第12話 チューリップ
高校卒業間近のある時から
突然、Zが何かとちょっかいを出してくるようになった。
文化祭の一件以来、一瞬、恋多き乙女Aとも付き合っていたが
卒業間近には特定の彼女もできないままいたようだった。
Zが突然
「好きな花は何?」
と、聞かれた。
特に好きな花はなかったのだが、ふと思いついたのが ”チューリップ”だった。
「チューリップ?赤いバラとかじゃないの?」
と言われたが、バラは特に好きでも嫌いでもなかった。
それから数日後、Zと仲のよいGと2人で楽しそうになにやら話していた。
気にも留めず、ホームルームに参加していると
Zのいる方向から私宛に手紙が回ってきた。
不思議に思って手紙を開くと
私らしき女の子が、横向きに席についている姿が描かれていた。
よく見ると、女の子の頭の上にはチューリップが生えていた。
「は?」
思わず声にだしそうになりながら、Zの方を見るとクスクスと笑っている。
ホームルームが終わるとZが近づいてきて
「どう?」
と感想を求められた。
まず、絵が上手なことを褒め、そしてチューリップが生えていることの真意を聞いた。
「頭にチューリップ生やしたら似合うな~と思って」
満面の笑みで言った。
何を言ってるか分からなかった。
5歳児くらいを窘めるように
「へぇ~そうなんだ」
と、私の頭上をみながら
「似合うと思うんだけどな~」
と言って去っていった。
後ろに座っていたNも意味が分からず、ただ笑うだけだった。
もちろん、当事者の私はもっと意味が分からなかった。
卒業式の練習がすすみ、あと数日で卒業式本番というころ
ZとGが近寄ってきた。
「卒業式にチューリップあげるよ」
突拍子もないことを言われキョトンとしていると
「鉢植えがいいかな~」
と2人で盛り上がるので
「もって帰るの大変だから、やめてね」
というと
「つれないな~」
といいながら2人は去っていった。
またしても聞いていたNが
「何なの?あの2人」
と、怪訝そうにしていた。
そのセリフ、私のだよ。
そう思いながら、その場を後にした。
卒業式に花をもらえるのかも?と
花をもらえることに悪い気はしなかった。
結局のところ、卒業式当日
「季節じゃないから、チューリップ売ってなかったよ」
といい、何ももらえなかった。
2ショット写真といい、チューリップといい
Zの行動は、まったくもって読めなかった。
あれは、いったいなんだったんだろうと
いまだに謎である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます