第2話 紫の
「もし、死にましたか?」
遠くから女の声が聞こえ後頭部と言うか衝撃を受けた場所に濡れたタオルか何かが宛がわれている。
ゆっくり目を開けるとボサボサになったウルフカットの様な女の顔が見えてくる。
琥珀色と言うか不思議な色をしている瞳が不安そうに揺れている。
体を起こすと後頭部に当てられたタオルの様な物も一緒に付いて来る。
どうやらこの女の人が手でタオルを持って冷やしてくれていたらしい。
「へぇ?」
それが思わず口から洩れた言葉だった。
瞬時に思考が停止する。
目の前には原野が広がり遠くに霞んだ青い山脈が見える。
最寄り駅のホームでもなくまして線路の上でもない。
周りにはビルなんて皆無で無駄に広大な景色が広がっている。
そして俺自身は草むらの中で倒れていたようだ。
「ここは何処だ?」
「ここはフォリア王国のはずれです。やはり私の一蹴で頭のネジが全部飛んでしまったんですね」
「はぁ?」
ギシギシと油の切れたロボットの様に首を景色から女の人の方に向けると、あまり表情のない顔でそんな事を言い放っている。
そんな女の人の格好は何処となく和風に見えるけれど濃紺の民族衣装の様にも見える。
「ここは日本だろ」
「ニホンとは何処か遠くの王国ですか?」
「王国じゃなくって国家だよ。日本国って言う」
「聞いた事が無いですね。そんな国は。やはり打ち所が悪くてお馬鹿に」
そこまで言って彼女は徐に俺から目を逸らした。
自分が俺の後頭部に蹴りを叩き込んでおきながらそれが原因で馬鹿になったと。
悪い夢を見ているのか或いは強い霊に惑わされているか。
それにしては後頭部の痛みはあまりにも現実的で実感が有り過ぎる。
一度目を瞑り大きく深呼吸をしてから再び目を開けると相変わらず広大な景色が広がっていた。
理解不能と言うしかない。
ここはフォリア王国のはずれで日本じゃないらしい。
それともう一つ気づいた事がある。
彼女のボサボサの髪から犬の耳の様な物が飛び出していて、背中の方には尻尾らしきものが見える。コスプレにしてはビックサイトの冬コミはまだ先のはずだし。
ここは日本ではないと言う事が何となくだけどお馬鹿な俺にですら判る。
そして少し離れた所には人型をした何かが苦しそうに蠢いている。
それは何となく人型を留めているが決して俺が知っている世界各国の人々には絶対に合致しない。
どちらかと言えば俺には見えてしまう魑魅魍魎の世界の方に合致しそうな気がする。
頭の中がラッシュ時の駅以上に混乱しているが確かな事は一つだけ。
今の状況では目の前に居る彼女の言葉を信じるしかなく、彼女の姿こそがこの世界を証明しているのだろう。
彼女の耳が犬で言えば少し後ろに下がり目つきが険しい。
俺の事を何者なのか注意深く警戒しているのかもしれない。
「そんな目で見ても俺は何もしないし何もできない人間だよ」
「に、人間なの? やっぱり」
「どう見ても人間にしか見えないだろ。君は人間じゃないみたいだけど」
「わ、私は犬神の末裔で狼の……」
語尾がフェードアウトして彼女が俯いてしまった。
耳は完全に伏せて尻尾にも力が無い、意気消沈と言った所なのだろうか。
犬神で末裔の狼ね。
犬の耳だと思っていたのは狼の耳だったようだが一般人には見分けなんてできないと思う。
差し詰め彼女は人狼と言った所なのだろうか。
普段から周りの人には見えない様々な物を見てきた俺にとって、どちらが普通かと言われれば見えない物が見えるのが普通で。
それは物心ついた時から変わっていないしこれからも変わる事は無いと思っていたが、今はそれをどうこう考えている状況じゃないらしい。
明らかに俺は快速電車に跳ね飛ばされた筈なのに現状は一変していた。
異世界に召喚と言う奴か。
はたまたここはあの世の世界なのか。
どちらも見た事が無いので俺には理解できないがそんな物は考えるのも虚しくなる様な状況で凡人たる俺の範疇を突き抜けていた。
「はぁ~ どうにもならない状況ってあり得るんだ……」
大きくため息を付いて状況確認をする。
ここは彼女曰くフォリア王国の外れの草むらの中で。
俺の格好は黒いスニーカーにリーバイスでTシャツの上に青いシャツを羽織って、黒いキャンパス地のショルダーバッグがそばにある家を出て来た時の格好だった。
「どうなっているんだ?」
「そこで寝ていたあなたが急に起き上がるから賊を蹴散らそうとしたらあなたの後頭部に蹴りが直撃して……睨まれた」
「睨んでないよ。少し目つきが悪いだけだ」
「悪人だ」
「悪人言うな。俺は仁瀬一樹だ」
「ニ・ラ・イ・カ・ズ・キ?」
不思議そうな顔をしながら彼女が人の名前をぶつ切りにした。
「一樹で良いよ」
「カ・ズ・キ?」
「かずき」
もしかして痛い子なのか?
そんな事が頭に浮かぶけど薄汚れている事を覗けば身なりはしっかりしていると言うか上等な物を身に付けている様な感じがする。
まぁ、これは俺の経験からなのだけど決して経験人数が豊富という訳じゃなく大学でカットやセットをしてもらう為に俺の所に来た女の子を見てきた経験からだ。
似合う似合わないは別としてブランド品の鎧を着ている女の子やさり気なく着ているのに良い物を身に付けている女の子まで多々見てきた。
それにしても薄汚れていると言うか虐げられてきた感が拭えない。
「食うか?」
そう言って彼女が懐から取り出したのは一見すると爬虫類か両生類の干物で、目を凝らしてみても俺の目には狂いは無かった。
無下に断るのも棘が立つし俺の記憶に間違いがなければ自宅で母親が用意してくれた朝飯を食べてまだ1時間も立っていない筈だ。
丁重にお断りすると彼女の顔が安堵に緩む。
そんなに大切な物を人に差し出すなと心の中で叫んでみた。
このままこの場に留まっていても何も解決はしないだろうしあるか判らない、打開策を模索するにしても妥当ではないと判断する……
なんてラノベやアニメに出てくる勇者の様な事は考えずとりあえず状況を丸呑みする事にした。
「さて、行ってみますか?」
そう声を上げると相変わらず不思議そうな顔で彼女が俺の顔を見ていた。
「だから、行きますか」
「何処に?」
「俺が判る訳ないでしょ。俺はこの世界に来たのが初めてなんだから」
「でも、私はこの場から離れる事が出来ないから」
突飛な事だらけで思考回路が付いて行かず改めて今度は状況ではなく状態を確認する必要があるらしい。
俺自身の知識から太陽の位置から察するに夜の帳が下りるのはまだ先の事だろう。
まぁ、それがこの世界では通用するかと言えば全く自身が無い。
野垂れ死に寸前の人型の側に居るのも嫌なので場所を移動した。
気付かなかっただけで立ち上がって辺りを見渡すと俺が倒れていたのは何処かに続いているであろう未舗装のさほど広くない道の脇で。
その道の近くにある大きな木の下に腰を下ろした。
彼女は何も言わずに俺について来たのは俺の事を蹴り飛ばした後ろめたさからなのだろうか。
「あのう、何でも罰は受けますから」
「罰? そんな物を俺は望まないよ。だってあれはただの事故と言うか俺が急に起き上がったから起きた事なんだろ」
「そ、それはそうですけど。その人間に怪我を……」
彼女の耳と尻尾が今にも地べたに付きそうなくらい下がっている。
少しこの世界の事情と言うものを知る必要があるようだ。
不思議な事に言葉は通じる様なので彼女に話を聞く。
なんでもこの世界では俺の世界ではアヤカシなんて言われる人外と人間が混在して生活しているらしい。
人外と呼ばれる者も普段は己の力で人間の姿となり人と何ら変わりなく共存しているとの事だった。
そして彼女はそのアヤカシと人との間に生まれた子どもで『鬼子』と呼ばれアヤカシからも人からも疎まれて今まで育ってきたと教えてくれた。
その理由は至って簡単で『鬼子』と呼ばれる者たちは稀にしか生まれないがアヤカシとしての力は殆どなく人の姿にもなれず親のアヤカシとしての特徴が身体に見られると言う事だった。
彼女で言えば犬の様な耳と尻尾がそれなのだろう。
人間にもアヤカシにもなれずか……
それは子どもの頃の自分自身そのものだった。
普通の人には見えない物が見えると言う事はどんなに酷な事だったか俺自身が身に染みて良く判る。
周りからは嘘つき呼ばわりされ優しくされたと思えば他の人には見えない存在だった事も。
自分に宿る力を呪った事もあった。
「そうか。でも俺はこの世界の人間じゃないし俺自身も異物の様な物かもしれないからな。君の名前を教えて欲しいけど駄目かな」
「名は無い。私は生まれてすぐに幽閉されてこの『紫の囲い』に捨てられた。周りからは鬼の醜い草なんて呼ばれて」
「何で『紫の囲い』で『鬼の醜い草』なんだ?」
「両親が私の事を忌み嫌っていたから」
「そうかな? 我が子を忌み嫌う親なんて居ないと思うけどな」
彼女は俯いたまま何も答えなかった。
時々道行く人がこちらを見て何か汚い物を見たかのような顔をしている事から彼女がどれだけ蔑んで虐げられていたのかが痛いほどわかる。
そしてその道行く人の中には明らかに異形の者が混ざっているのが判るがあれが混在して共存していると言う事なのだろう。
恐らく周りからは人間と変わらなく見えていると言う事が経験から知る事が出来る。
彼女を見ると頭を垂れたままで。
それは他でもなくこの世界の縮図の様にしか見えない。
人である俺が鬼子の彼女を甚振っている。
そんな邪念を振り払ってもう一度彼女に聞いてみる。
「『紫の囲い』って何なんだ?」
「この辺の草しか生えない土地の事だ。紫の苑なんて言う奴等も居る」
「何で草しか生えないんだ?」
「ここには無知で本能でしか動かない低級な奴らの住処だから澱んでいるんだ」
確かにこの草原には背の高い草しか生えていない。
草なのだから多少花でも咲いていないかと見渡すが一面緑で彼女の言う所の澱んでいると言う事なのだろう。
気が付くと行き交う人や人外の姿が無く、隣にいる彼女の顔が青ざめて震えている。
まるで何かに怯えているようだった。
それは突然地中から現れた。
見た目は巨大なミミズと言うより釣り人なら知らない人が居ない巨大なイソメやゴカイと言えば良いだろうか。
ミミズにムカデの様な足が映えたゴカイの化け物数頭が野垂れ死に寸前の人外を捕食している。
先端の口の横に大きな黒い牙が2本生えていてその牙で器用に摘み上げて口に放り込んでいる。
これが彼女の言っていた無知で本能でしか動かないと言う輩なのだろう。
彼女が怯えだす前に行き交う人が居なくなったと言う事は、こいつの出現を人外が察知して逃げ出したに違いない。
人と人外が共存している理由が分かった気がする。
それにゴカイの化け物が現れる前に胸騒ぎと言うか嫌な雰囲気を俺も感じていたがこんな事になるとは思ってもみなかった。
本能には忠実にと言う事なのだが後の祭りだった。
粗方後始末を終えたゴカイの化け物は何かを探している。
満腹中枢は満たされていないらしい、次の餌は必然的に逃げ遅れた俺達と言う事になる。
