第18話 迫る影


刹那からある相談を受けた。


それは、過去を脅しに取られたとき、話をした契約内容だった。


「相模と話したとき、契約したんだ、月1でも週1でもデザインをうちで作ってくれと」


「それは放棄してもいいだろう。一応、父が全て話をつけて今は大人しくしてるみたいだから」




「でも、なにか企んでいたらと思うと。週刊誌側もいくら止めたとしても裏で事実を調べていたら面白いネタだと思う。出るのも時間の問題だ、相模に最終的に釘を打っておかないとと思う」



「そうか・・・」



「私が話に行くよ。」



「でもまた、なにかされたら。」


「大丈夫」


「前もそういった」


「安心して、流されないから。話すだけだよ」


「・・・わかった。遠くで、見張らしてほしい」


「尚弥・・・」


「アイツをそう簡単に信用はできない」


「じゃあついてきてもいい。でもバレないようにしなくては、色々と面倒がおこる」


「任せといて」



そう、作戦を練ってる時だった。




尚弥の実家、午後14時を回った頃だった。


寝室からは、妖艶な声が響き渡る。



「ねぇ、相模さんってさすが俳優さんね。こういう事がお上手」


「恵美さんだって、以外に清楚な顔して激しいんですね」


そう言い合いながら身体を交じらわせた。



しばらくして、事終えると、



「ねぇ、本当に尚弥を止めて下さるの?」



「お安い御用ですよ」


「安心だわ、あの子から引き離して。完全に」



「わかっていますよ」


そういうと、腕枕をされた、恵美の肩に何度もキスをする。


「そろそろ、帰ってくるので、支度しなきゃ」


「そうですか。じゃぁ僕も」


恵美の白い肌はシルクのガウンに包まれていくのを見届けると、相模も下着を履いて準備をした。



「今日、明日あたり・・・彼女たちから会いたいと連絡が入るでしょう」


「そう、じゃぁ、なんとしても相模さんの物にしてちょうだい」



「わかりました。」


「週刊誌の件もお願いしますね」


「もう調べて、確保してありますよ。格好のネタだと喜んでました」


「そう。頼んだわよ」



2人の企み通りに動かされているなど、知るよしもなく、刹那は相模に連絡を取った。



「相模さんですか、お会いしたいのですが」



「いいよ。いつ?」


「明日の・・・」



そう電話で約束し、尚弥にも伝えた。


次の日、相模さんと会う時間、尚弥は気づかれない範囲で距離をとってついてきた。


いつもの和食料理屋の個室。



料理を来る前にさっそく、話をきりだした。


「デザインの件、・・・と。その他、過去を尚弥に知られたくないということで引受ました。それを取り消して欲しいんです」



「そう、言ってくると思ったんだ。それはできない。」



「なぜ、あれは」


「今、週刊誌は君の過去を握ってる。」



「それは尚弥のお父さんが止めてくれてます」


「どうかな・・・そう簡単じゃないって言うのを知らないと世の中渡れないよ」



「どうしたらいいんですか。」



「契約通りだ。デザインは週1でも月1でもしてもらう。尚弥くんのお父さんと約束したのは、君を過去とセットで売り出すなという事だけで君の世界へ行くなとは言われていないからな」



「そんなっ、でも週刊誌に掲載されれば、お父さんが黙ってません」


「それが切り札だと思っているみたいだが・・・僕にもそこをうまく載せれるという切り札を持っているんだよ」



「なんですか、それ」



「今も付きまとうあの事件の縁・・・被害者は迷惑。とか書き方次第で被害者より加害者に注目がいく方だってある。もちろん、コメントは求められるかもしれないが、過去のことは思い出したくない。という事で相手は逃げられる。そうなると・・・今も手紙を出していた事を証拠に君だけに注目が行くわけだ」



