第21話 両親の崩壊


しばらくして、相模は退院したとの連絡があった。


少しづつ、刹那は回復していきまた、デザインも復活してきた。



今のところは、整備不良が決定的ということで。捜査も終了しかけている。

相模からの連絡は刹那にもないみたいで、ようやくまた、二人の世界と穏やかな日々が戻ってきたと思っていた。



そして、ついに、その時が来たんだ。


『恵美さんと相模さんが接触しました』


そのメールは、僕らの勝運を握ったものだった。


『そのまま、張り込み続けてください』



そう、一言送ると、僕はさっそく、父に連絡を取った。


「父さん、僕です。近いうちに時間を作っていただけませんか。」



「急ぎの用か。」


「ええ。どうしても伝えなきゃならないことです」



そう言って、電話を切った。


そして、刹那に一言「仕事行ってくるな」と声をかけると


「うん」とだけ聞こえ、仕事に向かった。


撮影現場の待合室には、最新号のファッション雑誌が並んだ。

そのファッション雑誌を開くと、相模の新しいファッション公開ページがあった。



そこに並んだ、モデルが着用している服たちは、刹那が作ったブランドだった。



その雑誌の見出しに書かれていたのは、『相模辰巳プロデュース、新たなブランド設立』と書いていた。



その雑誌に一通り目を通すと鼻で笑い、撮影に向かった。



撮影を終えて帰ってくると、一件のメールの留守電が入っていた。


メールは、『やばい。警察がうちに来た。』とアイツからのものだった。

そう、相模の車の部品を外してくれた、高校時代、撮影で一緒になってしばらく意気投合して喋りメールの交換までしていた。奴で。


麻薬所持で捕まり、少年院に行っていた、ユキト。


『調べられたのか?』


『いや、一応保釈中で、来たんだと思う。ただ、車の件は聞かれたけど、兄貴の車を修理してたって言った』



『そうか、それなら、足はつかないだろう。相模も諦めるよ』



そう。メールを送った。

留守電は、探偵からで、「間違えなく相模と恵美さんが一緒のところ抑えました。場所は、いつものところで、付けられてる方の者に写真渡しますので受け取ってください」とのことだった。