どうやら1頭が俺達に気付いたようだ。
牙からよだれの様な粘液をたらしながら向かってきた。
もう腹を据えるしかない様だ。
「何度も死線を超えて堪るか。良く噛んで食事しろと教わらなかったのか太るぞ!」
一か八かの賭けに出るしかない。
爺に叩き込まれ数少なく取得できたはずの九字を切る。
右手の人差し指と中指で刀印を結び左手を腰に当て右の指を包み込み鞘にする。
気合と共に光の刀を抜刀する。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!」
掛け声と共に四縦五横つまり格子状に手刀を振る。
目の前には粘液塗れの2本の牙が寸止めされていて自分の顔が引き攣り嫌な汗が流れているのを感じる。
周りの嫌な空気がまるで何かに吸い取られる様に引いていくのを感じる。
すると目の前のゴカイの化け物が細切れになって消し飛んだ。
どうやら俺の曖昧で不確かな術が効いたらしい。
力も気力も抜けて腰が抜けた様にしゃがみ込んでしまった。
「また、死ぬかと思った」
「す、凄いです。カズキは本当に人間なんですか?」
褒められている気がしないのは気のせいじゃない筈だ。
俺は紛れもなく人間だ、少しだけ規格外の異物だけどな。
マジで凹んできた。
それに爺に完全に駄目だしされた九字がこんなに効くとは思ってもみなかった。
何度も爺にやらされ俺的には出来ていると思っていただけなのに。
窮鼠猫を噛むと言う奴か余程あの巨大ゴカイが低級だったのか。
まぁ、低級が猫ならネズミの俺は低級以下と言う事なのだろう。
そこで思いついた事がある。
爺に駄目だしされた九字が使えたのなら、爺に褒められた柏手を使うとどうなるのかと言う事だった。
俺が居た世界では確かに目に見えて邪気を払う事が出来た。
思い立ったら吉日。
即実行・即行動でツキを掴め。
それが我が家の家訓にして行動原理になっている。
立ち上がると確かに空気と言うか何か得体のしれない物が澱んでいるのを感じる。
水だって澱めば腐る、ならば空気とて同じ事だろう。
両手を大きく広げ深呼吸をして胸の前で掌を叩き合わせる。
すると空から鈴が鳴る様な反響音がしたかと思うと澱んでいた空気が浄化されていくのを感じる。
それまでただの草だと思っていたのに綺麗で可憐な薄紫の小菊の様な花を沢山咲かせ始め。
草原は瞬く間に薄紫色の絨毯の様になった。
この花の名前を俺は知っている。
『花・花』なんて名前の美容室の店主のお蔭だ。
彼女は格闘馬鹿だけではなく草花をこよなく愛する人だから。
そして笑いが込み上げてきた。
『紫の苑』で『鬼の醜い草』か、勘違いも甚だしいかもしれない。
「どうした? 自分の力で馬鹿になったか?」
「馬鹿はお前だろ」
「私は『鬼子』かもしれないが決して馬鹿じゃないこの世界の事だって色々と勉強したし教えられてきた」
「そう言う意味じゃない。両親が忌み嫌っているって思っていた事だよ」
彼女は不機嫌そうにそれでも意味が判らず俺の顔を睨みつけている。
まぁ、突然笑い出した奴に馬鹿扱いされれば当然と言えば当然の反応なのかもしれない。
「これはアクまで俺の仮説に過ぎないけれど、君の本当の名前は紫苑と言うんじゃないのか?」
「シオン?」
「そうだ」
「でも母は私をそんな名前で呼んだ憶えはない。それにこんな草だらけの澱んだ地に私を」
まだ、足りないらしい。
俺なりに思いついた事を出来るだけ判りやすく口にした。
「今、咲き出した一面の花の名は俺が居た世界では紫苑と言うんだ。漢字つまり俺が使う文字で書くと紫の苑と書き、別名は鬼の醜草と言うんだ」
