

ハンプティとアリスは周りのヴィランを消し去り、エイプリルは魔力を貯めていた。 ドン・キホーテはメガヴィランと対等に渡り合えるために距離に近づき、槍の牽制を行った。

しかし、メガヴィランの装甲は硬く、ハンプティとアリスの援護も弾かれる始末である。

メガヴィランも動きを止めたまま、動こうとはしなかった。

すると、

「勇気の時間!」

エイプリルはそう言って、味方の3人に魔法をかけた。

3人は力がみなぎり、これはいけると思い、メガヴィランに突撃した。

メガヴィランの装甲が壊れるまで叩きつけ、何とか、倒すことに成功したのだ。

すると、そのメガヴィランは何かの道具を落とした。

道具というよりも、それは一枚の紙切れだった。

レイナはその紙切れを、確認して、

「やっぱり……」

その紙切れの謎の意味が分かったように呟いた。

戦闘が終わった直後に、王様がひょっこりやってきて、

「いや〜。 武器庫にある武器取るのに苦労したわ〜」

と、のんきな声を出している。

レイナは王様を睨みつけて、

「待っていましたよ。 王様。 いや、この騒ぎの張本人のカオステラー!!」

「ど!どういうことじゃ!? わしも追われている身なのじゃよ。 そんなことはないぞ」

王様は顔をぶんぶんと横に振り、私は違うと意思を出した。

「先程のメガヴィランがこんなのを落としたのよ」

「それは?」

「紙切れよ。 ただ、内容が書かれていたわ」

「何が書かれていたのじゃ?」

「王様へ。 新しい想区を作り上げてください。 大臣。 そう書かれていたわ」

「……。」

その言葉に王様は黙っていた。

「この紙には王様が新たな想区を作り上げるような書かれ方をしているの。 まるで、王様が話を作り変えるような!」

王様は沈黙したままだった。

レイナの言葉に何の反応も見せないのだ。

「突撃だ!」

タオはヒーローにコネクトし、ドン・キホーテの一閃で貫こうとしたが、王様にあっさりかわされ、代わりに王様の持っている大剣の一撃を貰っていた。

「タオ兄!!」

シェインが叫んでいるが、ドン・キホーテは動こうとはしない。

いや、ダメージが大きく動けなかったのだ。

王様はドン・キホーテを捕まえ、大剣をいつでも切れるように、ドン・キホーテの首の近くに置いた。

ダメージを受けすぎたせいなのか、ドン・キホーテの体が光り、タオの姿に戻っていった。

「この者を死なせたくなかったら道を開けろ!」

3人は諦めたかのように、城の入口から離れ、王様が通りやすいように道を開けた。

王様は、タオを人質にとりながら、入口まで移動する。

入口の側で立ち止まり、警戒している3人にこう言った。

「抵抗すればどうなるか、分かっておるじゃろうな?」

王様はこの意味が分かるだろと言わんばかりに、大剣をタオの首に近づける。

大剣はタオの首に接触寸前のところまで近づいていた。

「あなた、何が目的なの?」

レイナが手を震わせながら、王様に聞いた。

「わしはな、ずっとこの想区で王様をやってきた。 この想区はパレードが終わる度に、また最初に戻る。 そう、何回も何回も! 何回も!!」

「早く用件を言って下さい」

シェインが割り込むように言葉を放つ。

その言葉には、先程までの陽気な言い方が全くなく、殺気を感じる位に棘のある言い方をした。

「わしはな、冒険がしたかったんじゃよ。 君達のように、色々な想区へ行く。 とても、楽しみではないか! だからわしは願った! 冒険がしたいと!!」

「それが理由なのね。 けれど、あなたの好きにはさせない! この想区を元に戻してみせる!」

「それはいやじゃな。 だが、面白い! では、場所を決めて、戦おうではないか! 場所は最初に出会った場所で会おう。 必ず、4人で来るのじゃぞ!」

そう言って、王様はタオを突き飛ばすようにエクス達に返し、王様は外に向かって飛び出した。

「待っておるぞ!! ガーハッハッハ!」

エクス達は、すぐにタオに近づき、怪我の確認をする。

幸いなことに、首の方には怪我がなかった。

「ってて! あのおっさん乱暴に扱いやがって! すぐに行くぞ!」

「待って下さい。 まずはタオ兄の怪我が先です」

「大丈夫だ。 何処にも傷が付いていない」

「じゃあ、行くとこは決まったわね」

「行こう。 王様と最初に出会ったあの場所へ」

エクス達は、城の入口を抜けて、外に出た。

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