さっそく、折り返して探偵に会うことにして。写真を受け取った。



そして、すぐに、父さんに電話をした。


「すみません、忙しい中。渡したいものがあり・・・早急に時間をとってください。」



そう連絡を入れると、その夜。


個室中華屋で待ち合わせをした。


近くにいた、僕をつけてる探偵に近づいた。


「母、恵美に伝えてください。もうバレてますし。あなたは終わりですと。それともう引き上げてください。」



「そういうと、探偵は、少し困惑しながらも携帯片手に、その場を離れた」


個室中華屋には、先に父が、座って待っていた。


「すみません。お時間、ありがとうございます。」


「で、話ってなんだ」



「これを見てください。」



父に写真を渡した。そこには、相模と母が会う姿が写っていた。



「それで?探偵でも雇ったのか」



「はい。僕にも、母からつけられています。そして、僕のブティックに出入りしている東郷綺麗々と離したくて、相模を使って、脅してきました。

母は、相模と深い関係になり、東郷綺麗々を物にしようとしました。」



「恵美が、相模と肉体関係があると言いたいのか」



「そうです。もし信用できないのであれば、証拠を出しても構いません。それ以外、会う理由はそれしかないのですから」



「・・・そうか」



「選挙も近いです。スキャンダルは、避けたいと思います。」


「それで」


「母にこれ以上鑑賞しないことを条件としてください。」


「言われなくても、この時点で勘当だ。こんな時期に不祥事だ」


「おっしゃるとおりだと思います。」



「もし、離婚という形になったら、尚弥の親権を決めなくてはならない」



「もう、そこまで決めるのですか」



「当たり前だ。有権者に説明もできん。今回の選挙は辞退しなくてはならない。」



「僕は、父さんにつきます。迷惑でなければ」



「まぁ。成人するまでだ。面倒を見ることは約束しよう」


「ありがとうございます。」



そうして交わした。

母とのことは、これで決着がつくと思っていた。



ブティックへ戻ると、刹那が、ダンボールを運んでいた。



「これどうしたの?」


「今まで、作れなかったアクセサリー分。一気に作ったんだ」


「・・・まじか。すげぇ」


「写真、よろしくね」


そういうと、少しにっこりした。


「よかった。笑えるようになった」



「うん、ありがとう。尚弥のおかげ」



「僕は何も出来てないよ。」



「ううん、支えてくれてる。十分に。ありがとう」



そう言われると、もうこれ以上自分の気持ちを隠しておく理由がなくなった。


僕は、刹那の方へ近づいてった。



「尚弥?」



そう見上げる刹那の頬を優しく掴んで、刹那の唇にキスをした。



刹那は驚いて、僕を押し返す。



「尚弥、私・・・汚いよ。」



「なんで?」



「アイツ・・・に。」



「そんなの関係ないよ。」



「でもまだ、消えなくて。」



「じゃぁ消えるまでしてやる」



そういうと、また刹那に近づいて、キスをした。今度は深く。

刹那の力の入る手が弱まり、背中に手が回る。



そして、2人は心を確かめ会った。



「僕が守るから、刹那は本当にただ、この世界に居てくれればいい」



「ありがとう」



そう、約束を再び交わした。



父は、家に帰ると、さっそく尚弥からもらった写真を母恵美に突きつけた。



「これはどういう事だ」



「調べてたのですか」



「ああ。選挙も近く、注目もされていた。そんな中での出来事だ。」



「以前、尚弥のファッションのことで相談にのってもらい・・・それで」



「言い訳は、いらない。週刊誌も掴んでいるネタだ。肉体関係・・・あるんだな」



「・・・すみません」



「なぜだ。」



「尚弥は未だ、東郷綺麗々と会っているんです。引き離さなくてはって思ったの。

それに、相模さんは、東郷綺麗々を買ってくれると言ってた。意見が合意していたの。尚弥から離せるって」


「ただの常連客にしつこいぞ」


「違うわ、あの子、ブティックに住んでるのよ、私も調べてる。証拠だって・・・」



「それで、そこまでして、肉体関係まで持つのか。」



「それは・・・」


「もういい。君とは終わりだ。選挙も辞退する。家は慰謝料変わりにもらってくれて構わない。僕が出て行く。」



「あなたっ!」



「後で、書類も送る。サインしてくれ。応じなければ、裁判にしてくれていい」



「そんな、嫌です。あなたっ、待ってください」



そうすがりつく恵美を振り払い、家をでる準備をする為、部屋へいき、必要最低限の服と荷物を詰め込んだ。


そしてまた、すがりつき泣き喚く、恵美を無視して、家をあとにした。




秘書の車に乗り込むと、ホテルへと向かった。



これで、一つの人生が終わったのかと。頭を抱えた。


「明日。大臣や党の方々に会い挨拶をする。必要であれば辞表を用意しといてくれ」


そう、秘書に伝えると、ホテルの部屋へと入っていった。



相模は、車の整備に不審点がないかを調べていた。

なんとか、骨折程度で済んだ。元々、殺そうとした犯行ではないことくらい感づいていた。



探偵に以来をかける。

「僕の車に近づいた奴をなんとしても割り出せ。」



「防犯カメラが死角になっていて、何度確認しても写っているのは、ある男のみです」



「そいつが、僕の車の部品を外した」



「でもその現場は抑えられてません。」



「指紋かなにかないのか」



「何も出てきません。ただ、その男は少年院出のようです。」



「ほぉー。ならその少年との接触を。彼に吐かせるしかない」



「わかりました」



そう言って、彼との接触に踏み込んだ。


足には外れないギブスのまま、彼に会いに行った。


その道中、恵美から連絡が入った。



「尚弥が私たちをつけていた。その写真を私の旦那に渡したの。離婚よ、離婚と言われたわ。どうしたらいいの」



そう、泣きつきながら電話が入る。



「きっと、この件も僕の事件も尚弥くんが関わってそうだな。なんとなくだけど」



「尚弥がそんなことするわけないでしょう。あなたが、あの子を引き離してくれるっていうから。」



「わかりました。落ち着いてください。僕も治ったら、また・・・」



「遅いわよっ」



そう言って一方的に電話を切られた。



頭を抱えた。

脅したことに、これ以上踏み込まれたくなくて、なにかしようと企むはずだ。


相模は、尚弥を疑った。


その足で、車を急がせた。


「急いで、彼のもとへ。」



運転手に告げると、運転手はスピードをあげる。



「償ってもらうからな」



そう、一言捨て吐いて、彼の元へ向かった。

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太陽を憎んだ君 月を探した僕 黒葉 @tannumeotoo

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