「やはり鬼の醜い草なんじゃないか」
「多分、君の母親は紫苑の事を知っていたんじゃないかと思うんだ。話が難しくなるから簡単に言うと鬼の醜草と言うのはあなたの事を忘れないと言う意味なんだ」
「私の事を忘れない……」
鬼の醜草と言うのは昔話の中にあったもので。
親を亡くした2人の息子の兄は萱草(忘れ草)を弟は紫苑(忘れな草)を植えて墓参りをした。
やがて兄は墓参りを忘れ弟は墓参りを欠かさなかった。
その事に墓を守る鬼は弟の親思いの深さに打たれ予知と言う力を与え、弟は災難から身を守り幸せに暮らしたと言う話に由来する。
と、例の如くあの人に叩き込まれた。
我が子の事を思ってした事が裏目に出てしまったらしい。
俺の想像の域を出ないが彼女の両親は何か訳があって彼女の本当の名前を呼ぶことが出来なかったか禁じられていたのではないかと思う。
それとアクまでだけど彼女の親が紫苑の話を知っているとしたら……
それを言った所で信じるも信じないも彼女自身の問題だ。
「で、どうする? ここに居るつもりか?」
彼女は首を横に振った。
色々な事が起こりかなり時間を食ってしまった。
早急にこの状況を何とかしないとこの場で野宿なんて事になりかねない。
まぁ、彼女は恐らくそうやって過ごしてきたのであろう。
俺だって修行の名目で日本中と言わず世界中を爺に連れ回され野宿なんて可愛いく思える事が多々あった(断崖絶壁でロープに揺られながらビバークとか)が、ここは俺の知る世界じゃないし寝ている時に化け物になんて真っ平御免だ。
「紫苑! 行くぞ」
「うん」
そう返事をして顔を上げた彼女の琥珀色の瞳から涙が毀れる。
「ほら、紫苑。行くぞ」
優しく手を差し出すと涙を拭い勢いよく俺の手を掴んで紫苑が立ち上がった。
「カズキと居ると些細な事なんてどうでも良くなった」
「で、どっちに行けば良いんだ」
「とりあえず宿場がある方だ」
彼女がビシッと指差している。
両親との誤解や行違いが些細な事のはずがなく強がりなのが良く判る。
それと何処となく未だ不安が見え隠れしている。
「素直で行こうぜ。辛い時は辛いと言う俺もそうするから紫苑にもそうして欲しい。まぁ、初対面の俺にそんな事は言われる筋合いはないと思うけどな。とりあえず決まり事その一だ。これから行動を共にする仲だしな」
「わ、判った。カズキを信用していない訳じゃない。素性は知れないが助けてもらったしな」
「素直上等!」
そう言って彼女の頭をポンポンと軽く叩い……
「ギャン!」
まるで犬が蹴られた様な声を上げて彼女はしゃがみ込んでしまい慌てて手を引っ込めてしまった。
「ゴメン、痛かったか?」
「何をした?」
「はぁ? 俺はただ頭をポンポンと軽く…… ん?」
「何だ?」
俺は自分の目を疑った。
しゃがみ込んだ彼女の頭には犬の様な耳は無く尻尾さえも消えている。
まるでイリュージョンを見ているようだ。
それに髪の毛は何故かボサボサのままだが衣服まで小奇麗になっている。
「あのな、聞いていいか? 耳と尻尾はどうした」
「えっ? な、無い。それに何だか力が漲っている。何をしたんだ?」
「俺は何もしていない。何度も同じ事を言わせるな、頭をポンポンと」
「カズキは本当に人間なのか?」
「頼むからそれを言うのを止めてくれ。マジで凹むし心が痛い。それに人であると言う自信すら失せていく気がする」
凹んでいる俺の手を掴むと紫苑は不安が吹っ切れたのか何かを確信したかのように歩き始めた。
俺の異世界の旅一日目はまだ終わらないらしい。
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