「・・・手紙。なぜそこまで・・・尚弥のお母さんに会ったんですか」



「これは、お母さんの依頼でね」


「お母さんを味方につけたってことですね」


「どうする?これも君次第だ。ただ、選択の余地はない。」



「・・・卑怯ですね」



「どんな手でも君の世界を手に入れるって言ったよ」



「・・・わかり・・・ました」



出るすべもなかった。


ご飯やを出ると


「今日は・・・尚弥くんが来てるみたいだしやめとくよ」


そういうと車に乗り込み颯爽とその場をあとにした。



私は、尚弥にメールで、「ブティックへ」と送った。


ブティックにつくとなにから話していいか迷った。


「とりあえずデザインはやるよ」


「なんで、また脅された?」


「いや・・・その。」



嘘をつけない自分がにくかった。

優しい嘘もキツイ嘘もつけずに何もせず来たから、尚弥を守れる嘘なんて思いつかなかった。



「・・・お母さんが、後ろにいるんだ」


「お母さんって、うちの?刹那の?」


「尚弥の・・・」



「どういう・・・」



「わからない、これは尚弥のお母さんの依頼でもあると」



その言葉にピンときた。

やたらと、刹那と離したがっていた母は相模にお願いしたこと。


「でもどうやって・・・母に」


「相模は、欲しい物は全てを手に入れると言っていた。そしてそれは行為でもいいと」



「行為・・・」



その時、母は相模と男女の関係になったことを確信した

あの母が


「ふざけんなっ。いい年して」



尚弥の悔しそうな顔を見つめながら、何を言っていいかなんて浮かばなく

苦しめているのも私のせいだと。



「とりあえずは、相模のいいなりになろう。そして奴のことなにか掴んで週刊誌に逆転させれるようなことできないか」



「奴の性格じゃ、全てお見通しだろ。だから先回りして母に取り入ったんだ」



「だったら尚更おとなしく、云う事をきいた方がいい」



「くそっ」


それから、刹那は月1で相模の会社に向かいデザインをすることになった。

週刊誌は、あれ以来、何も書いていなかった。


むしろ、「会社の同僚との熱愛?新しい事業改革」など、逆にいい方向へと記事は相模の思うままに書かれていった。


「できるだけ、10点は作って欲しいかなぁ」


刹那にそう言った。


「これは契約金として受け取って欲しい。」


そこには、マンションや車が買える数億の桁が書かれていた。


「これは頂けません。」


「一応、雇ってるんだしもらってくれないと」


「でしたら時給で構いません。来た日数と時間分ください」


「はぁ。わかったよ」


そういうと普通の雇用形態が書いてある紙を出してきた。


「一応、君には契約書書いてもらう。君のデザインという事で売ることになるから」


「それは、不要です。ゴーストにしてください。非公表で」


「いずれはどこかでバレることだと思うけど」


「それでも私は表に出たくはないので」


「わかった。じゃぁ、これはアルバイトとして雇う契約で。お金を支払う。デザインは君がというわけでなく我社が、という事で売り出すよ」


「お願いします」


そうして、相模との契約が始まった。


毎月、相模の服のオーダーは本格的なゴシックな服ではなく、一般層も着られるようなデザインに少しのゴシック感を取り入れてくれという物だった。


要するに、リメイク感覚でいいからデザインを頼むと。


刹那は、ショップのアルバイトを辞めて、相模のところとブティックを行き来する形になった。


相変わらず、ブティックの方はアクセサリーが立て続けに売れていて、SNSではちょっとした話題になっていた。


「ここのブランドのアクセ、高いけどクオリティー高くて可愛い」


「お店はネットだけなのかなぁ」


とか、注目が集まり始めた。



刹那が作っているという事も、注目も浴びたくない刹那には、問題点で

対策を考え始めた。


「どうしたら。いいと思う?」


とある日、刹那にその事を相談した


「ネットショップをだから、デザイン者はなんとでも言えると思うんだ。ショップは・・・どうしよう。掲載しても来られる人限られるかもしれない。ここは道が迷いやすいから」


「そうだな。バレそうになったらなんとかフォローするよ。とりあえず受注が殺到してて、アクセサリーは全部完売だよ」



「そうだな。アクセサリーを中心に急いだほうがいいな」



「ごめん。忙しいのに」



「いや、こっちのほうが楽しいんだ。あそこは、息が詰まる」



「ごめん。相模からまもれなくて」


「守ってくれてる。今も十分。居場所があるだけ救いだ」




相模の思うがままになるのが悔しかったけど

何もできなかった。


証拠があれば、父さんに見せて、葬る事が出来るのに。


僕たちの迫る影は着実に、確実に。

忍び寄っていた。



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