第6話 動き出す情
その日、僕らはあの部屋に居た。
午後あたりには業者がくる。
刹那の作った完全な世界へのリフォームが始まる。
刹那は上 ワンルームとした2つ部屋と玄関の空間しかない場所を隅々までみながら何度も行き来をしながら刹那の頭の中にある設計図に描いていっている姿を
カーブされた窓の下側は出窓になっていて人が一人座れるくらいのスペースがある
そこに腰掛けてただその光景を見ていた。
刹那がイラストにした部屋のリフォーム図系には細かく色、どのような木材、材料を使用するかなどの事が細かく書いてある。
「・・・業者まだかな」
刹那が急に俺の前に来て訪ねた
「あぁ、迷ってるかも」
「ちょっとみてくる。」
刹那はこの場所を最初から知っていたかのようだった。
今回で2度目なのにすぐに道を覚え、迷うことなくたどり着いている。
数分後、業者と話し合いながら門の前にいる刹那が見えた。
刹那は一旦僕の方に戻り「やっぱり迷ってた」
と一言報告するとまた、業者のところに戻り指示を続けた。
「その門はできれば維持したい。この辺の草木も・・・ただそのなかに少しわかるような道筋を石畳で埋め込む・・・これイラストで・・・」
興奮と、説明の戸惑いに庭のリフォーム業者には刹那が中リフォーム業者に説明してる際に補足しに向かった。
「森のなかに佇む、っていうようにしたいみたいで。だから草木生い茂る中に
石畳が道筋になるよう敷いていただいて・・あと、できればその草木は歩くのに邪魔にならないように手入れをお願いします。見積もりと請求とうは僕にください」
「わかりました。さっそく取り掛かります。」
「お願いします」
そんな感じで刹那がうまく伝えられなかった部分を補足して
伝えたいことを、うまく言葉にして並べたあげた
「このドアは表から見えない感じが・・・」
「他の壁と同じ様な模様にするって事でしょ?」
「そう、それで。ドアノブは少しわかるかわからないか・・・拘りたい」
業者があまりのこだわりに頭を抱える
「襖・・・のような感じで開閉扉ではあるのですが、ドアノブだけ襖のようにすれば見えるかどうかわからない形になる・・・それでいい?」
「なるほど・・・それでお願いしたい」
刹那は戸惑いながら、業者に言った。
「すみません・・・そのイラスト書いたのに・・・わかりづらく」
刹那は自分の言葉を探して業者に伝えた
「大丈夫ですよ。補足して頂ければ」
「ありがとう、ございます」
まだ、たどたどしい感じだが業者に伝える刹那
多分、若干の人見知りと疑いと。
それを、隠そうとする為に言葉も冷たくなる。
出会った時からわかっていた。
人に見下されないように自分を守る。その身にまとう服のように常に疑い、常に心を閉ざしている。
だけど、少しづつ言葉は伝えられているようになっている気がした。
刹那は、リフォーム最中
「家具はここまでもってくるの大変だと思うから・・・どうしたらいい?」
「僕の方で一応、必要最低限は注文してあるよ。マネキンとこのイラストのような家具と・・・」
「そう・・なのか。」
「刹那の世界、楽しみだな」
「世界・・・私には初めて出来た居場所」
「ここが?」
「どこにも居場所もないと思っていた。そこに作ってくれた」
「そう思ってくれるなら。僕もこういう提案を思いついた甲斐があったよ」
「光はささなくても・・・居心地がいい」
そう呟いた刹那の横顔は、なにか少し重荷を降ろしたような顔になっていた。
一息付く間もなく業者の様子を見ながら、指示を出しにいく刹那。
「そこの螺旋階段は・・・」
イラストを見せながら細かく支持をしていく。
刹那が見つけてきたデザインや柄、素材なので僕には全くわからなかった。
「手すりだけデコラティブなデザインにできますか。階段だけこのまま残して欲しいので」
「この上の階の部屋は壁に埋め込みで棚を入れて欲しくて。棚の部分は黒みがかった灰色・・・この色で。壁の色はこの1メーターまではウッド張の白、そこから上を赤でお願いします」
説明しながらカラーデザインカードの配色を参考に業者に渡して頼んでいく。
難題は、下の階。カーブされた窓のある広々とした部屋。
元々、必ず儲けを出せる商売でもない。
むしろこの家事態、誰も借り手もつかないことから大家さんと不動産から安くする為、買い取って欲しいと言われた物件。
月々の家賃は発生しないからその分利益としては考えなくてもいいのかもしれない。
勿論細かく考えれば税金のことなども発生する。販売ということで、
税務署への開業手続きなどは僕の名前になるが保証人や資金面はマジェリタさんが
工面してくれている。
その件に関して刹那には説明していないが、一度刹那のデザインをお忍びで拝見することを条件に援助してくれた。
それは僕が不動産を探している合間に、再度マジェリタさんのカタログの仕事をした時のこと
「尚くん!」
マジェリタさんが僕を呼ぶ愛称だ。
「ブティックの件・・・どうなの?」
「開業を考えてます。今は不動産と彼女にはその内装や家具のデザインを書いてもらっている所です。」
「ねぇ、その話。半分、私に分けてくれない?」
「え・・・どういう・・・」
「姉妹店とか言わないわ。アナタ達のお店という事でいいんだけど。投資させてくれない?その代わり、尚くんがそこまで後押しする彼女さんのデザインが見たいわ」
「それは・・・買い取る話でもなくてですか。」
「えぇ。あくまでその子の才能に投資するということよ。お店を開くのに色々と大人の手が必要でしょ。それも経験者の」
「それは・・・そうですけど。彼女は売るために服を作るわけじゃないみたいなんです」
「展示会みたいなこと?」
「まぁ・・・そう言われれると一般的にはそうかもしれませんが。一応彼女の気まぐれで本当に欲しいと思うなら売ったりくらいというのはあるらしいのですが。
あくまでも、売上を目標としてとかではなくて、僕らの世界を作るための・・・居場所を作るためを目的で」
「あら・・・尚更気に入っちゃった。」
「いや、だからお店も見つけられた人が入れるような見つけにくい場所にするという条件で探してたり・・・」
「いいじゃない。そんな世界に吸い寄せられた一人の人間として私がバックアップしたいの。非公表でね」
「でも、そんな・・・恩返しができるか」
「いらないわよ、そんなの。私も興味があるのよ。尚くんみたいな堅物な王子様が惹かれたその子のデザインに」
「・・・彼女は、同士なので。まぁデザインというか彼女の世界に魅了されたのは本当ですが」
「じゃぁ決定!難しい話はなし。経営での先輩としてそれを伝授するのと保証人とうは任せること。そして条件は彼女の作品を見せてもらうことね」
「すみません・・・そこまでして頂いて」
「ううん、私が未来ある若者に投資するだけなの。そこは、ありがとうございますでしょ?」
「はい、ありがとうございます!」
「冷酷な尚くんも素敵だけど、笑顔の尚くんも素敵ね。・・・ねぇ一つお願いしていい?」
その日僕は撮影でマジェルタさんの商品のカタログは笑顔で撮影することのないものばかりだが。
マジェルタさんが言うに、後ろ側が特徴として売りでデザインされたゴシックな衣装を来て女性モデルとの2ショットで二人手を繋ぎ、うつむき加減の横顔を見せ少し微笑んだ表情でとの支持によって撮影した。
撮影終了後、撮り終えた写真の確認をすると、その2ショットはハート型をイメージしてるみたいにみえるとマジェルタさんは興奮していたが
僕はどこか、刹那が隣にいるように重なった。
刹那がここで一生を過ごしてくれるなら。それにただ寄り添おうなんて
欲望でしかない夢を見ていた。
もしかしたら、このブティックの提案を持ちかけたのだって
刹那の世界を自分だけのものして隔離しようとしているんじゃないかって
奇妙な感覚に襲われる時がある。
それは、刹那を意識して見始めてからずっと。
ただ勢いで思いつきで、あの日僕のマンションで夜明けまでデザインして服を仕立てた刹那を僕だけが見ていたいと思ったからかもしれない・・・。
だから、僕はこのブティックが完成したら・・・あまりここに顔を出さないように仕事を言い訳にしてがむしゃらに芸能の仕事をするようになった。
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